2015年04月14日

●「メディア規制を強化する安倍政権」(EJ第4015号)

 「萩生田文書」なるものがあります。安倍首相は、2014年
11月21日に消費税10%引き上げ延期を表明し、衆議院を解
散しています。その2日前の11月18日、安倍首相はTBSの
「NEWS23」に出演したのです。
 番組がアベノミクスに関する街頭インタビュー映像を流すと、
首相はみるみる不機嫌になったといいます。「景気がよくなった
とはあんまり思わない」とか「アベノミクスは感じていない」と
いう批判的な意見が多かったからです。そして、安倍首相は次の
ように抗議したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 6割の企業が賃上げしているのですよ。これ、ぜんぜん声が反
映されてませんが、おかしいじゃないですか。
     ─2015年11月18日付、「NEWS23」より
―――――――――――――――――――――――――――――
 街頭インタビューですから、公平に多くの声を集めることは困
難です。局としては、街頭でできる限り集めた声を編集して流し
ただけなのです。これをもってすべての実態をあらわしていると
はいえませんが、多くの国民はそう感じており、国民の声を代弁
しているといえます。それを安倍首相は「公平じゃない」と憤慨
したのです。一国の首相の対応とは思えない幼児性です。
 それから1日後のことです。安倍首相の側近の萩生田光一自民
党総裁特別補佐は、在京キー局の自民党記者クラブを個別に呼び
出し、自民党筆頭副幹事長名で各局の編成局長、報道局長に宛て
た文書を手渡し、実施を迫ったのです。なお、自民党筆頭副幹事
長は、萩生田氏が兼務していています。
 問題のその文書ですが、多くのサイトがURLを掲載していま
すが、現在ではすべて削除されています。官邸にはメディアを監
視するチームがあり、不都合なコンテンツはすべて削除を命令し
ているようです。やましいことがなければ、そんなことはしない
はずです。しかし、やっとその文書を入手したので、次に一部を
示しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 衆議院選挙は短期間であり、報道の内容が選挙の帰趨に大きく
影響しかねないことは、皆様もご理解いただけるところと存じま
す。また、過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレ
ビ局は偏向報道を行い、それを事実として認めて誇り、大きな社
会問題になった事例も現実にあったところです。
 したがって、私どもとしては、
 ・出演者の発言回数及び時間等についても公平を期していただ
  きたいこと
 ・ゲスト出演者の選定についても公平中立、公正を期していた
  だきたいこと
 ・テーマについて特定の立場から特定政党出演者への意見の集
  中などがないよう公平中立、公正を期していただきたいこと
 ・街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、ある
  いは特定の政治的立場が強調されることがないよう、公平中
  立、公正を期していただきたいこと
──等について特段のご配慮をいただきたく、お願い申し上げま
す。以上、ご無礼の段、ご容赦賜り、何とぞよろしくお願い申し
上げます。              http://bit.ly/1HhcxW0
―――――――――――――――――――――――――――――
 これをよく読むと、テレビ局はほとんど何もできないことにな
ります。その一方において、安倍首相は信じられないほど多くの
回数にわたって、メディアのトップと親しく会食を重ねているの
です。まさに「アメとムチ」の両方を使い分けて、やりたい放題
です。これでは、テレビ局としては対応に苦慮するはずです。
 それでもテレビ局は毅然として局として考える公平中立の立場
に立って、報道すべきです。それがジャーナリズムの精神だから
です。それでは、テレビ局は実際にどう対応したのでしょうか。
 日本のテレビ局は、「あとで自民党に文句をいわれるのは面倒
である。トップの立場もある。選挙報道は最小必要限度に縮小し
よう」と考えて、実施したのです。
 数字で根拠を示します。「SAPIO/サピオ」2015年5
月号は次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 テレビ番組の調査・分析会社の集計によると、衆院解散当日か
ら、1週間(11月21日〜27日)の間にNHKと在京民放5
局が取り上げた選挙関連の放送時間は合計26時間16分で、前
回総選挙(12年)の約3分の1に減った(朝日新聞/2014
年12月10日付)。テレビ局は「報道の中立」に配慮して番組
をつくるのではなく、「あとで自民党に文句をいわれるなら、や
めてしまえ」とばかりに選挙報道そのものを減らしたのである。
        ──「SAPIO/サピオ」2015年5月号
―――――――――――――――――――――――――――――
 この萩生田文書に続いて、今回の古賀氏のクーデター発言によ
り、メディア、とくにテレビ朝日は政治番組のメインの時間帯で
ある日曜日の午前中から「報道ステーションサンデー」を夕方に
移動させ、その後にお笑い番組を配置するという愚かな変更を行
い、安倍政権にシオを贈っています。
 さらに、月曜日〜金曜日の朝のワイドショー「モーニングバー
ド」では、キャスターを大幅に減らし、まともなコメントをする
コメンテーターを慎重に外しています。これによって番組の魅力
は大幅ダウン。ことさら、安倍政権を刺激しないようメディアが
政権に全面協力しているのです。誠に嘆かわしい事態です。日本
のジャーナリズムの死ともいえます。
 このようにメディアが政権批判を自主規制し、政治との緊張関
係が失われると、政治のモラルハザードは一段と進んでしまいま
す。現に違法献金疑惑を追及されている真っ黒の下村博文文科相
もメディアの追及がないので、ゆうゆうと逃げ切れてしまいそう
です。          ── [検証!アベノミクス/97]

≪画像および関連情報≫
 ●古賀茂明氏のコラム/週刊現代「官々愕々」より
  ―――――――――――――――――――――――――――
  自民党の今回の文書発出は、どう見ても政権与党として禁じ
  手だ。明らかに憲法が保障している表現の自由への直接的侵
  害行為であり、報道の自由への重大な挑戦である。これが他
  の先進国で起きたら、単なる政権批判だけではすまない。政
  権そのものが揺らぐ大問題になるはずだ。しかし、私が今回
  の事件でもっと驚いたのは、この文書を受け取ったテレビ局
  やそれを知った他の報道機関の多くが、本件を重大な問題だ
  と受け止めなかったことだ。自民党の「暴挙」を知りながら
  ほぼ1週間放置した日本の報道機関。テレビ局は報道したら
  安倍総理に睨まれるからということでおとなしくしていた。
  政府を監視するというマスコミの役割を果たす気力も能力も
  持っていないということになる。官邸詰めの記者クラブにい
  たテレビ局以外の新聞社の記者たちもうすうす知っていたら
  しい。しかし、どの新聞も通信社もこれを報道しなかった。
  最初に報道したのは、インターネットテレビ「ニューズオプ
  エド」だったが、その後もテレビ局はニュース番組でこれを
  取り上げていない。これは結果的に在京キー局が選挙に際し
  て自民擁護の役割を果たすことになる。偏向以外の何物でも
  ない。これこそ放送免許剥奪につながる問題ではないのか。
  「国境なき記者団」が発表している「報道の自由度」世界ラ
  ンキングというものがある。それによれば、日本はG7の中
  ではダントツのビリ。先進国中でも異例の下位にあり、14
  年は何と59位である。民主党政権時代は、10位台か悪く
  て20位台だった。        http://bit.ly/1qH3M1A
  ―――――――――――――――――――――――――――

特集を組んだ「SAPIO/サピオ」.jpg
特集を組んだ「SAPIO/サピオ」
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アベノミクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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