2014年12月01日

●「消費税増税は財務省の策略である」(EJ第3926号)

 財務省は、10%への再増税が延期されたので、あれもできな
い、これもできないといいはじめています。しかし、既に3%増
税しているのです。それは何に使っているのでしょうか。
 10%への再増税が延期されたので、車を買う時にかかる自動
車取得税(地方税)の廃止や、自治体間の税収格差を緩和する新
制度の導入などの財源が入ってこないので、制度改革は先送りさ
れるというのです。
 しかし、今回の消費税の増税は、全額社会保障に使うのではな
かったのですか。自動車取得税の廃止や自治体間の税収格差を緩
和する新制度などは社会保障に何の関係もないはずです。結局、
おカネに色はついていないので、何に使われるか、わかったもの
ではないのです。騙されてはならないと思います。
 「子ども・子育て支援新制度」は間違いなく社会保障ですが、
財務省は増税が延期になったので財源がないといっています。し
かし、安倍首相は予定通り来年4月から実施すると明言し、財源
の手当ては財政当局に「知恵を出せ」と指示しています。
 このように、財務省は巧妙に貯め込んだ巨額の資金からは、予
算へ1円も出そうとはせず、あくまで増税が延期されたので、財
源がないといい張るのです。それでいて、自分たちのための老後
の天下り先の確保や、そういう企業や団体への資金提供について
は、きっちり行っているのです。
 そういう財源に政治が切り込まないと、財政再建などできるは
ずがないのです。そういう意味で、政治家も官僚機構も「身を切
る改革」を行うべきですし、そうすれば国民も10%〜15%程
度の消費税増税に反対はしないでしょう。
 財政再建をいう前に、日本の財政が本当に危機に陥っているの
かどうかを真剣に検証する必要があります。2002年のことで
すが、高橋洋一氏は、当時猪瀬直樹氏が取り組んでいた道路公団
の民営化の仕事を手伝っていたそうです。そのとき、道路公団側
は「6兆円から7兆円の債務超過」を主張していたのです。
 高橋氏は、この道路公団の主張に疑問をもったといいます。な
ぜなら、道路公団には多額の補助金が投入されており、海外に比
べて極端に高い高速道路料金の収入があったからです。
 そこで高橋氏は、企業の資産査定で使うキャッシュフロー分析
で、将来の収入を含めて道路公団の現在価値を算出した結果、次
の結論を得たのです。実際に民営化して、バランスシートを作成
してみると、それが正しいことがわかったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   道路公団は2兆円から3兆円の「資産超過」である
―――――――――――――――――――――――――――――
 そこで高橋氏は、このキャッシュフロー分析を政府の会計にも
適用してみたのです。なぜなら、財務省は「政府は財政難」であ
り、「財政再建は不可欠」であると喧伝していたからです。その
検証結果について高橋氏は次のように述べています。
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 チェックしてみると、一般会計については財務省のいうとおり
 負債が大きくて資産は小さかった。しかし、いくつかの特別会
 計については、負債よりも資産が大きくなっていた。目に見え
 ないようにごまかされているが、財務省関連の特別会計に、莫
 大な額の現金が隠されていたのだ。そのうち財政投融資特別会
 計の積立金(金利変動準備金)などは、会計操作で簡単に財政
 支出に転用可能であることがわかった。私は、その計算結果を
 「資産負債差額」として、経済財政諮問会議に提出した。結果
 2005年に「特別会計改革」が行われ、「特別会計の剰余金
 は45兆円にのぼり、うち20兆円を5年間にわたり、財政健
 全化に振り向ける」ことが決定された。
                 ──高橋洋一著/東洋経済
     『財務省の逆襲/誰のための消費税増税だったのか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 「埋蔵金」という言葉が流行り出したのは、これがきっかけで
す。財務省は危機感を感じて財務省親派の政治家や経済学者を動
員して反論を試みたのですが、バランスシートを熟知している高
橋氏にはまるで歯が立たなかったのです。
 財務省としては、このまま議論を続けて行くとさらに追い込ま
れると判断したためか、高橋氏の指摘を認め、2008年予算の
なかで、財政投融資資金特別会計の準備金を約10兆円取り崩し
さらにその後の5年間で特殊法人への出資積立金を含めて、40
兆円近い資金を一般会計に回したのですが、小泉政権が終わると
さらなる特別会計への追及は終わってしまったのです。
 そして民主党へ政権交代したとき、財務省は意図的に2010
年度予算をシーリングなしの水ぶくれ予算にし、あえて赤字国債
が税収を上回る状態を作り出したのです。民主党の不慣れを利用
したのです。2011年度からはシーリングをかけましたが、一
度水ぶくれ予算になると、それを適正化するのは大変で、結果と
して民主党政権の3年間はそういう状況が続いたのです。財務省
はこの事実を強調して消費税の増税が不可欠であることを説き、
「社会保障と税の一体改革」を実現させたのです。すべては周到
に計画された財務省の巧妙な策略だったのです。
 このように財務省は増税を説くだけで、財政再建に取り組まな
いことです。高橋氏はこれについて強く批判しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 財務省はその年に余ったおカネを国債整理基金にしまい込んで
 翌年の財政支出には回そうとしない。翌年の支出がその年の税
 収だけで足りるならそれでもいいが、実際には足りないので、
 しまい込んだ分だけ、新たな国債を発行しているのだ。そんな
 バカなことをするぐらいなら、余ったおカネは翌年の支出に回
 し、その分、翌年の国債発行額を減らすほうが、はるかに合理
 的である。          ──高橋洋一著の前掲書より
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           ──── [検証!アベノミクス/08]

≪画像および関連情報≫
 ●あまりにも稚拙な財務官僚の言い訳/高橋洋一氏
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  特会を扱う官僚は、民間企業にたとえれば、執行役員のよう
  な存在だ。彼らが運営する日本国株式会社の株主は、血税を
  納めて出資している国民である。役員が株主である国民が頼
  んでもいないのに、勝手に運用してリスクを取る。本来、官
  僚がリスクを取って運用してはいけないのだ。しかも、それ
  で生じた剰余金を返さず、自分たちで使途を差配するのはど
  う考えても道理が通らないし、許されるものではない。株主
  たる国民に剰余金を還元し、国民が使い道を決めるべきだ。
  少なくとも、リスクが大きい小さいという前にリスクを取っ
  ていいのかどうかという議論があって然るべきだ。自分たち
  の役割と立場をわきまえていれば、「申し訳ありません。今
  まで意図せざるところでリスクがありました。今後はリスク
  をなくします。だから、貯まった分は、取り崩します。どう
  ぞお使いください」というのが普通のいい方というものだろ
  う。金融機関の専門家にこの話をすると「恐ろしいですね」
  とみんな口を揃える。各特別会計が運用した資金が、その過
  程で膨らんでいった結果、埋蔵金が出てきた。運用がよかっ
  たと評価はするが、「結果オーライ」だったからといって、
  今後もうまくいく保証はない。彼らの金利リスクに対する知
  識を見る限り、私は背筋が寒くなる。   ──高橋洋一著
     『さらば財務省!/官僚すべてを敵にした男の告白』
                        /講談社刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

高橋洋一氏の本.jpg
高橋 洋一氏の本
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アベノミクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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