2014年06月27日

●「マレーシアは金融危機に独自対応」(EJ第3821号)

 アジア通貨危機で韓国、インドネシア、タイのようにIMFの
援助を受けず、独自のやり方で危機を脱出した国があります。そ
れはマハティール首相率いるマレーシアです。
 マレーシアでは危機以前は「1ドル=2.5 リンギット」だっ
たのですが、1998年2月には「1ドル=4.2 リンギット」
まで通貨は暴落したのです。
 マハティール首相は、「1ドル=3.8 リンギット」に固定す
ることで通貨の安定を図る一方、財政支出を拡大し、金利の引き
下げを断行して景気刺激策を行ったのです。
 これは、IMFの支援を受けた国とは真逆のやり方ですが、こ
れこそが正しい経済政策なのです。IMFは、支援を求めた国の
経済をワシントンコンセンサスであえて破壊させ、その国を新自
由主義化しようとしたからです。
 それだけではないのです。外国資本の引き上げを12ヶ月間凍
結したのです。IMFのエコノミストたちは、そんなことをした
ら、外国からの投資は激減し、株価が下落して大変なことになる
として猛反対をしたのです。そして次のようにいってマレーシア
を批判したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  マレーシアは根本的な問題に対する対処を先送りしている
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して、スティグリッツ世界銀行チーフエコノミストは
直接的な取引規制よりも、国外に流出する資本に税をかける「出
国税方式」への転換を提案したのです。税金ならば段階的に規制
を調節できるからです。
 マレーシアはこれを受け入れ、出国税方式を採用しています。
この規制によって投機資本の攻撃から通貨リンギットを守り、金
利は低く抑えたので、企業倒産をごく少数に抑えることに成功し
たのです。そして1年後に危機を終息させ、約束通り出国税を撤
廃しています。
 実は、このアジア通貨危機に対し、1997年8月のG7で日
本は、こういう通貨危機のさいのバックエンド対策として、「ア
ジア通貨基金構想」(AMF)を非公式ながら、打ち出したので
す。これは、参加国の拠出で資金をプールし国際的な通貨基金を
設立することで、外貨不足に陥った国を支援するなど流動性を確
保しようとするものです。そして、日本はこのために1000億
ドルを用意することを発表したのです。
 このとき、各国の説得に動いたのは、当時の榊原英資大蔵省財
務官と現日銀総裁の黒田東彦氏です。これに対して、IMFのカ
ムドシュ専務理事は一応賛意を示し、韓国、ASEAN諸国の賛
同は得られたのですが、慌てたのは米国です。
 クリントン政権は、「日本にそんな勝手なことはさせない」と
ばかり、猛烈に潰しに出たのです。そんなものができれば、ワシ
ントンコンセンサスが無意味化するし、日本が東アジア地域で勢
力を拡大することを懸念したのです。
 早速一度は賛意を示したIMFのカムドシュ専務理事は一転反
対に転じ、米国は中国と一緒になって、「IMFとの重複や規律
の緩みの懸念」を主張し、潰されてしまったのです。これについ
て、スティグリッツ教授は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本が、IMFの行動に強く不賛成の意を示していたのは広く
 知られるところだった。私は何度も日本の上級官僚と会談して
 いたが、彼らはそこでIMFの政策にたいする疑念を表明して
 いた。それは私自身の疑念とほとんど同じだった。(一部略)
 アジア通貨基金のぶちこわしはいまでもアジアで恨まれており
 多くの役人が怒りをこめて私にその話をしたものだ。危機の3
 年後、東アジア諸国はついに結集してアジア通貨基金にかわる
 ものをつくりはじめた。今度はひそかに、もっと穏健なかたち
 で制度づくりがなされ、名称もあまり害のないように、創設が
 決まった場所であるタイ北部の都市の名をとって「チェンマイ
 ・イニシアティブ」と名づけられた。
                   http://bit.ly/1pGmzGZ
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように見て行くと、米クリントン政権が、東アジア諸国、
とくに日本に対して、いかに冷たい政権であったかがわかると思
います。クリントンは、レーガン政権、ブッシュ(父)政権に続
く新自由主義に基づく経済政策で米国の経済を体直したのではな
く、ケインズ主義的政策を採用しているのです。しかし、新自由
主義の思想や政策を戦略的に対外的に拡大し、多くの国を不幸に
陥れているということができます。
 しかし、クリントン政権も経済政策で大きなミスを犯している
のです。それは、1999年に「新銀行法」──グラム・リーチ
・ブライリー法を成立させたことです。
 「新銀行法」は、銀行業と証券業を制度的に分離したグラス・
スティーガル法(1933年成立)を廃止して、持ち株会社の下
に銀行業と証券業がぶらさがる金融会社組織を作ることを許すも
のです。これは、新自由主義に基づいた法律といえます。
 しかし、この法律制定後の2008年9月に、リーマンショッ
クが起きることになるのです。
 クリントン大統領は、歴代の米国の大統領のなかでは一番の親
中国の大統領といわれています。同盟国の日本に対しては、円高
を強力に推し進め、「スーパー301」に基づく市場開放を要求
しておきながら、中国に対しては中国の強い要望を受け入れ、そ
れまで「1ドル=5.72 人民元」であった外国為替相場を一挙
に60%も切り下げて、「1ドル=8.72 人民元」にすること
を承認しています。
 クリントンは、日本の経済力を弱め、何とか二流国家に落して
やろうと考えていたのです。そのために中国の輸出競争力を強化
しようとして、中国に便宜を図ったのです。同盟国に対する配慮
などゼロです。        ──[新自由主義の正体/35]

≪画像および関連情報≫
 ●クリントン政権の犯罪的反日政策の真相
  ―――――――――――――――――――――――――――
  クリントン政権はその誕生時から中国工作機関から政治工作
  資金を大量に秘密裏に得、在米中国人団体の選挙協力などに
  より現職ブッシュを破って大統領になることが出来た。そし
  て中国工作機関はその見かえりとして徹底的な反日政治工作
  をクリントン政権に行わせた。中国工作機関は例えばクリン
  トン民主党政権への選挙工作資金提供のためインドネシア華
  僑財閥リッポー財閥経由多額の資金を注入しそのバーターと
  して反日親中国の経済外交政策の実施を働きかけたと言われ
  ている。この事実は国際情勢を知るものは誰でも知っている
  有名な事実だが、日本のマスコミはこの事実を完全に隠蔽し
  ており、中国とクリントン政権の腐敗した関係を一切報道し
  ていない。尚、この事実は藤井厳喜氏の著作”アメリカ株急
  落日本株急騰する日(日新報道)”でも書かれているので興
  味のある人はこの本を読まれると良い。米国民主党への中国
  共産党の工作は継続しており、先のブッシュ・ゴア大統領選
  挙の際にもゴア民主党陣営に多額の選挙工作資金が中国から
  色々なルートで流されたと言われている。中国の在米工作拠
  点は、在米中国人ロビー団体の客家百人委員会等が有名であ
  る。米国のテレビ番組でも報道されて有名になったが、在米
  中国人の仏教団体からの寄付金を経由して中国からの工作資
  金が流れたといわれている。    http://bit.ly/T4dhaV
  ―――――――――――――――――――――――――――

マレーシア/マハティール元首相.jpg
マレーシア/マハティール元首相
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新自由主義の正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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