2015年05月12日

●「ES細胞について知る必要がある」(EJ第4031号)

 現在、STAP細胞についての大方の認識は、次のようなもの
になっていると思います。
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 STAP細胞の正体はES細胞である。何者かが故意に、も
 しくは過失によってES細胞を混入して作成したものであり
 STAP細胞なる万能細胞は存在しない。これは理研の調査
 委員会の結論である。
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 疑問に思うのは、理研の調査委員会がES細胞の混入者を特定
していないことです。この研究のメインの研究者である小保方晴
子氏が当然一番疑われますが、あえて混入者の特定を避けている
のは、確証がないからなのか、犯人捜しをすると、理研自体に影
響が及ぶので、あえて避けているものと思います。
 ところで、この事件を理解するには、まず、「ES細胞」につ
いて知らなければなりません。もともと「万能細胞」と呼ばれる
もののおおもとはES細胞であるからです。最初に、ES細胞の
正式な名称を覚える必要があります。
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       「胚性幹細胞」 ─→ ES細胞
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 卵子と精子が受精すると受精卵ができます。この受精卵は次の
ように分裂していきます。
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 受精卵→2細胞期→4細胞期→8細胞期→16細胞期→32細
 胞期→桑実胚(そうじつはい)期→胚盤胞(はいばんほう)期
─────────────────────────────
 最初の分化は、この「桑実胚期」と「胚盤胞期」の間に起こり
次の2つ細胞に分かれるのです。
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  1.栄養外胚葉/Trophoectoderm/TE
    ──将来、胎盤などの胚体外組織を作る細胞
  2.内部細胞塊/Inner cell mass/ICМ
    ── 将来、胎児などの胚体組織を作る細胞
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 このうち「2」の「内部細胞塊」を体外で培養できるようにし
たものが、ES細胞なのです。胎児を構成するすべての細胞は、
この内部細胞塊、すなわちES細胞から生まれることから、ES
細胞は「万能細胞」と呼ばれるのです。
 1981年に英国のケンブリッチ大学のマーチン・エバンス教
授らがマウスでのES細胞の作成に成功しています。続いて19
98年には、米国のウィスコンシン大学のジェームズ・トムソン
教授らによって、ヒトのES細胞が作成されています。
 2007年のノーベル医学・生理学賞には、マリオ・カペッキ
マーチン・エバンス、オリバー・スミシーズの3氏が受賞してい
ます。それは「ノックアウトマウス」を作った功績によるもので
す。ノックアウトマウスとは何でしょうか。
 ノックアウトマウスとは、遺伝子の働きを調べたり、新薬の効
果を調べたりするさいに利用されるもので、さまざまな医学的な
貢献に寄与するものです。
 例えば、機能のわからない遺伝子が見つかった場合、遺伝子操
作によって、その遺伝子を働かなくしたマウスを作ります。これ
がノックアウトマウスです。ノックアウトというのは、その特定
の遺伝子を働かないようにすることをいうのです。そのうえで、
そのノックアウトマウスと正常なマウスを比較すれば、その機能
の異常が見つかることになります。
 また、高血圧を下げる新薬の実験では、生まれつき高血圧にな
るようなノックアウトマウスを作り、新薬の高血圧への効果の有
無の判定を行うのです。
 このノックアウトマウスを作成するには、ES細胞が不可欠な
のです。2007年のノーベル医学・生理学賞にマーチン・エバ
ンス教授が入っているのはそのためです。
 それでは、ヒトのES細胞の作成に成功したジェームズ・トム
ソン教授は、なぜノーベル賞をもらえないのでしょうか。それは
マウスの場合はよいのですが、ヒトのES細胞を作るには、倫理
的問題があるからです。
 これについて、龍谷大学講師の清水万由子氏は、次のように述
べています。
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 ES細胞はヒトの胚を壊して取り出したものからつくるという
点が問題となる。胚はそのまま胎内にあればヒトとなる存在であ
るため、研究のためにヒト胚を壊したり操作を加えるのは許され
ないという反対意見がある。この問題は、胚は生命と言えるのか
という問題から発生しているように思われる。それは、生命であ
るとしたらいかなる条件でも胚を壊すことは許されないのか、生
命でないとしたらどこからが生命なのかという問いに続くことに
なろう。               http://bit.ly/1F7dd1s
─────────────────────────────
 これに対して京都大学の山中伸弥教授は、マウスのしっぽの皮
膚の細胞に4つの遺伝子を入れると、ほとんどの種類の細胞に分
化しうる「多能性」を持つ細胞群が現れたとする内容の論文を発
表したのです。2006年8月のことです。それは、まるでES
細胞そのものであったのです。
 人間の体には、およそ200種類、合計60兆個の細胞がある
といわれますが、それらのおおもとは1個の受精卵なのです。そ
れが何回も細胞分裂を繰り返すなかで、皮膚、肝臓、腸、神経と
いったさまざまな種類の細胞に分化していきます。
 これは幹から枝が、枝から葉ができてくるのと同じですが、山
中教授の発表は、まさに「葉から幹へ」戻れることを証明した結
果になったのです。そのため、世界中に驚きが拡大していったの
です。          ── [STAP細胞事件/004]

≪画像および関連情報≫
 ●「ES細胞、iPS細胞、幹細胞の利用」/日本医師会
  ───────────────────────────
  人の胚(受精卵)の内部細胞塊から、体中の細胞に分化でき
  る多能性を持つ幹細胞=ES細胞(胚性幹細胞)の樹立に成
  功したとの論文発表があったのは、1998年11月のこと
  だった。同時期に同等の多能性を持つ幹細胞(EG細胞)が
  死亡胎児の始原生殖細胞から樹立できたとの論文も発表され
  た。再生医療研究はこのときから始まったといえるが、それ
  はまた重い倫理的課題の始まりでもあった。胚を壊してつく
  るES細胞や、人工妊娠中絶による死亡胎児由来のEG細胞
  の研究は、人の生命の始まりを犠牲にする行為として、キリ
  スト教保守派を中心とした社会勢力から激しい反対を引き起
  こした。日本では欧米ほどの世論の反発はなかったものの、
  政府が倫理指針を設けて研究を管理する慎重な姿勢がとられ
  た。その際、EG細胞の研究は、問題が多いとして承認が見
  送られた。その後2002年に、骨髄の間葉系細胞に多能性
  を持つ幹細胞が含まれることが発見され、いち早く臨床応用
  されるに至った。患者自身の体から採取できるので、医学的
  倫理的ハードルが低かったためである。日本でも閉塞性動脈
  硬化症に対する骨髄幹細胞移植が、先進医療に認められてい
  る。ただ骨髄由来幹細胞はES細胞に比べ増殖能と分化能が
  弱く、治療に用いるには限界があった。
                   http://bit.ly/1FQUqWN
  ───────────────────────────

山中伸弥京都大学教授.jpg
山中 伸弥京都大学教授
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | STAP細胞事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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