2015年05月27日

●「工学が主導する医学との連携強化」(EJ第4042号)

 『新潮45』という新潮社発刊の雑誌があります。1982年
に『新潮+45』の名前で創刊され、45歳以上の中高年層向け
の健康雑誌だったのですが、そのリニューアルに伴い、「+」の
記号が外され、現在の誌名『新潮45』になったのです。
 『新潮45』はその後何回かのリニューアルを経て、2008
年に次のような編集方針で現在の『新潮45』になったのです。
新潮社のホームページには次のようにあります。
─────────────────────────────
 自らに課したテーマは、ネット全盛で、長く活字メディアが苦
境に陥っている中、どうすれば、雑誌はこの時代と充分に闘え、
生き残っていけるのか、ということでした。答は簡単には見出せ
ませんが、その方策のひとつは、ジャーナリズムの原点への回帰
でした。タブーをおそれず、常に事実といわれるものを疑い、己
が真っ当と信ずるところを発言していく。重要な役割りの一つに
「報道」があることを今一度肝に銘じ、周りや時流に迎合せず、
自身の立ち位置を堅守して、生きた情報と論評を発信していく姿
勢を第一にしたのです。そこから再出発し、結実したビジョンが
「ネットより深く、新聞・テレビより鋭く、新書より速い“最先
端メディア”」――。それが生まれ変わった『新潮45』の形で
す。                 http://bit.ly/1dr9Whf
─────────────────────────────
 なぜ、『新潮45』の話を取り上げたのかというと、STAP
細胞事件の疑惑をこの雑誌が初めて取り上げ、次のタイトルで連
載をはじめたからです。2014年4月号から、同9月号までの
全6回です。この連載は、その後加筆・改稿が行われ、2014
年11月には単行本化されています。
─────────────────────────────
               小畑峰太郎+本誌取材班
  「STAP細胞に群がる悪いやつら」/『新潮45』
─────────────────────────────
 フリーライターの小畑峰太郎氏は、2014年1月28日の理
研によるSTAP細胞発見の記者会見の翌日に『新潮45』の編
集部に次の申し入れを行っているのです。
─────────────────────────────
 あれは科学的偉業の発見としてはまったく不可解な発表のされ
方で、小保方という研究者にはどこか胡散臭さが付きまとう。佐
村河内守の贋作騒ぎと似た臭いがする。調べるから、書かせてほ
しい。                  ──小畑峰太郎著
      『STAP細胞に群がった悪いヤツら』/新潮社刊
─────────────────────────────
 小畑峰太郎氏の本を読むと、メディアの報道ではほとんど伝え
られていないSTAP細胞事件のウラ側の事情が見えてきます。
これからの真相究明のために参照させていただくつもりです。
 筏義人と岡野光夫両教授に共通していたのは次の考え方です。
工学には面白い技術がたくさんあり、技術的知見も豊富にある。
したがって、再生医療に関しては、工学と医学が連携し、工学の
技術的知見を最大限に生かすために、工学の研究者がこの分野を
強力に牽引すべきであるというものです。
 そのかたちは整いつつあったのです。1998年に筏義人氏が
京都大学再生医科学研究所教授に就任した翌年に、岡野光夫氏は
東京女子医科大学医用工学研究施設・施設長に就任し、連携がと
れる体制ができたからです。とくに京都大学再生医科学研究所に
は、36歳の若さで教授に昇進した笹井芳樹氏が意欲的にES細
胞の研究を進め、数々の成果を上げはじめたからです。
 2001年になると、岡野氏は「セルシード」という会社を立
ち上げ、自ら役員に就任するのです。再生医療を将来産業化させ
るための布石とみられます。これに関する岡野氏の狙いについて
小畑峰太郎氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 岡野には更なる独自の野望があった。仮に技術が確立しても、
産業化されなければ意味がない。「産業化」こそ、この新分野に
おける自らの最大の課題であるという強迫観念にも似た思いが、
岡野を魅了していたのだ。岡野は「産業」自体を自らの手で作っ
てしまう思い切った行動に出る。
 2001年、セルシードという会社を自ら設立し、取締役に就
任したのである。同社の目的は「細胞シート」を開発し、それを
普及させることだった。細胞シートとは、患者から採取した細胞
を培養、増殖させてシート状にしたものだ。それを患部に貼って
治療に用いると、拒否反応などが少ないため劇的に治癒が進むと
いう、いわゆる再生医療の一種だが、この時点では実用化を目指
して研究が進められている段階に過ぎなかった。それでも、岡野
は産業化を急いだ。この性急な姿勢にはおおいに疑問を感じざる
を得ない。        ────小畑峰太郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 細胞シート工学──これは、ティッシュ・エンジニアリングそ
のものです。細胞シートは身体のどの部位の細胞(細胞ソース)
からも作成できるのです。あらかじめ患者からこの細胞シートを
作って保存しておけば、再生医療に飛躍的な効果をもたらすもの
といえます。皮膚の細胞から作るiPS細胞などはその典型です
が、岡野氏が「セルシード」を立ち上げた時点ではまだ研究が緒
についたばかりだったのです。
 「医療を経済に組み込む」という岡野氏のアプローチに共鳴し
たのは大和雅之氏です。産業のひとつとしての医療を考えて、そ
こに産業としての規制をあてはめる──医療に比べて産業は規制
が相対的に緩やかなので、研究を大きく前進させることができる
からです。そのため、大和氏は政府が進めようとしている特区な
どの制度を研究し、活用し、学問と学問のはざまで、新しい世界
を作り出すことはできないか──岡野氏が進める「セルシード」
に協力して行くことを大和氏は誓ったものと考えられます。
             ── [STAP細胞事件/015]

≪画像および関連情報≫
 ●「セルシード」とは何か
  ───────────────────────────
   セルシードは、2001年に設立された東京女子医科大学
  発の再生医療企業です。日本発・世界初の再生医療プラット
  フォーム技術である「細胞シート工学」を基盤技術とし、細
  胞シート工学を用いて組織や臓器を再生することによって、
  様々な難治性疾患・損傷を治療する「細胞シート再生医療」
  の事業化・世界普及を目指しております。細胞シート工学は
  東京女子医科大学の岡野光夫教授らが世界に先駆けて開発し
  た「温度応答性細胞培養器材」で、細胞からシート状の組織
  (「細胞シート」)を培養し無侵襲に回収するという革新的
  な技術です。この技術によって作製される細胞シートは、接
  着タンパク質を失わずに保持しているため移植時に縫合なし
  で患部に生着し、また幹細胞を多く含んでいることから効率
  良くかつ継続的に患部組織の再生を促すなど、再生医療医薬
  品として多くの特長を有しています。当社は、この細胞シー
  ト工学を基盤とした2種類の事業を推進しております。
   1つは「細胞シート再生医療事業」であり、細胞シート工
  学に基づいて作製された様々な種類の再生組織・臓器(細胞
  シート)を安全かつ高品質な医薬品(「細胞シート再生医療
  医薬品」)として世界中の医療現場及び患者さまにお届けす
  ることを主な目的としております。現在当社が当事業におい
  て研究開発を進めている主な細胞シート再生医療医薬品パイ
  プラインは、角膜再生上皮シート、食道再生上皮シート、歯
  周組織再生シートなど合計5つです。
                   http://bit.ly/1Q4dIcp
  ───────────────────────────

小畑峰太郎氏の本.jpg
小畑 峰太郎氏の本 
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | STAP細胞事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。