2015年02月18日

●「ドイツはやがて発展途上国になる」(EJ第3976号)

 ドイツが頑なに遵奉する財政均衡主義──それは基本的にいう
と、財政の支出と収入が均衡していることをいいます。つまり、
財政均衡主義は、小さな政府による新古典派経済学的発想に立脚
した経済の考え方です。日本の財務省も同じ考え方に立っていま
す。ただ、ドイツの場合問題なのは、これをEU全体に広げよう
としていることです。
 2013年6月のことです。ドイツ経済研究所があるレポート
を発表したのです。その内容を経済評論家・三橋貴明氏の本から
引用します。
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 1990年以降、ドイツでは国内インフラの維持などに必要な
投資額が、毎年平均750億ユーロ(10兆円弱)足りず、経済
成長率が押し下げられているというのである。
 速度無制限で有名なドイツの高速道路ネットワーク、すなわち
アウトバーンで、もっとも交通量が多いA1号線のライン橋では
速度が時速60キロに制限されている。橋が老朽化し、速度無制
限にすると危険であるためだ。
 また、アウトバーンのA52号線は、一部の片側路線が閉鎖さ
れた。ベルリンでは一般道路の傷みが激しく、制限速度が10キ
ロに下げられ、市バスが路線変更せざるをえない区間もある。ド
イツの自治体連盟のウベ・ツインマーマン副事務局長は、「アウ
トバーンで完全通行禁止になる橋が出てくるのは時間の問題」と
語っている。          ──三橋貴明著/徳間書店刊
     『2014年/世界連鎖破綻と日本経済に迫る危機』
―――――――――――――――――――――――――――――
 なぜ、こんなことになるのでしょうか。それは、ドイツは憲法
(基本法)において、歳入と歳出を均衡させなければならないよ
う定められており、対GDP比で0・35%の国債発行しかでき
ないのです。そのため、どんなにインフラが老朽化しても、国債
を発行できないのです。
 前にも述べたように、ドイツは家計レベルの論理を国家財政に
当てはめようとしています。なるべく借金をしないよう倹約する
ことは家計の常識としては大切なことですが、それを国家財政に
もあてはめようとするのは間違っています。まして憲法に書いて
それを縛ろうとするのは異常です。
 かつて昭和前期に日本が深刻なデフレ不況に陥ったとき、時の
大蔵大臣・高橋是清は大胆な金融政策を実施してデフレ脱却を成
し遂げていますが、そのとき高橋是清は次のように国民に話しか
けているのです。
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 年に5万円の生活をする余力のある人が倹約して3万円で生活
して残り2万円を貯蓄に充てた場合、その人個人は毎年それだけ
の蓄財2万円ずつが増えていって誠に結構なことであるが、これ
を国の経済から見るときは、その倹約によってこれまでその人が
消費していた2万円分の物質の需要がどこかに消えてしまう。当
然生産もされない。             ──三橋貴明著
           『真説日本経済』/KKベストセラーズ
―――――――――――――――――――――――――――――
 高橋是清は、実にわかりやすく家計と国の財政の違いを説明し
ています。そういう意味でドイツは経済というものがわかってい
ないと思います。自分たちの作ったルールに縛られて、道路など
の危険な場所を放置し、事故が起きて人命が失われたらどうする
のでしょうか。それよりも憲法が優先するのでしょうか。
 それだけではないのです。ドイツはこの愚かな財政均衡主義を
EU諸国に押し付けようとしています。EU諸国は新財政協定に
より、近い将来、EUが崩壊しなければの話ですが、この財政均
衡主義をEU各国の憲法に書くことになるのです。
 その矛盾が現在のギリシャに出ています。ギリシャはこれまで
に何回もデフォルトをするなど、財政規律の甘い国ですが、そう
かといってカネを出してやったのだから、ドイツと同レベルの緊
縮財政政策をやれと強制した結果、ギリシャの経済は一向に回復
しないのです。チプラス政権のいうように、ギリシャ支援は失敗
だったといえます。
 ドイツほど日本はひどくありませんが、日本の財務省も財政均
衡主義に立っており、これまで増税をしてはならないタイミング
で増税をして、せっかく立ち直りかけた景気を何回も潰してきた
「実績?」があるのです。財務省も平気で国の財政を家計にたと
えて増税の必要性を説いています。増税の必要性を国民に認識さ
せる手段なのか、財務省が経済というものがまるでわかっていな
いかのどちらかです。
 添付ファイルを見てください。日本は小泉政権以降、公共投資
を一貫して減らし続けてきています。1996年を100とする
と、半減させています。これまで「公共投資=悪」と考えてきた
のです。その落差はドイツを上回っています。
 三橋貴明氏は、このままでは「ドイツは遠からず発展途上国に
になる」として、次のように述べています。現在、ドイツの経済
が良いのは財政均衡主義とやらのおかげではなく、ユーロによっ
て多大の恩恵を受けているからです。
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 政府(というか国民)が新古典派経済学的な財政均衡主義に傾
注し、インフラのメンテナンスすら、「借金が増えるからやらな
い」を続けていくと、いずれは発展途上国化する。道路がボロボ
ロで通れない。橋が危なくて渡れない。それにもかかわらず、自
国で修繕できない、というのが(理由はどうあれ)発展途上国と
いうものだ。インフラが財政均衡主義という魔物に魅入られ、ボ
ロボロに朽ち果てていけば、当たり前だが、その国の経済成長力
は落ちていく。物流や人の移動がスムーズにいかない国が、成長
率を高められるはずがない。   ──三橋貴明著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
            ─── [検証!アベノミクス/58]

≪画像および関連情報≫
 ●ユーロ崩壊は悪性インフレから始まる/土居丈朗慶大教授
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ユーロが崩壊する前に、前兆現象として起こりうるのはユー
  ロ圏で制御困難な悪性インフレでしょう。ユーロが崩壊する
  とは、ユーロという通貨を大半の人が信用できず、ユーロを
  経済取引で使いたくなくなることです。ユーロがそれなりの
  通貨価値を何とか保ち続けられるなら、強いてユーロを崩壊
  させる動機は生じないでしょう。ユーロ圏経済の現状は、財
  政危機に端を発した金融危機、金融市場の機能不全が強く懸
  念される状況です。金融市場での混乱からマクロ経済へと悪
  影響が波及することも起こりえます。ただ、金融危機が起こ
  った後の経済は、世界大恐慌、1997年の日本、リーマン
  ショックを見てもわかるように、信用収縮が起こりデフレ圧
  力が生じます。金融危機が起こった後は、流動性不足から、
  決済資金を必要とする企業や個人の現金需要がむしろ高まる
  可能性があって、ユーロの崩壊の元となりうる通貨価値の大
  幅な毀損には直結しません。ただ、決済資金の需要は、国際
  的な経済取引を念頭に置けば、何もユーロでなければならな
  いという必然性はありません。ユーロ以外の通貨に資金需要
  がシフトするなら、ユーロの需要が減少するので、ユーロの
  価値が他の通貨と比べて下落することはありえます。
                   http://bit.ly/1zEhJuO
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ●グラフ出典/三橋貴明著の前掲書より

公共事業を減らし続けた災害大国.jpg
公共事業を減らし続けた災害大国
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アベノミクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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