2014年11月04日

●「ケニア通貨革命エムペサの仕組み」(EJ第3908号)

 ビットコインを利用するには、当たり前のことですが、PCか
スマホが必要です。しかし、それらのマシンは高価であり、まだ
普及していない国は地球上にはたくさんあります。しかし、それ
らの国々でも通貨革命ともいえる動きが起きているのです。
 それは東アフリカのケニアの話です。アフリカでは、銀行口座
を持つ人の割合は人口の10%以下ですが、携帯電話の保有率は
60%に達しているといわれています。ところが、ケニアでは、
携帯電話の普及率は70%を超えているのです。
 ケニアでは携帯電話は1500ケニアシリング(1ケニアシリ
ングは約1円)ですが、アフリカの所得水準では高くて使えない
人も多いので、個人はそれぞれSIMカードを持っていて、10
人ぐらいのグループで携帯電話1台を共有するという使い方をし
ているのです。必要なときに順番にその携帯電話に自分のSIM
カードをセットして使うのです。
 携帯電話は中国製であり、携帯電話の充電はやはり中国製の太
陽光発電パネルを使っているのです。これなら発電網がカバーし
ていない地域でも携帯電話が使えます。
 こういう状況において、ケニアでは「M-Pesa(エムペサ)」と
いうサービスが普及しています。普及している携帯電話を利用し
て送金を行うサービスです。ビットコインとは違うシステムです
が、少額送金ができるシステムになっています。
 「エムペサ」は、英国の携帯電話の大手であるボーダフォン・
グループが、ケニアの携帯電話会社サファリコムに出資して20
07年2月からはじめたサービスです。
 「エムペサ」の仕組みはきわめてシンプルです。仕組み図を添
付ファイルとして付けてあるので、それを見ながら読んでいただ
きたいと思います。
 利用者はサファリコムの代理店に行き、自分の携帯電話番号を
エムペサ用に登録します。手続きはこれだけです。送金する場合
利用者は代理店に出向いて送金する現金を渡します。代理店は、
利用者の携帯電話番号を照会し、氏名と身分証明書に間違いがな
ければ、預かったお金を利用者のエムペサ口座に送金します。エ
ムペサ口座は銀行口座のようなもので、口座に送りたい金額の残
高があれば、代理店に現金を預ける必要はないのです。
 続いて利用者は、自分の携帯電話で送金メニューを選択し、送
金先の携帯電話番号と金額を入力し、送金するのです。
 送金を受ける本人には、サファリコムからSMS(ショート・
メッセージ・サービス)でメッセージが送られてきます。メッセ
ージの内容を読むには暗証番号が必要です。受取人は近くの代理
店に行ってそのSMSを見せると、送金された金額を送金者のエ
ムペサ口座から引き落として受け取れる仕組みです。
 重要なことは、エムペサ口座に預金された金額がサファリコム
が管理しているのではないことです。これらの資金はプールされ
いくつかの商業銀行に預けられており、信託されているのです。
ですから、サファリコムが仮に倒産しても、債権者は資金に手を
つけることはできないのです。つまり、エムペサのシステムには
ケニア中央銀行が関与しているのです。
 送金できる額は、100〜3万5000ケニアシリング(日本
円に換算すると約120〜4万2000円)までであり、手数料
は送金額によって異なり、30〜400ケニアシリング(約36
〜480円)となっています。
 サファリコムは、エムペサを通して預金や借入ができるサービ
スをはじめており、給与振り込みなどにも利用しています。また
2008年には、ボーダフォン、ウェスタンユニオンと組んで国
際送金もはじめています。2013年にボーダフォンは国際的な
送金システムをエムペサに接続させているので、エムペサを使っ
て一部の国とは国際送金ができるようになっています。
 このエムペサと類似のサービスは、ケニアだけではなく、全世
界の発展途上国に拡大しつつあります。すでにタンザニア、イン
ド、アフガニスタンが導入しており、アジア太平洋地域や南米に
も拡大しつつあります。
 このように、エムペサは、ビットコインとはまったく異なるシ
ステムですが、野口悠紀雄氏は、エムペサからは、次の3つのこ
とが学べると、自著において指摘しています。野口氏の本から要
約します。
―――――――――――――――――――――――――――――
  第一は、現在のITは、通貨革命を引き起こしうるような段
 階にまで進歩しているということだ。通貨や貨幣は情報なのだ
 から、情報技術が進めば、原理的には変化しうる。従来の通貨
 は完全なものとは言えないのだから、大きな変化が生じてもお
 かしくない。
  第二は、通貨に変革が生じたり、送金方法が改善されれば、
 社会は大きく変わるということだ。支払いが容易になれば、そ
 れまでできなかった活動が可能になる。そのネックが新しい技
 術によって克服されると、非常に大きな変化が起きる。エムぺ
 サは、そのことを示した典型例だ。
  第三は、「ネットワーク効果」の重要性だ。利用者が増える
 ほど便利になるのである。ビットコインは、まだクリティカル
 マス(臨界量)に達していない。利用が進んでいるアメリカに
 おいてさえ、そうである。エムペサは、利用者数で見れば、す
 でにクリティカルに達している。
            ──野口悠紀雄著/ダイヤモンド社刊
     「仮想通貨革命/ビットコインは始まりにすぎない」
―――――――――――――――――――――――――――――
 いわゆる通貨でないこのような仮想通貨が使われるのは、現行
の金融システムが万全のものではないからです。ケニアでエムペ
サが普及したのは、銀行システムが未発達で、不便であったから
です。ITが発達すると、現行のシステムを変革しようとする動
きが加速するのです。ビットコインも同じです。
       ──── [ビットコインについて考える/43]

≪画像および関連情報≫
 ●「ケニア・エムペサ」/菊池雅都氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  われわれの世代で経済学を学んだ者は、『近代欧州経済史序
  説』という大塚久雄の名著を記憶しています。なぜ、イギリ
  スで産業革命が、また近代資本主義を確立できたのかが明快
  に説かれています。その中のキーワードが周辺です。中心で
  はありません、周辺から変革が始まると。ポルトガルからス
  ペイン、さらにオランダからイギリスへと。イギリスは当時
  ヨーロッパの中心国ではありませんでした。なぜ、中心国で
  もないヨーロッパの田舎の国が近代資本主義を確立できたの
  かという問は、周辺国だから出来たのだという解答に帰結し
  ます。今まさに、そのことを実証するような出来事が進行し
  ています。アフリカ諸国の経済発展です。そこで行われてい
  るイノベーションは素晴らしいものです。その一つが携帯電
  話を使った金融取引のサービスです。日本でもドコモ口座が
  あって、携帯を利用しての送金システムがあります。どこが
  ちがうのでしょうか。「ケニアでは、人口のかなりの部分は
  まだ銀行のサービスを受けていない。その分、エムペサの需
  要がある。エムペサを通じて行われる資金移動は年間120
  億米ドルに達する。ケニアのGDPの31%に相当する規模
  だ。現在、75カ国を対象に、国際送金も始めている」。銀
  行サービスが無い地域でエムペサが使われている、つまり、
  銀行抜きで送金ができるのです。ドコモ口座は銀行口座に依
  拠しています。          http://bit.ly/1znB7BG
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ●図の出典/「日経ビジネスオンライン/『120円送金』
  が出稼ぎを助ける」 http://nkbp.jp/1wQcgnx

エムペサの仕組み.jpg
エムペサの仕組み

posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ビットコイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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