2015年02月02日

●「中央銀行当座預金マイナス金利に」(EJ第3965号)

 先進国による量的金融緩和のリレーが行われています。そのよ
うに感じないでしょうか。
 リーマンショックでペシャンコになった景気を立て直すため米
国のFRBが先行して実施し、2013年から日銀がその後を追
うように実施し、欧州のECBも準備を進めるなか、FRBが出
口戦略を行って撤退した後を追うように、遂にECBも今年の3
月からの実施を決定──量的金融緩和政策のリレーです。
 2013年から安倍首相がアベノミクスをはじめたとき、いち
早く賛成したのは時のバーナンキ米FRB議長です。日本という
バトンタッチすべき理想的な相手が現われたからです。
 2008年からFRBは量的金融緩和を3次にわたって波状的
に行い、そこに注ぎ込んだ資金は実に4兆8000ドル、当時の
日本のGDPをしのぐすさまじい額になっているのです。これに
よってNYダウは史上最高を謳歌していますが、果して本当に景
気が好転したのでしょうか。
 これは疑問です。しょせんは、バブルで空いた穴をバブルで埋
めているだけではないのでしょうか。これについては、いずれ検
証することにします。
 2014年の夏頃から「ジャクソンホールの密約」という噂が
流れはじめたのです。8月下旬、米国のワイオミング州の保養地
ジャクソンホールで金融セミナーが開かれ、ランチタイムに隣同
士に座ったドラギ欧州中銀総裁とイエレンFRB議長が何やら真
剣に話し合っていたというのです。
 その席で、「米国が量的緩和を終えた後、不足する資金を日本
とEUが埋めるという密約が交わされたのではないか」という噂
が流れたというのです。そして2014年10月にFRBは量的
緩和を終了しますが、間髪を入れず、黒田日銀による追加の金融
緩和が宣言されています。あまりにも話が出来過ぎているといわ
ざるをえないのです。
 ここで、「金融緩和」について知識を整理して、アベノミクス
の検証を進めることにします。
 「金融政策」とは何でしょうか。
―――――――――――――――――――――――――――――
 金融政策とは、日銀が利子率を変更することで通貨供給量を調
節し、経済の動きを調整する政策である。
―――――――――――――――――――――――――――――
 基本は「利子率(金利)の変更」なのです。大前提として、市
場に供給されている通貨供給量(マネーストック)と経済活動の
間には密接な関係があることはわかっています。
 必要以上のお金が市場に供給されると「カネ余り」の状態にな
り、通貨価値が下がって物価が高騰するインフレ現象を起こしま
す。逆に、市場に供給されるお金が不足すると、物価が下落する
デフレ現象を起こします。
 どちらの現象も経済活動を崩壊させてしまうため、日銀は通貨
供給量の動向を監視して、市中に出回る通貨量がつねに適量とな
るように調整しています。
 ところが、金利をゼロないしその近くまで下げてしまうと、通
貨供給量の調節ができなくなってしまいます。金利はゼロ以下に
は下げられないからです。
 そこで登場したのが量的金融緩和政策です。2001年3月に
ゼロ金利になったときに、時の速水優日銀総裁が取った金融政策
のひとつです。つまり、日本がはじめたのです。
 具体的には、当座預金(民間金融機関が日銀内に開設している
預金口座)の残高を増やすこと──それが量的金融緩和政策なの
です。日銀が『当座預金残高を増やす』ということは、民間金融
機関が自由に使えるお金を増やすことを意味します。
 実はこのとき、日本の金融機関は不良債権が積み上がり、危機
的状況にあったのです。時の速水日銀総裁は、それによる不測の
事態も想定して、金融機関の当座預金の残高を増やしたともいわ
れています。それが後に「量的金融緩和政策」と呼ばれるように
なるのです。
 これに関連して知っておくべきなのは、「準備預金制度」とい
う制度です。金融機関が受け入れている預金などの一定比率(準
備率)以上の金額を無利子で日銀に預け入れることを義務づける
制度のことをいいます。これは、1957年(昭和32年)に施
行された「準備預金制度に関する法律」によって、金融政策の手
段として導入されたものです。
 この準備率の調整も金融政策の手段となります。中央銀行はこ
の準備率を操作して、金融機関の現金準備を直接的に増減させ、
その信用創造機能をコントロールする調節手段となっているので
す。預金準備率操作といいます。日銀の量的緩和は、日銀が金融
機関の有する国債などを買い取り、その金額を金融機関の日銀当
座預金に積み上げるかたちを取ります。そうすると、日銀当座預
金の金額には次の2つがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.必要準備 ・・・ 無利子の法定準備金額
    2.超過準備 ・・・ 必要準備を上回る金額
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在のところ、「超過準備」の部分については、0・1%の利
息がついています。しかし、EUの場合は、ECBの当座預金の
金利はマイナス金利になっているのです。つまり、当座預金に預
けているとマイナス金利によって預金が減少するのです。そのた
め、金融機関が資金を引き出して貸し付けに回す可能性もあると
いえます。
 EUはそれに加えて量的緩和に踏み切ることになるので、量的
緩和とマイナス金利が果して同時に機能するかどうかが注目され
るところです。問題は、この状態でEUの金融機関が、国債をE
CBに素直に売却するかどうかは疑問です。貸出をするにしても
マイナス金利分のコストを誰が負担するのでしょうか。
            ─── [検証!アベノミクス/47]

≪画像および関連情報≫
 ●ECBマイナス金利導入/近藤駿介氏のブログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  欧州中央銀行(ECB)は2014年6月5日の定例理事会
  で追加の金融緩和策を決めた。指標となる政策金利を0・1
  %引き下げ、過去最低の年0・15%とする。主要国・地域
  で初めて、民間銀行が中央銀行に預け入れる余剰資金の金利
  をマイナスにする政策も導入する」(6日付、日本経済新聞
  「欧州中銀、初のマイナス金利」)前回の定例理事会で、追
  加の金融緩和を実施することは予告されていましたので、E
  CBが金融緩和に踏み切ることは想定の範囲内と言えます。
  注目を集めていたのは、金融緩和の中身です。個人的に感じ
  ることは、今回の金融緩和は期待通りの効果を生むかどうか
  とは別に日本の金融緩和を反面教師にして、欧州の「金融」
  を担う中央銀行らしい、慎重に検討された「金融」政策だと
  いうことです。政策金利を0・15%にしたのは、もう一回
  利下げ余地を残したのと同時に、「民間銀行が中央銀行に預
  け入れる余剰資金の金利をマイナスにする」という「マイナ
  ス金利」を導入するからだと思われます。「マイナス金利」
  を簡単に言えば、これまで民間銀行の資金を「預金」という
  形で預かってくれていたECBが、今後は民間銀行の資金は
  「貸金庫」に入れるようにすると宣言したイメージです。E
  CBが「預金」として預かってくれるのであればECBから
  「預金利息」が貰えますが、ECBの「貸金庫」に預けるこ
  とになったことで、ECBに対して「貸金庫代(保管料)」
  を支払わなければならなくなったという感じです。
                   http://bit.ly/1EWSwRI
  ―――――――――――――――――――――――――――

ECBドラギ総裁.jpg
ECBドラギ総裁
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アベノミクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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