2015年07月06日

●「胎児と胎盤にもなるSTAP細胞」(EJ第4070号)

 STAP論文というのは、そのなかで存在を主張するSTAP
細胞がES細胞ではあり得ないということをひたすら訴えている
論文であるといえます。それは単に「形状が異なる」というだけ
ではなく、たくさんあるのです。
 STAP細胞の生成過程を復習します。STAP細胞は、生後
1週間の赤ちゃんマウスから作られます。そのマウスは、万能性
に関係する「Oct4」という遺伝子が働くと、緑色の蛍光を発
するように遺伝子操作が行われています。
 そのマウスの脾臓からリンパ球を取り出し、それを弱酸性の溶
液に30分程度浸して刺激を与え、その後で培養液に入れて培養
を開始します。酸の刺激に耐えて生き残る細胞は全体の約4分の
1ですが、培養の2日目ぐらいから生き残った細胞のなかに緑の
蛍光を発する細胞が現れます。それは生き残った細胞の30%程
度であり、全体の7〜9%が蛍光を発することになります。
 その細胞は、元のリンパ球の2分の1程度と小さく、お互いに
くっつきながら、7日目には数10個から数千個の塊をつくるの
です。これがSTAP細胞です。その細胞は明らかにES細胞と
は違う形状をしており、それらの細胞は「これまでに見たことの
ない動きをしながら塊をつくっていく」のです。
 この細胞の変化は、弱酸の刺激を与えた細胞を顕微鏡下にセッ
トし、その後の変化は小保方氏だけでなく、丹羽仁史プロジェク
トリーダーをはじめCDBの複数の研究者が観察し、確認してお
り、試験管ムービーも撮られ、残されているのです。
 この作製プロセスのなかで、もし小保方氏がES細胞を混入さ
せたとすると、どのように混入させたというのでしょうか。
 考えられることは、弱酸の刺激を与えた細胞を培養するときの
シャーレにES細胞を混入させることです。それは絶対にできな
いとはいえませんが、その後の細胞の変化を顕微鏡ムービーで、
笹井氏や丹羽氏や複数の研究員が見ているのです。明らかにES
細胞とは形状の異なる小型の細胞が「これまでに見たことのない
動きをしながら塊をつくっていく」(丹羽氏の表現)のを目視し
ています。いずれもES細胞の専門家であり、ES細胞の特性は
知り尽くしている人たちばかりです。見間違えるはずがないでは
ありませんか。
 さてSTAP論文では、この緑色に蛍光を発するSTAP細胞
を作るまでが小保方氏の役割であり、それが万能性(多能性)を
持つかどうかを証明するキメラマウスを作るのは若山照彦山形大
学教授の役割なのです。
 そのキメラマウスが簡単にはできなかったのは既に述べた通り
です。そこで若山教授は、STAP細胞からキメラマウスの作る
方法をいろいろ変化させ、工夫しています。これについて、毎日
新聞の須田桃子記者は次のように書いています。
─────────────────────────────
 2011年11月、若山氏は、それまでとは違う作製方法を試
みることにした。通常、キメラマウスを作る実験は、バラバラに
した細胞を細い針で一個ずつ受精卵に入れていく。だが、バラバ
ラにするのは細胞にとって負担が大きい。
 そこで、細胞の塊をカッターで4等分し、細胞20個ほどの小
さな塊をそのまま受精卵に入れることにしたのだ。細胞の負担は
少ない反面、受精卵に刺す針は太くなるため、下手をすれば受精
卵が破裂してしまう。顕微鏡下で受精卵を扱う作業に習熟し、高
度なテクニックを持つ若山氏だからこそ採用できた方法だった。
            ──毎日新聞科学環境部/須田桃子著
       『捏造の科学者/STAP細胞事件』/文藝春秋
─────────────────────────────
 このようにして若山教授は、STAP細胞由来のキメラマウス
の作製に成功しています。添付ファイルは、STAP細胞由来の
キメラマウスの写真ですが、胎児だけでなく、胎児と母体をつな
ぐ胎盤も緑色に光って見えます。これは、STAP細胞が胎児だ
けでなく、胎盤も形成していることをあらわしています。これは
ES細胞やiPS細胞にはできないことなのです。
 したがってこれは、STAP細胞がES細胞でないことの有力
な証拠になるはずですが、理研調査委員会の報告書はそれに対し
て明確な論評をしていないのです。
 このSTAP細胞事件に対してかなり早い段階から疑問を持っ
て発信しておられる内科医(神経内科)の西岡昌紀氏は、この胎
盤のように見える細胞の塊に対する理研調査委員会の結論につい
て、次のように厳しく批判しています。
─────────────────────────────
 今回の理研の発表は、その「胎盤」に見えた細胞の塊は実は胎
盤ではなかったのだろうと述べている。小保方さんがSTAP細
胞と呼んだ細胞は、当初発表されたように胎盤を形成してはおら
ず、胎盤でない細胞塊を若山教授を含む著者たちが胎盤と見誤っ
たものだというのが、理研の「結論」である。
 しかし、理研のこの「結論」には根拠がない。たしかに、若山
教授らが胎盤でない細胞塊を胎盤と見誤った可能性はあり得るが
若山教授が実際にそうした見誤りをしたことの証明は、理研の発
表のなかにはない。この分野の世界的権威である若山教授がその
ような見間違いをしたとする理研側の主張には何も根拠がないの
である。したがって、若山教授らが見た細胞塊が、真実、胎盤で
あった可能性は依然、否定されていない。
        ──西岡昌紀著「『小保方殺し』九つの疑問」
             『月刊WiLL』2015年3月号
─────────────────────────────
 理研としては、昨年末の報告書をもってSTAP細胞事件はも
はや終わった事件にしていますが、このように現時点でも多くの
疑問がネット上にあふれているのです。この「胎盤」のことをひ
とつとっても、「STAP細胞はES細胞である」という結論は
間違っているといわざるをえないのです。その反証はまだまだた
くさんあるのです。    ── [STAP細胞事件/043]

