2015年02月17日

●「政治家から金融政策を奪うユーロ」(EJ第3975号)

 ロバート・マンデル氏というカナダの経済学者がいます。19
32年生まれですので、現在82歳ですが、コロンビア大学経済
学科教授を務めています。サプライサイド経済学の権威として知
られています。
 ロバート・マンデルコロンビア大学教授の功績を上げると次の
ようになります。
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   1.「最適通貨圏理論」の構築/最適通貨理論の父
   2.     ユーロの構築への貢献/ユーロの父
   3.別の時代の金本位制の運用に関する歴史的研究
   4.1970年代に起きたインフレーションの予測
   5.       マンデル=フレミング・モデル
   6.          マンデル=トービン効果
―――――――――――――――――――――――――――――
 マンデル教授といえば、「マンデル=フレミング・モデル」が
有名ですが、彼はユーロの設計者として知られ、「ユーロの父」
とも呼ばれているのです。
 このマンデル教授について、2012年7月26日に、英国の
大手新聞「ザ・ガーディアン」に次のような衝撃的な記事が掲載
されたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   「ロバート・マンデル、ユーロの邪悪なる天才」
             ──「ザ・ガーディアン」
              グレッグ・パラスト記者
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 少し長いですが、そのエッセンス部分を三橋貴明氏の著作から
引用します。驚くべき内容が記述されています。一人称(私)は
米国人ジャーナリストのグレッグ・パラスト記者です。
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 選挙で選ばれた政治家からマクロ経済政策を奪い、規制緩和を
強制することは、ユーロ構築にさいした計画の一部だった。ユー
ロが失敗しているという考え方は、あまりにもナイーブ(幼稚)
である。ユーロは、1%の富裕層が当初から計画していたとおり
予定どおり正しく機能している。
 その始祖は元シカゴ大学の経済学者ロバート・マンデル教授で
ある。供給サイドの経済学(サプライサイド経済学)の権威は、
現在はコロンビア大学の教授である。しかし、私は通貨と為替レ
ートに関するマンデルの研究がヨーロッパにおける通貨統合と共
通通貨の青写真となる前から、シカゴ大学のミルトン・フリード
マン教授を通して彼を知っていた(中略)。
 ユーロは危機のときにこそ真価を発揮する、とマンデルは説明
した。為替レートに対する政府の干渉を排除すると、不況期にケ
インズ的な金融、財政政策をとりたがる厄介な政治家を妨害する
ことができる。「政治家の手が届かないところに、金融政策を置
くんだ」彼は言った。
 金融政策と財政政策が使えないとなると、雇用を維持する唯一
の解は、競争力を高めるために規制を緩和することのみになる。
彼はもちろん(規制として)労働法、環境規制、税制をあげてい
る。すべてはユーロによって洗い流されるだろう。民主主義が市
場価格に干渉することは許されなくなるだろう。(中略)
 マンデルは私に説明した。事実、ユーロはレーガノミクスの断
片である、と。「金融規律が政治家に財務規律をも強制するのだ
よ」。危機が起きると、経済的に武装解除されてしまった国々は
政府の規制を撤廃し、国有産業をそっくり民営化し、税金を下げ
てヨーロッパ型の福祉国家をドブに捨てるしかないのだ。
                ──三橋貴明著/徳間書店刊
     『2014年/世界連鎖破綻と日本経済に迫る危機』
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 「ユーロ」は、ヨーロッパの平和的統合、強いヨーロッパ連合
の実現であるとよくいわれますが、ユーロの設計者の本音はそん
な高邁な思想に基づくものではなく、「1%の富裕層のビジネス
を拡大するための実験的規制緩和手法」ということになります。
 重要な指摘は「政治家の手が届かないところに、金融政策を置
く」という部分です。普通の国は、経済危機に陥ると、現在の日
本のアベノミクスのように、金融政策と財政政策を駆使して乗り
切ることができますが、EUに属する国家は金融政策をECBに
委譲しており、ECBが金融政策のすべてを握っているのです。
 財政政策については各国が有していますが、EU全体にドイツ
的な厳しい財政規律が要求されており、財政政策も自由に使うこ
とは事実上できないのです。
 金融政策と財政政策が使えないとなると、雇用を維持するため
には、規制を緩和して競争力を高めるしかないことになります。
財政危機が生じているギリシャでは、規制を緩和し、公共サービ
スの民営化をさせられ、国有財産の売却まで行われています。そ
れしか方法がないからです。
 これによってトクをするのは、ユーロ圏のグローバル資本なの
です。彼らにとってそれらはおいしいビジネスとなります。ギリ
シャが歯を食いしばって緊縮財政を続けたとしても、おいしいと
ころはすべてグローバル資本に持って行かれるのです。
 このグローバリズムについて経済評論家の三橋貴明氏は、次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 グローバリズムにとって最大の敵はその国の民主主義なのであ
る。だからこそ、グローバリズムは規制緩和に反対する第3層に
「既得権益」とレッテルを貼り、「既得権益をぶち壊せ!」と、
革命チックな攻撃を(マスコミを通じて)行う。ときには、ユー
ロのように、民主主義が機能しにくい構造も設計する。その最大
の犠牲者は、各国の国民である。 ──三橋貴明著の前掲書より
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            ─── [検証!アベノミクス/57]

≪画像および関連情報≫
 ●本当に怖いユーロの話
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  金融政策と財政政策を同時に実施すると、インフレ率は上昇
  するが、現在のギリシャは日本以上に物価上昇率が低迷して
  いる状況にある。日本がアベノミクス効果により、物価上昇
  率が何とか「ゼロから上」に顔を出そうとしているのに対し
  ギリシャは8月時点でもマイナス幅を拡大している。現在の
  ギリシャは、日本以上に深刻なデフレーションに苦しめられ
  ているのだ。元々、国内のモノやサービスを生産する能力、
  つまりは供給能力が不足気味で、国民の需要を満たすことが
  できず、高インフレや貿易赤字が常態化していたギリシャが
  「デフレ」なのである。バブル崩壊後のギリシャ国内の需要
  の縮小たるや、恐るべきペースとしか言いようがない。現在
  のギリシャが失業率を押し下げ、経済を成長路線に戻すため
  には、前述のように金融政策と財政政策のパッケージ以外に
  ありえない。すなわち、普通のデフレ対策をすればいいので
  ある。ところが、ギリシャは「構造的」に正しいデフレ対策
  を実施することが不可能になっている。何しろ、ギリシャ政
  府は独自の金融政策を採ることができない。全てのユーロ加
  盟国は、金融政策の権限をECB(欧州中央銀行)に委譲して
  いる。さらに、ギリシャ政府は財政的な主権も奪われつつあ
  る。EUやIMFから緊急融資を受けた代償として、公務員
  削減などの緊縮財政を強要されているのだ。ゆえに、現在の
  ギリシャには金融政策、財政政策の主権はない。
                   http://bit.ly/1EqImI4
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ロバート・マンデル教授.jpg
ロバート・マンデル教授
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アベノミクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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