2007年05月02日

WWWが商用サービスを変貌させる(EJ第2072号)

 1993年の夏以降にモザイクが大普及をはじめると、イリノ
イ大学の態度が変わってきたのです。最初のうちはアンドリーセ
ンたちがNCSAで何を開発しようと、大学側はほとんど無関心
だったのですが、モザイクが人気になると急にそれを大学のもの
にしようとしたのです。
 もともとNCSAは米国スーパーコンピュータ応用センターと
いい、スーパーコンピュータの利用研究をしていたのです。その
ため年間数百万ドルの政府予算を支給されていたのですが、最近
では、スーパーコンピュータそのものをあまり使わなくなってき
ていたのです。
 そうなると、大学側は急にアンドリーセンたちが邪魔になり、
追い出しにかかったのです。大学としては開発者は別にアンドリ
ーセンでなくても誰でもできると錯覚していたのです。つまり、
アンドリーセンの天才性を見抜いていなかったのです。
 そういう雰囲気をいち早く感じ取ったアンドリーセンは、19
93年12月に大学を卒業し、まずシリコン・バレーに向かい、
マウンテン・ビューに落ち着いたのです。そして、そのマウンテ
ン・ビューにおいて、アンドリーセンはある有名な人物と運命的
な出会いをするのですが、その話をする前にWWWが当時のネッ
トワークビジネスとどういう関係にあったかについて述べておく
ことにします。
 1993年にモザイクが発表され、それが広く普及しはじめた
とき、それがネットワークの商用サービスのビジネス・モデルの
本質を壊しつつあったことに気づいた企業は少なかったのです。
 それは内部指向の閉じたネットワークであるLAN(ローカル
・エリア・ネットワーク)からはじまったのです。LANは少人
数のグループでファイルを共有したり、プリンタを共同使用した
りする必要性から始まったのですが、しだいにメールで社内のコ
ミュニケーションをとるツールに発展していったのです。その結
果、生み出されたのがグループウェアです。
 それでは外部とコミュニケーションをとるときどうしていたか
というと、それはオンラインサービス(日本のパソコン通信)し
かなかったのです。コンピュサーブ、プロディジー、AOL(ア
メリカ・オンライン)などのオンラインサービスは繁盛していた
のですが、企業内部のLANとは切り離されていたのです。しか
し、内部でLANを使っていると、やがて外部指向を求めるよう
になります。外部指向にすれば、広い世界の情報や資源を企業に
取り込むことができるからです。
 それを阻んだのはさまざまな独自技術だったのです。つまり、
企業内のLANを含めて、世界中にネットワークはすごい勢いで
増殖していたのですが、それらのネットワークは独自技術によっ
て切り離されたままであったのです。
 最盛期のオンラインサービスにしても、利用者とコンテンツが
各社ごとに分かれていることが問題だったのです。すなわち、A
OLのコンテンツがいかに充実しても、コンピュサーブやプロデ
ィジーの情報が豊かになるわけではないのです。したがって、オ
ンライン・サービスのユーザがいかに増えても、便利さが雪だる
まのようにふくらんではいかなかったのです。
 企業内のコミュニケーションで使うグループウェアの中でひと
きわ高性能だったのは「ロータス・ノーツ」です。ロータス社か
らIBMに引継がれて幅広く使われたものの最後まで今ひとつ、
パッとしなかったように思います。それは、他のグループウェア
のことを考えて作られていなかったからです。複数の製品と一緒
に使うことが困難だったからです。
 しかし、こういうクローズド性はメーカーにとっては都合の良
いことだったのです。それは、ユーザを最初に採用した製品から
離れられなくし、そのメーカーにのみ金をつぎ込ませることがで
きるからです。そして競争相手を排除させ、顧客を独占できるう
まみを享受できるからです。
 マイクロソフトのOS戦略にしても同じことがいえます。ウイ
ンドウズが登場して約12年間、マックのユーザをのぞいて人々
はウインドウズを使わざるを得ない状況に置かれたままです。も
ちろんウインドウズが、デファクト・スタンダード(事実上の標
準)の地位を獲得しているので、大きな不便さは感じないものの
目に見えないところでは矛盾を抱えたままです。
 例えば、ハードウェアのサーバーが3万円を割る価格で入手で
きるのに、ウインドウズのサーバー用OSが10万円以上するな
どの点です。
 これに対してWWWの本質は「オープン性」にあります。ロバ
ート・リードはこれについて次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 独自技術にもとずく競争に慣れた人にとって、インターネット
 はまるで宇宙空間だった。そこには金儲けのタネも企業の競争
 もない、利益を生まないオープン・プロトコルという奇妙な素
 粒子があるだけだ。
            ――ロバート・リード著/山崎洋一訳
   『インターネット激動の1000日』上巻 日経BP社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 マイクロソフトをはじめとするITメーカーは、当初利益と無
縁のインターネットのことをあまり重視していなかったのです。
WWWはオープンであり、全体を管理するシステムがない奇妙な
世界です。そういう世界で企業として利益を出していくにはどう
するか――それと正反対のことで智恵を使い過ぎているITメー
カーには発想できなかったのです。
 そのスキを衝いたのはグーグルです。WWWを使ったあらゆる
便利なシステムを無料で提供し、ITとは何も関係がない広告で
稼ぐというビジネス・モデルを構築し、現在躍進中です。WWW
のオープン性をフルに活用した戦略です。マイクロソフト社のイ
ンターネット戦略は一時成功したように見えましたが、果たして
現況はどうでしょうか。 
―― [インターネットの歴史 Part2/38]


≪画像および関連情報≫
 ・ロータス・ノーツについて
  ―――――――――――――――――――――――――――
  Lotus Development 社が開発したグループウェア。文書共有
  電子メール、電子掲示板などの機能をユーザが組み合わせて
  利用する。非常に高度で柔軟な検索機能を備えており、定型
  化しにくい文書などをそのままの形で保存し、分類・検索・
  並べ替えなどの操作を行なうことができる。文書だけでなく
  数値データや画像、音声など様々な形態のデータを扱うこと
  ができるため、高度な知識共有システムを実現することがで
  きる。近年では、ウェブブラウザからNotes の機能を利用で
  きるようにするなど、インターネットやイントラネットとの
  統合を積極的に推進している。Notes を利用するためには、
  企業の業務内容に応じてデータベースやプログラムを作りこ
  む必要があり、Notes を使ったシステムの開発を専門に行な
  う業者も存在する。  ――企業情報システム用語辞典より
  ―――――――――――――――――――――――――――

CmCwLpX.jpg

posted by 平野 浩 at 04:35| Comment(0) | TrackBack(0) | インターネットの歴史 Part2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック