2014年07月31日

●「D・ロックフェラーとシカゴ学派」(EJ第3844号)

 レーガン政権が日本に対し構造協議を呼び掛けてきたのは19
83年のことです。中曽根政権がこれに応じ、「日米円ドル委員
会」ができています。時の日銀総裁は前川春雄です。しかし、前
川は1984年12月に、大蔵省出身の澄田智に総裁を交代して
います。このときは、日銀総裁と副総裁は、まだ大蔵省とのたす
きがけ人事をやっていたのです。
 1985年10月に中曽根首相は、次の研究会を設置して、前
川春雄を座長に任命し、レポートの取りまとめを命じています。
レーガン大統領の要請に応えるためです。
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      国際協調のための経済構造調整研究会
                座長/前川春雄
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 それから約5ヶ月、この中曽根首相の諮問機関は19回の会議
を重ねて、1986年4月7日に中曽根首相に勧告を提出してい
ます。これが「前川レポート」です。このレポートの狙いについ
て、リチャード・A・ヴェルナーは次のように述べています。
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 前川レポートは、その序文で結論を記している。「今や我が国
 は、従来の経済政策及び国民生活のあり方を歴史的に転換させ
 るべき時期を迎えている。かかる転換なくして、我が国の発展
 はありえない」。レポートが掲げる中期的な国家政策目標は、
 「経常収支不均衡を国際的に調和のとれるよう着実に縮小させ
 ること」であり、「この目標実現の決意を・・・表明すべきで
 ある」としている。「経常収支の大幅黒字は、基本的には、我
 が国経済の輸出指向等経済構造」に由来すると、レポートは認
 識していた。したがって、「我が国の構造調整という画期的な
 施策を実施し、国際協調型経済構造への変革を図ることが急務
 である。    ──リチャード・ヴェルナー著/吉田利子訳
  『円の支配者/誰が日本経済を崩壊させたのか』/草思社刊
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 前川レポートは、米国からの要望がもとになっていますが、具
体的には、当時のロックフェラーの当主で、チェース・マンハッ
タン銀行会長のデイヴィット・ロックフェラーが主宰する「日米
欧三極委員会」という会議体から出されているのです。
 この「日米欧三極委員会」は、一民間の委員会に過ぎませんが
実は世界経済にとって重要なことの指令をこの委員会が出してい
ることが多いのです。このようにいうと、陰謀めいた秘密の機関
のようにいわれますが、現在でもこの委員会は三極委員会として
現存しており、頻繁に会合が開かれています。
 日米欧三極委員会は、デイヴィット・ロックフェラーとズビグ
ニュー・ブレジンスキーによって、1973年に創設されていま
す。ブレジンスキーは、アメリカ在住の政治学者、元コロンビア
大学教授で、カーター政権時の国家安全保障問題担当大統領補佐
官を務めたことで知られています。現オバマ政権でも外交顧問を
務めており、現在80歳以上の高齢ですが、健在です。
 日米欧三極委員会の目的は、ニューワールドオーダー(新世界
秩序/NWO)を作ることにあるといわれています。新世界秩序
などといわれると少し引いてしまいますが、「世界統一経済秩序
を作る」といい換えるとピンとくると思います。
 ここでいう「世界統一経済秩序」とは、「1%が99%の富を
収奪する経済体制」のことなのです。これなら、世界一の富豪と
いわれるデイヴィッド・ロックフェラーが熱心に取り組んでいる
ことが納得できると思います。
 そこで、デイヴィッド・ロックフェラーがどういう人物であり
これまでどういう教育を受けてきた人であるかについて調べてみ
たのです。
 デイヴィッド・ロックフェラーは、20世紀後半の世界経済に
最も大きな影響を与えた一人といわれています。というと、歴史
上の人物のようですが、デイヴィッドは本稿執筆時点では健在な
のです。しかし、1915年生まれですから、単純計算では99
歳になるはずです。
 デイヴィッド・ロックフェラーがどのような教育を受けた人で
あるかについては、吉田祐二氏の本に次のように出ています。
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 当然というべきか、この財閥当主が受けた教育は当時最高の教
 育であった。『ロックフェラー回顧録』によれば、デイヴイッ
 ド・ロックフェラーは1936年にフェビアン社会主義につい
 ての学位論文によりハーバード大を卒業している。卒業後1年
 間大学に残り、そこで、オーストリア人の経済学者ジョゼフ・
 シュンペーターから指導を受けている。その後イギリスに渡り
 LSEと略称されるロンドン大学社会科学部へ通い、のちに、
 ノーベル経済学賞を受賞することになる、フリードリヒ・フォ
 ン・ハイエクから指導を受けている。さらにアメリカへ戻り、
 1940年にシカゴ大学にて経済学博士号を取得している。こ
 のときの指導教官はフランク・ナイトである。ハイエクやシュ
 ンペーターが、銀行の本質である信用創造について論じている
 ことは前に説明したとおりだが、両者とも銀行の貸し出す「信
 用」について思索を深めてきた学者である。デイヴィッド・ロ
 ックフェラーが銀行の本質である「信用創造」機能について熟
 知しているのは確かであろう。20世紀最大の銀行家が受けた
 訓練はまさに銀行の本質をついたものであった。
     ──吉田祐二著/『日銀/円の王権』/学習研究社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 重要なことは、D・ロックフェラーがロンドン大学でハイエク
の指導を受けており、その後シカゴ大学でフランク・ナイトの指
導の下に経済学博士号を取得していることです。ちなみにナイト
はミルトン・フリードマンの教官でもあるのです。つまり、D・
ロックフェラーと新自由主義とは、深い関係があることがわかり
ます。            ──[新自由主義の正体/58]

