2015年01月21日

●「なぜ12年から株価が上昇したか」(EJ第3957号)

 アベノミクス懐疑派の論説を紹介し、検討しています。3つの
まとめのうち、「3」を再現します。
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 3.異次元金融緩和が始まると、円安が止まり円高に振れ、株
   価が下がり、経済成長率は低迷する。消費者物価の上昇も
   輸入インフレが原因である。
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 異次元金融緩和がはじまったとたん円安が止まり、株価が下落
したのですから、この事実からみると、それにアベノミクスが関
わっていないことは明らかです。
 しかし、株価は2012年11月13日の日経平均8661円
から上昇に転じ、2013年5月7日には1万4180円になり
リーマンショック前のレベルに達しています。伊東光晴京都大学
名誉教授は、円安も株高も、アベノミクスには何の関係もないと
いっています。それなら、株価はなぜ上昇したのでしょうか。
 伊東教授は、これを明らかにするには、日本の株式市場の特異
性について知る必要があるというのです。伊東教授は、日本の株
式市場には次の2つのグループがあるといいます。
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     1.株式をほとんど売買しないグループ
     2.株式の売買を頻繁に行なうグループ
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 「株式をほとんど売買しないグループ」とは、事業会社、都市
銀行、地方銀行などです。これに対して「株式の売買を頻繁に行
なうグループ」とは、海外投資家──それも非居住者の海外ファ
ンド、個人投資家、生命保険会社、損害保険会社、投資信託など
が該当します。2の株式保有比率は、次の通りです。
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      1. 海外投資家 ・・・・ 25%
      2. 個人投資家 ・・・・ 20%
      3.生損保・投信 ・・・・ 10%
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 海外投資家の背後には、投資ファンドがあり、1日にもの凄い
回数の売買を繰り返すのです。いうまでもなく彼らの狙いは日本
への投資ではなく、利益を出して儲けることです。したがって、
一定の投資基準を示して、資金を複数の運用会社にまかせ、業績
を上げようと虎視眈々と狙っているのです。
 伊東教授によると、2012年10月になると、海外投資家と
日本の投資家とは、投資のやり方に際立った違いが出てきている
ことを指摘して次のように述べています。
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 2012年10月から海外の投資家の行動が変わる。それまで
(2012年4月から9月)売り越しであったものが、一転、買
い越しに変わる。10月、1585億円の買い越し。解散以前に
すでに外国人筋の買い越しの動きが始まっている。11月、49
75億円の買い越し。したがって11月13日からの株価上昇は
政権交代と何の関係もない動きから始まっている。
 他方、個人株主、生損保、信託銀行、投資信託は、いずれも売
り越しである。したがって11月13日からの株価上昇は外国人
筋の買い以外の何ものでもない。
     ◎海外投資家買い越し
      12月 ・・・ 1兆5448億円
       1月 ・・・ 1兆2379億円
       2月 ・・・   8542億円
       3月 ・・・ 1兆8553億円
 他方、個人は、1、2、3月と売り越し。生損保も投資信託も
同じく売り越しである。こうして基本的には外国人の買いが4月
まで続き、その他の人は売り越していく。その動きが5月に株価
が1万5000円を超えてから、乱高下へと変わっていく。当然
である。                  ──伊東光晴著
      『アベノミクス批判/4本の矢を折る』/岩波書店
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 海外投資家は日本株を買い越し、日本の投資家は逆に売り越し
ている──これは、リチャード・クー氏も同じことを指摘してい
ます。彼らは、「ユーロは崩壊する」という前提で勝負に出てい
たのですが、ドラギECB総裁の「必要なら何でもやる」のひと
言によって、崩壊が回避される状況になってきたのです。
 その結果、海外投資家が目をつけたのは日本なのです。リチャ
ード・クー氏は安倍総裁の「インフレ目標の設定」と「無制限金
融緩和」発言を聞いて、ターゲットがユーロから日本になったと
いっていますが、伊東教授は、海外投資家の日本シフトは、安倍
氏が自民党総裁になる前にはじまっており、安倍総裁の発言に触
発されたわけではないと分析しているのです。そこがクー氏とは
違うのです。クー氏も「物語」を作っているように思えます。
 現在日本で起きている株高は、明らかに海外投資家によって起
こされています。彼らは儲けるために株を買っているので、外部
条件が少しでも動くとすぐ売買を仕掛けるので、株式相場が非常
に不安定になっています。彼らの狙い通りです。これについて、
伊東教授は次のように述べています。
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 もちろん海外投資家は、日本株を所有するとはいえ、企業経営
を行おうなどとは、つゆほども思ってはいない。だから上場され
ている回転寿司の会社までもが購入対象となっているのである。
(中略)安倍内閣の「大胆な金融緩和」と株式市場の活況とを直
結する人は多い。だが株価上昇への力は、民主党が衆議院で多数
を占め、解散の声が起きる以前に動き出したのである。新聞が書
き、当事者たちが自負する安倍政権とは何の因果関係もない。
                ──伊東光晴著の前掲書より
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            ─── [検証!アベノミクス/39]

≪画像および関連情報≫
 ●「安倍・黒田は何もしていない」/鈍想愚感
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  岩波書店の雑誌「世界」8月号で、伊東光晴京都大学名誉教
  授が「安倍・黒田氏は何もしていない」と題してアベノミク
  スの実態を理論的に解き明かしている。円安にしろ、株高に
  しろ、たまたま時期が一致しただけで、アベノミクスによる
  ものでもなんでもない、と喝破している。アベノミクスに対
  する世間の評価は高く、来たる参院選でも自公の圧勝に終わ
  る、とされているが、一部のマスコミはアベノミクスなるも
  のに鋭い矢を放っている。伊東論文はその最たるもので、経
  済学の重鎮である伊東教授のご託宣は重みがある、といって
  いいだろう。伊東論文ではトヨタ自動車の2013年3月期
  決算で、営業利益が1兆3288億円となったことをあげ、
  その内訳は販売増が49%にあたる6500億円、コスト削
  減が34%の4500億円、そして円安効果はわずか11%
  の1500億円である、と分析し、利益の大半は自己努力に
  よるもので、アベノミクスとはほとんど関係ない、としてい
  る。そして注目すべきは豊田社長が決算発表時に「日本の国
  内市場は縮小している」と語ったことと指摘している。利益
  に一番貢献している販売増は実は海外市場からもたらされた
  ものである、ということが今後の日本経済の動向に大きく関
  わってくる。国内市場の縮小は通貨政策ではいかんともしよ
  うのないものである、としているのである。
                   http://bit.ly/1sVFd2a
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伊東光晴京都大学名誉教授.jpg
 
伊東 光晴京都大学名誉教授
posted by 平野 浩 at 03:09| Comment(0) | TrackBack(0) | アベノミクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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