2015年02月04日

●「株価を政権支持率とする安倍政権」(EJ第3967号)

 ここまで、安倍政権が「この道しかない」として進めるアベノ
ミクについて、肯定派と反対派のそれぞれの立場に立って、予断
を交えず、その検証を進めてきました。しかし、この方向で正し
いとする答えはまだ見つからないでいます。
 その一方で、このままでいいのかと懸念されることはたくさん
あります。安倍政権は、異常なほど「株価」を気にする内閣であ
るといえます。まるで株価が安倍内閣の支持率であるかのように
気にする内閣です。
 1月30日のテレビ東京のWBSを見ていたときのことです。
不敵な笑顔を浮かべる黒田日銀総裁の顔の大写しと、次のタイト
ルとともにニュースが流れたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     過去最大の買い/日銀過去最大の株買い!
       WBS動画/ http://bit.ly/18G7kta
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 日銀は、2014年10月末の追加金融緩和のさい、年間3兆
円のETF=上場投資信託を買い入れると宣言しているのです。
問題はその実績です。2005年1月は3443億円と過去最大
の規模になっています。この額は、年間の買い入れ総額3兆円の
1割以上の金額であり、単月では過去最大になります。
 さらに問題は買い入れる日です。買い入れのタイミングは主に
日経平均が下落した日で、金額としては5日の374億円の買い
入れが最大だったのです。何のことはない。日銀が日経平均を買
い支えている構図です。もちろん、こんなことは、世界でも極め
て異例の措置であり、株価を押し上げる効果を持つ一方、市場の
役割を歪めているとの批判も出ています。
 ETFというのは「上場投資信託」のことです。証券取引所に
上場されていて、株式と同じように取引される投資信託のことで
日経平均株価などの指数などに連動することを目標に作られてい
るのです。つまり、投資信託と株式、両方の性質をあわせ持つ金
融商品のことです。
 もうひとつ、気になることがあります。それは、昨年の秋に厚
生年金や国民年金の積立金の約130兆円を運用する年金積立金
管理運用独立行政法人(GPIF)の新資産構成への移行がいつ
の間にか決まったことです。確かに、そういう話はニュースとし
ては出ていたのですが、いつそれが発表になったかを明確に覚え
ている人は少ないと思います。
 それは、日銀の追加金融緩和の発表が行われた2014年10
月31日に同時に発表されているのです。添付ファイルの「GP
IF新資産構成」をご覧ください。
 このグラフは、2014年6月末時点の資産構成に比べ、国内
債券(主として国債)の比率を54%から35%に大きく減らし
その分、国内外の株式や、外国債券の比率を大きく増やす内容に
なっています。
 とくに国内株は単純計算で約10兆円の買い増しになり、この
発表後に市場が開いた11月4日の日経平均株価は、448円の
急騰になっています。しかし、これによって国内債券の売却額は
24兆円にも上がり、国債価格下落(金利上昇)にもつながりか
ねない状況になります。
 しかし、日銀は同時発表の追加緩和で、長期国債の購入額を年
間30兆円増額しており、GPIFの国債売却を買い支えた体制
になっているのです。これは、日銀と政府が十分に打ち合わせの
うえで行っていることを示しています。
 といっても、GPIFは、株式市場の需給に配慮して、新資産
構成への移行完了期間を示していないのです。したがって、一気
呵成に新資産構成にシフトするのではないようです。株価が上昇
している局面で、一時的に株価が下落したタイミングを見計らっ
て買いを入れる──押し目買いをしていくことが予想されます。
株価が下落することを相場用語で「押す」と表現するので、この
手法は「押し目買い」と呼ばれるのです。
 心配なのは、この新資産構成は「アベノミクスの成功」を前提
にしていることです。ここまでの検証でもわかるように、アベノ
ミクスには、不透明感が多々あるのです。仮にアベノミクスが不
調に終われば、株価下落によってGPIFには何10兆円もの損
失が発生することも否定できないのです。
 GPIFでは、現在運用のプロの人材を募集しています。転職
支援会社コトラによると、2月にそのための採用セミナーを企画
して応募したところ、セミナーへの参加者が150人と当初の倍
以上集まったので、あわててセミナー会場を変更したほどの盛況
ぶりであるといいます。
 こういうGPIFのやり方について、運用業務20年以上の実
戦経験を持つ評論家で、前国会議員政策顧問でもある近藤駿介氏
は、次のように批判しています。そして、今回のGPIF改革は
間違いだらけであるといっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 GPIFは既に運用のほとんどを外部委託しています。その運
用委託先は、国内外の有名運用機関ばかりです。つまり、国内外
の優秀な運用機関に預けて来たにも関らず、公的年金の問題は運
用では解決出来なかったということです。
 こうした現実があるなかで、どこから「運用の現場に金融のプ
ロ」を採用するというのでしょうか。GPIFが委託していない
組織の中に「プロ」が埋もれているというのでしょうか。
 また、GPIFが「運用の現場に金融のプロ」を採用できたと
しても、運用はこれまでと変り映えしない運用機関に外部委託す
るわけですから、GPIFが「金融のプロ」を採用したことで、
運用委託先の運用が「リスクをとりつつ損失を避け、安定かつ高
い利回りを実現する高度な運用」に変化するなどということはあ
り得ない話でしかありません。     http://bit.ly/1CQCjhj
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            ─── [検証!アベノミクス/49]

≪画像および関連情報≫
 ●GPIF改革は間違っている/小幡 績慶応義塾大学准教授
  ―――――――――――――――――――――――――――
  私は、2014年4月21日まで、公的年金の運用機関であ
  るGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用委員
  というものを4年間務めた。運用委員とは、簡単に言えば、
  社外取締役みたいなものである。現在、「安倍政権の官邸が
  主導して、GPIF改革が行なわれようとしている」という
  報道が盛んになされている。私だけでなく、多くの運用委員
  が4月22日から入れ替えとなり、2名を除いては新しいメ
  ンバーで運用委員会が行なわれることとなった。そして、今
  後は、いわゆる有識者会合で議論された、ガバナンスなどの
  変更が行なわれることになるだろう。しかし、GPIF改革
  のニュースは日本国内よりも海外投資家に注目されており、
  私に対する取材も、ほとんどが外資系メディアと海外投資家
  である。そして、彼らの注目は、アセットアロケーションの
  変更がどのように行なわれるかである。つまり、彼らは、G
  PIFが今後何を運用対象資産とするのか、どの資産を買っ
  てくるのかということにしか関心がない。要は、「日本国債
  を売って、株を買うのかどうか」ということである。これは
  誤った議論であり、誤った改革である。今回のコラムでは、
  現在議論されているGPIFの改革のどこが誤りか、本質は
  どこにあるのか、本当はどのような改革が望ましいのかにつ
  いて議論したい。         http://bit.ly/1tTc9ZC
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ●グラフ出典/「週刊東洋経済2015大予測」P95

GPIF新資産構成.jpg
GPIF新資産構成
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アベノミクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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