2015年02月26日

●「安倍首相と黒田総裁の微妙な関係」(EJ第3982号)

 2月12日に行われた経済財政諮問会議において、黒田日銀総
裁は自ら発言を求め、「この発言は議事録から外して欲しい」と
前置きして5分以上にわたり、財政再建についてオフレコで重要
な発言をしています。
 出席者からの情報を集めると、おおよそ次のような発言であっ
たといわれています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 金融機関の国際ルールでは、自国通貨の国債はリスクをゼロと
規定しているが、海外では国債もリスク資産とみなし、規制を強
化すべきだという議論が始まりつつある。議論が本格化すれば、
大量の国債を持つ日本の金融機関が国債を手放し始める。その結
果、国債が暴落し、金利が急上昇する。まして日本の国債は20
14年に民間の格付け会社がランクを下げており、日本の銀行経
営に対する影響が懸念される。事態はきわめてリスキーであると
考えている。               ──黒田日銀総裁
―――――――――――――――――――――――――――――
 経済財政諮問会議で黒田日銀総裁が自分から発言することはあ
まりないそうです。ところが12日は総裁自ら発言を求めており
きわめて異例なことです。
 この発言に関して安倍首相は「民間の格付け会社と話し合って
みたらどうか」とややピンボケな発言をしたそうです。これに対
して黒田総裁は、かつて格付け会社のトップと国債格付けの件で
話したことがあるが、格付けを変えることはできなかったとした
うえで、安倍首相に対し、財政健全化に本腰を入れるよう強く訴
えたというのです。
 この発言についてはいろいろなことがいわれています。見方と
しては、次の2つがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.黒田日銀総裁は、金融機関の国際ルールの見直しの動き
   を把握し、政府に警告したものである。
 2.黒田日銀総裁は、財政再建をめぐって安倍政権と距離を
   置こうとし、蜜月が転機を迎えている。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「1」は、日銀総裁が自らの職務として、経済財政諮問会議の
場を借りて、安倍首相に国債の現状を報告し、財政再建への姿勢
をもっと強めて欲しいと要望したものという見方です。
 なぜかというと、安倍政権としては2020年までに基礎的財
政収支の黒字化を目指す方針は変えていないものの、自民党議員
の一部に、「2020年までの黒字かなんて無理」という声が出
てきていることを黒田日銀総裁は懸念し、クギを刺したというの
が「1」です。
 しかし、本当のところは「2」であるという見方が支配的なの
です。2月21日付の日本経済新聞の朝刊では、第2面に次の記
事を掲載し、そのことを伝えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ≪真相深層≫
   政府と日銀、転機の蜜月/17年消費増税、再び試練
       ──2015年2月21日付、日本経済新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 「首相と黒田さんの距離が広がっている」──首相周辺はこの
ように証言しています。それは黒田総裁が2014年10月31
日に官邸に対して何の根回しもなしに追加緩和を打ち出したこと
にあるのです。
 アベノミクスによる物価目標2%の達成は、人々の期待に働き
かける政策であり、そのためにサプライズが必要であると考える
黒田総裁は、内輪の人にもサプライズを与える意味で官邸に根回
しをしなかったとも考えられます。
 しかし、官邸は別の意味にとったのです。もしかすると、財務
省は日銀と組んで何が何でも消費税10%増税を既成事実化しよ
うとしているのではないかと疑心暗鬼になったのです。追加緩和
以前にも、安倍首相は「増税は計画通りに実施すべき」と繰り返
す黒田総裁に少しずつ疑念を持っていたのです。
 そのとき、安倍首相は消費税10%増税の先送りをほぼ決めて
おり、そういう憶測は当時世間に広がりを見せていたのです。も
ちろん黒田総裁の耳にも届いていたものと思われます。
 「首相は迷っている」と考えた黒田総裁は、ここで追加緩和を
行うことによって、一層の円安が進み、株価を高騰させれば、安
倍首相は増税決断がしやすくなるのではないかと考えて、追加緩
和を実行したのです。つまり、追加緩和はあくまで10%増税を
前提とするものだったのです。
 しかし、日銀が追加緩和を行い、実際に円安/株高が起きると
安倍首相はそれを増税を延期し、解散を強行する絶好のチャンス
ととらえて、増税延期宣言をし、解散総選挙行ったのです。
 これによって黒田日銀は追いつめられることになったのです。
黒田総裁が国債の発行額全量を買い取る追加緩和を決めた直後に
増税が延期されたため、日銀の「量的・質的緩和」による国債買
い入れが財政の穴埋め──マネタイゼーションの色彩が強くなり
急激な円安や資本逃避の可能性も出てきたからです。これで日銀
側も安倍政権に不信感を持つようになったのです。
 そして、1月23日、政府は月例経済報告で、「2%の物価目
標を『できるだけ早期に』実現」としてきた表現を「経済・物価
情勢を踏まえつつ」に変更したのです。一見すると、原油安など
で物価低迷に悩む黒田総裁に助け舟を出したように見えますが、
日銀はこれを「首相サイドの意趣返し」と受け取ったのです。
 「異次元緩和は、人びとの物価上昇への期待に働きかける政策
だ。政府があっさり『早期』の旗を降ろしたことは、日銀からみ
ればはしごを外されたに等しい」と日経の「真相深層」は書いて
います。このようなことがあって、黒田総裁の2月12日のオフ
レコ発言になったものと思われます。
            ─── [検証!アベノミクス/64]

≪画像および関連情報≫
 ●日本経済新聞/「真相深層」より
  ―――――――――――――――――――――――――――
  黒田氏と首相のすれ違いが目立つのは、財政健全化や物価を
  めぐってだけではない。1月にスイスのダボスで開いた国際
  会議の討論会。「第3の矢(成長戦略)が今ひとつですね」
  と突っ込まれた黒田氏は、苦笑いするしかなかった。ある日
  銀幹部は「第1の矢である金融政策でやれることはやるが、
  そろそろ政府にバトンを引き継いでもらわないと」と本音を
  漏らす。(中略)首相は昨年11月に衆院を解散する際、景
  気の良しあしに関係なく17年4月には消費税率を必ず上げ
  ると約束した。同じタイミングで日戯が異次元緩和の出に向
  かえば、財政と金融は同時に引き締められる。景点は腰溺れ
  しかねない。長期政権をめざす首相は、黒田氏に18年4月
  の任期まで異次元緩和を続けるよう求める可能性がある。そ
  のとき黒田氏は「日銀総裁として物価安定への姿勢を問われ
  る。(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)脱デフレに向けて
  首相と黒田氏の連携を維持しつつ、日銀の独立性をどう確保
  するか。古くて新しい問題に向き合う時期にさしかかってい
  る。──2015年2月21日付、日本経済新聞/「真相深
  層」より
  ―――――――――――――――――――――――――――

黒田日銀総裁/安倍首相.jpg
黒田日銀総裁/安倍首相
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アベノミクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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