≪画像および関連情報≫
 ●安倍首相を牽制するブレジンスキー
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  カーター、クリントン時代の大統領補佐官であったズビグニ
  ュー・ブレジンスキーは、オバマの外交顧問格であり、今日
  でもオバマ大統領に強い影響力を持っている。というより、
  オバマをピックアップし外交戦略を教育し、デビッド・ロッ
  クフェラーに「いいのがいますよ」と具申もうし上げ、大統
  領に引き上げた。ブレジンスキーは、米政界唯一の戦略家と
  言われ、どんな思想へでも平気で移動する。カーター時代に
  ソ連にアフガン侵攻をやらせる罠を仕掛け、ソ連を疲弊させ
  冷戦構造を終わらせたのは、俺だと、ベルリンの壁崩壊後に
  そう言っていた。この対ソ連のアフガン戦争のとき、ブレジ
  ンスキーは、CIA、モサドと共同し、アルカイダの原型と
  ビン・ラディンを育成した。2013年2月のオバマ安倍初
  会談(2013年2月23日)を前にして、ブレジンスキーは
  2月13日ニューヨーク・タイムズ紙に、「大国、しかし覇
  権国でない(Giants, but Not Hegemons)」というタイトル
  で次のような寄稿をしていた。『今日、多くの人が、米中と
  いう2大大国化は紛争に進むのを避けられないのでないかと
  懸念している。しかし、ポスト・覇権国時代(米国)で、世
  界の支配をめぐり戦争が起こるとは、信じていない。危険は
  (米中)両国関係ではなく、アジア諸国が20世紀の欧州諸
  国の紛争のような状況に引き込まれることである。アジアに
  は、韓国・北朝鮮、日中、中印、印パ等で、資源、領土、権
  力をめぐり潜在的発火点がある。これらの地がナショナリス
  チックな熱情を刺激したりしつづければ、制御が不可能な事
  態になりかねない」。       http://bit.ly/1Ax3vQS
  ―――――――――――――――――――――――――――

スビグニュー・ブレジンスキー.jpg
スビグニュー・ブレジンスキー
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新自由主義の正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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