見を開き、次のように述べています。
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◎大変残念だが、マレーシア航空MH370便はインド洋南
部で、飛行を終えたといわねばならない。──ナジブ首相
◎MH370便は、燃料切れにより、墜落したと考えざるを
得ない。 ──ヒシャムディン運輸相代行
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ナジブ首相の第1回会談から9日後のことです。中国、フィリ
ピン、シンガポール、米国、日本などによる捜索では何の手がか
りも掴めていない時点での当事国マレーシアの事実上の幕引き宣
言です。何を根拠にそういうのでしょうか。
その根拠は、英国の通信衛星「インマルサット」によるMH3
70便がたどったと予想される航跡図からの解析であるとして、
マレーシア政府は添付ファイルの航跡図を公表したのです。
通信衛星を使うと、その衛星との距離がわかり、地上付近にあ
るものは、その衛星と同じ距離にある円上にいることがわかるの
です。この航跡図は、インド洋モルディブ付近の上空からの衛星
情報で、3月8日午前8時11分に捉えた半円状の到達予想地点
をあらわしています。
位置を特定する場合は、通常は複数の衛星の交点──複数の衛
星からの放物線の交点を求めるのですが、3月8日午前8時11
分時点では、ひとつの衛星からの情報しか得られないので、MH
370便はこの円上のどこかにいた可能性があるといえます。
添付ファイルについて説明します。図上の点線は北に向かうも
のと、南に向かうものがあります。これを「コリドー(回廊)」
と呼んでいます。北に向かうコリドーの場合、タイからカザフス
タンとトルクメニスタンの国境付近まで飛行した可能性を示して
います。これが3月15日にマレーシア政府が記者会見で発表し
た「北方飛行説」の根拠です。
ところが、3月24日の会見では、マレーシア政府は一転して
南に向かうコリドー上のどこかで墜落した可能性があると発表し
たのです。このさい、MH370便の対地速度を450ノットと
400ノットと仮定して墜落地点を予測しているのです。
地上のレーダーからMH370便の機影が消えた地点が「A」
です。MH370便は、このA地点から針路を南に取り、インド
洋南の海上に向ったと仮定しています。そして速度が400ノッ
トの場合は、墜落地点は「C」、450ノットの場合は「B」と
推定しているのです。
問題は、このマレーシア政府の発表の信憑性がどこまであるか
です。杉江弘氏は、衛星からの墜落地点の推定は、その信頼性に
おいて次の問題点があると指摘しています。
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1.MH370便の速度はあくまで仮定であり、その速度の
設定によって、何本も線が引けることになる。
2.C地点とB地点との距離は約1080キロメートルも離
れており、機の墜落地点の特定にはならない。
3.インマルサットがどこからの信号によって航跡を割り出
したのかが明らかになっていないことがある。
4.MH370便の行方を予測するために不可欠な搭載燃料
をマレーシア政府は依然として隠蔽している。
──杉江弘著
『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
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3月8日午前8時11分時点で、MH370便がどのくらいの
速度で飛行していたかを判断できる情報は何もないのです。した
がって、それがわからない以上、たとえ墜落場所が南コリドー上
(点線)であったとしても、速度によって何本も線が引けること
になり、墜落場所の特定にはならないのです。したがって、3月
24日のマレーシア政府の発表は、何もいっていないのとあまり
変わりはないといえます。
それに加えて、C地点とB地点の距離は約1080キロメート
ルもあるのです。これは日本列島の半分の距離に相当し、その広
大な海域のなかの点を探す作業になり、それは墜落地点の特定な
どといえるものではないのです。これについて、杉江弘氏は次の
ように疑問を呈しています。
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しかしながら、オーストラリアの合同捜索センターによると、
当初パースから南西へ約2500キロメートルの海域(ほぼB地
点)を捜索していた活動を4月上旬には北へ移動させ、パースか
ら北西へ約1700キロの海域(ほぼC地点)に絞ったとされて
いる。では、約1080キロにわたるすべての海域の可能性があ
るのに、なぜ突然B地点からC地点に捜索活動が移されたのか?
──杉江弘著の前掲書より
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さらに疑問なのは、インマルサットがどこからの信号によって
航跡を割り出したかです。3月24日付の英紙「デイリー・テレ
グラフ」によると、通信衛星側が航空機側の出す「PINGS」
(ピン)と呼ばれる微弱な信号をキャッチし、それをドップラー
効果を使って解析して、これに各種の情報(想定位置、進路、速
度)を組み合わせることで航跡を割り出したというのです。
しかし、これに関して、杉江弘氏はこの英紙「デイリー・テレ
グラフ」の記事に次のように疑問を呈しています。
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少なくとも私は、そんな話を聞いたことはないし、何人かの元
同僚や現役も、マニュアル類などどこを見ても書かれておらず、
わからないと話している。 ──杉江弘著の前掲書より
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要するにパイロットはそんなものは知らないといっているので
す。明日検証します。 ──[航空機事故の謎を探る/011]
≪画像および関連情報≫
●MH370便はインド洋南部海域に墜落/ナジブ首相
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(マレーシア)ナジブ首相は3月24日夜、KLのプトラ
・ワールドトレードセンター(PWTC)で記者会見し「マ
レーシア航空・MH370便(B777─200)の航跡が
オーストラリア・パース南西沖(約2500キロ)のインド
洋南部で終わった。近くに着陸できる場所はない」と述べ、
同機がインド洋南部海域に墜落したと結論づけた。
ナジブ首相によると、マレーシア政府は英国航空事故調査
委員会から同日夜、同国企業インマルサットの通信衛星のデ
ータを分析した結果について説明を受けた。MH370便は
飛行中に自動的に通信衛星を探知して信号を送るシステムを
装備しており、同委員会はそのデータを詳細に解析したとい
う。インマルサットは、通信衛星による移動体通信を提供す
る民間企業。
なお、ナジブ首相は、マレーシア航空が首相の会見前に乗
客乗員の家族に最新情報を伝えたむね明らかにした。首相は
25日に改めて詳細を発表すると発表した。
約50分後に消息断つ!3月8日午前12時41分に、北
京に向けクアラルンプール国際空港を飛び立ったマレーシア
航空のMH370便が、離陸して約50分後の午前1時21
分にマレー半島コタバルとベトナム・ホーチミン間の海上で
消息を絶った。 http://bit.ly/1GBJysS
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●図の出典/杉江弘著の前掲書より
インマルサット衛星によるMH370便の航跡図


