2007年05月17日

●ゴスリング/オークを開発(EJ第2081号)

 サンが設置した「グリーン・チーム」のなかでとくに目立って
いたのは、ジェームス・ゴスリングという人物です。穏やかな天
才肌の人物ですが、優れた技術力を持っています。彼は高性能の
UNIX対応ウインドウ・ベース・インタフェース「ニュース」
を開発したのですが、サンはそれをうまく事業化できず、失敗に
終わっていたのです。
 ゴスリングは、サンの事業展開のまずさに対して不信感を持ち
グリーン・チームに自ら参加するといい出したのです。サンの最
高技術責任者であるエリック・シュミットは、ゴスリングを辞め
させないようグリーン・チーム入りを許したのです。
 ゴスリングとしては、コンピュータ言語の開発に意欲を燃やし
ていたのです。彼はコンピュータ言語は次の特徴を備えているべ
きであると考えていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.コンピュータ言語は人間に分かり易いこと
   2.どのような環境でも機械語化ができること
―――――――――――――――――――――――――――――
 少し説明が必要であると思います。コンピュータ言語を使って
プログラムを書くのは人間ですから、そのプログラムのミスを発
見したり、改良したり、追加したりしやすいように人間に分かり
易い必要があります。こういう言語のことを高級言語と呼んでい
ます。これが1の条件です。
 しかし、そのプログラムのままでは、コンピュータは理解でき
ないのです。そのためその高級言語をコンピュータがわかる機械
語に変換しなければなりません。これを「コンパイルする」とい
うのですが、ゴスリングはそのプログラム「コンパイラー」作り
に意欲を持っていたのです。
 ところがこれが簡単ではないのです。コンピュータ言語のコー
ドがプロセッサ――CPUごとに違うからです。ゴスリングはこ
れを解決しようと考えたのです。
 1990年の前半において、コンピュータエンジニアは、双方
向テレビ――インタラクティブTVをはじめとして、家電製品の
使い勝手を上げることに取り組んでいたのです。あのジム・クラ
ークも、アンドリーセンと会社を設立するとき、インタラクティ
ブTVに取り組もうとしていたのです。
 家電製品には不十分ではあるもののCPUが内蔵されているの
ですが、今後それがもっと進化すると考えられていたのです。そ
のため、それを利用してすべての家電をネットワークでつなぐ技
術を開発しようとしていたのです。しかし、それは次のようにそ
う簡単なことではなかったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 (ゴスリングは)C++のコードがプロセッサごとに違う問題
 を解決しようとした。ウインドウズに使われているペンティア
 ム向けにコンパイルしたコードは、マッキントッシュのモトロ
 ーラ製チップでは動かない。マック用にコンパイルされたコー
 ドは、ブラック&デッカーのオープン・トースターでは動かな
 い。どの機械でも(電子カミソリや、電気スイッチ、掃除機な
 どでも)同じように動く高度な移植性をもったソフトウェアの
 開発をめざしているチームにとって、コードがプロセッサによ
 って違うのは、やっかいな問題だった。そこで、ゴスリングが
 この問題に挑戦した。
            ――ロバート・リード著/山崎洋一訳
   『インターネット激動の1000日』上巻 日経BP社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 結局、ゴスリングはこの難問を「仮想マシン(VM)」を開発
することによって解決してしまいます。10種類程度のOSに対
応したVMを用意することによって、どんなプログラムもVMが
コンピュータが理解できるものに変換し、どのようなマシンでも
プログラムは動くようになったのです。
 さらにゴスリングらは、この言語にユニークな機能を付け加え
たのです。それは、この言語で記述されたプログラムは、システ
ム自らの判断で、不要になったプログラムを削除する機能をもっ
ているのです。そのため、プログラマはメモリを気にしないでプ
ログラムを書くことができます。これを「ガベージ・コレクショ
ン」といいます。
 ゴスリングは、このコンピュータ言語の名前を決めるとき、た
またま目に入った窓の外の大きな樫の木にちなんで「オーク」と
名付けたのです。
 しかし、どんな凄いコンピュータ言語であっても、CEOや役
員に対しては、何らかのかたちにして見せる必要があるのです。
 1992年8月のことです。ゴスリングたちは「オーク」を利
用して、タッチスクリーンでテレビ、ビデオを集中的に操作でき
るシステムを開発し、それをノートンがスコット・マクニーリの
前でデモをしたのです。これが「スターセブン」なのです。
 このスターセブンの命名は、ゴスリングたちがいたオフィスに
おいて、外線電話がかかってきたとき「*7」のキーを押してつ
なぐことにちなんでいるのです。
 しかし、「スターセブン」のような試作品は、家電業界がその
気になって投資しない限り実現しないのです。ところが、この業
界は厳しいコスト競争をしており、コストが上がることを気にす
るのです。そのためなかなか乗ってこなかったのです。
 1993年になって、タイム・ワーナーが興味を示し、ファー
スト・パーソン(グリーン・チームの子会社化)はオークでセッ
ト・トップ・ボックスを作ってタイム・ワーナーに売り込みをか
けたのですが、コストがネックとなって、ジム・クラークが率い
ていたSGIに仕事をとられてしまったのです。
 どうも、このチームはついていないようです。しかし、彼らの
開発した驚くべき技術は、当初彼らが予想もしていなかった分野
で大きく生きることになったのです。これについては、明日お話
しすることにします。
―― [インターネットの歴史 Part2/47]


≪画像および関連情報≫
 ・ジェームス・ゴスリング氏の現況
  ―――――――――――――――――――――――――――
  米サン・マイクロシステムズのバイスプレジデント兼サン・
  フェローのジェームズ・ゴスリング氏は、現在、開発ツール
  部門のCTOという職に就いている。JAVAが普及するこ
  とによって、開発者が切実に求めているのは統合開発環境だ
  ろうIBMが開発の中心を担ったEclipse はオープンソース
  のIDEとして、開発者から圧倒的な支持を受けている。同
  社でもゴスリング氏を旗振り役にして、IDE開発に積極的
  に取り組んでいる。
   http://www.atmarkit.co.jp/news/200402/20/gosling.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

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posted by 平野 浩 at 04:51| Comment(0) | TrackBack(0) | インターネットの歴史 Part2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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