≪画像および関連情報≫
 ●ES細胞混入説に執筆陣が反論/GoHoo
  ───────────────────────────
  一般に、マスメディアは「疑惑」が浮上したとき、「疑惑」
  を強める報道に傾斜していく。不正や不祥事を追及すること
  がメディアに期待された役割であることは否定しない。だが
  今回はメディアがSTAP論文発表当初に大喝采を送っただ
  けに、メディア自身がこの予期せぬ「疑惑」に、小保方氏へ
  の被害者意識≠もってもしくは世間への贖罪意識≠
  もって追及を強めているとすれば、非常に危うい。当初、i
  PS細胞より優れていると強調したのは、メディアがiPS
  細胞の研究動向を全く調べもしないで理研側の発表を鵜呑み
  にしたからにほかならなかった。そして、「かっぽう着の異
  彩リケジョ 実験室の壁ピンク/スッポン飼育」などと論文
  の筆頭執筆者である小保方晴子氏に異様なまでスポットライ
  トを浴びせたのも、誰がそうさせたのではなく、メディア自
  身が進んでそうしたことだった。「疑惑」の報道も十分な調
  査や裏付けをもってなされるべきことであり、安易に風評的
  疑惑を広めることに加担すべきではないだろう。STAP論
  文「捏造」説に拍車をかけている風評の一つが、万能細胞の
  一種であるES細胞(胚性幹細胞)が混入したとする「ES
  細胞混入説」だ。多くのメディアがことあるごとに、しかし
  さりげなくこの説を紹介し「疑惑」の印象を強化している。
                   http://bit.ly/1HxgmqA
  ───────────────────────────
 ●写真の出典/毎日新聞科学環境部/須田桃子著の前掲書より

STAP細胞は胎児と胎盤に分化する.jpg
STAP細胞は胎児と胎盤に分化する
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | STAP細胞事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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