2014年06月25日

●「ワシントンコンセンサスとは何か」(EJ第3819号)

 レーガンから政権を引き継いだブッシュ(父)大統領は、経済
政策では失敗したものの、外交手腕を発揮して、ソ連との間で冷
戦の終結を宣言する功績を上げています。これは米国にとって、
眼前の大きな敵が消滅したことを意味します。
 そこで米国としては、その後の世界戦略を練る必要があったの
です。米国政府とIMFと世界銀行は、これが米国流の新自由主
義を世界に広げる絶好のチャンスと考えたのです。
 IMFや世界銀行が、経済破綻に陥った国家に救済融資するさ
い、必要な経済改革とは何かを定めたものを米財務省、IMF、
世界銀行の間で検討し、コンセンサスの得られたものをワシント
ンにあるシンクタンクの国際経済研究所から発表させているので
す。発表者はジョン・ウィリアムソンという研究員の名前になっ
ていますが、項目としては次の10項目があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
      1.財政赤字の是正
      2.補助金カットなど財政支出の変更
      3.税制改革
      4.金利の自由化
      5.競争力ある為替レート
      6.貿易の自由化
      7.直接投資の受け入れ促進
      8.国営企業の民営化
      9.規制緩和
     10.所有権法の確立
―――――――――――――――――――――――――――――
 これら10項目を見るとわかるように、いずれも新自由主義的
考え方に基づいています。そしてこれらは、財務省、IMF、世
界銀行の間でコンセンサスが得られているという意味で、「ワシ
ントンコンセンサス」というのです。
 実は、この国際経済研究所に1989年から客員研究員として
在籍していたのが竹中平蔵氏なのです。竹中平蔵氏の役割は、い
わゆる「内側から鍵を開ける人物」として、その後小泉内閣にお
いて活躍することになります。日本の国益ではなく、米国の国益
を守る人間としての活躍です。
 竹中平蔵氏は、ローレンス・サマーズ氏とも知己があり、完全
に米国側の人間といわれています。現在の安倍政権でも、産業競
争力強化会議の委員として、成長力戦略の案出と一応オブラート
に包んではいるものの、主として労働諸法制の規制緩和に強い影
響力を発揮しつつあります。
 国際経済研究所の創設者は、ピーター・G・ピーターソンとい
う人物ですが、彼はニクソン政権の商務長官、リーマンブラザー
ズのCEO、ニューヨーク連邦準備銀行理事長などを歴任してい
る金融界の大物です。
 国際経済研究所の当時の所長は、フレッド・バーグステインと
いい、クリントンの有力ブレーンなのです。彼は日米包括シナリ
オを書いた人物で、竹中平蔵氏を使い、米国に資金を貢がせる担
当として、教育したといわれています。経済分野で日本を縦横に
操ったトップクラスの人物なのです。
 クリントン政権のとくに東アジアに関する対外政策について、
菊池英博氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 クリントン政権では、ワシントン・コンセンサスの理念と戦術
 を駆使して、東アジアの主要国に金融資本市場の自由化を迫り
 相手国が準備不十分でも金融市場を利用して取引を活性化させ
 ていった。東アジア諸国は、冷戦中、民主主義陣営につき、ア
 メリカを中心とする軍事力で共産主義の侵入を防衛してきた。
 その結果、東アジアの国内には官民の富が蓄積し、アメリカは
 その富を収奪する戦略を考えてきたのである。
     ──菊池英博著/『そして、日本の富は略奪される/
   アメリカが仕掛けた新自由主義の正体』/ダイヤモンド社
―――――――――――――――――――――――――――――
 クリントン政権では、日本を含む東アジア諸国に対し、かなり
強引な手法でワシントンコンセンサスを飲ませる卑劣極まりない
戦略を展開したのです。その基本的な手順は次の3つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.東アジア諸国の行政機構に「シカゴボーイズ」を送り込
   み、内側からの説得で、米国の思う方向に向かわせる。
 2.APEC(アジア太平洋経済協力)の場を利用して、国
   別に金融資本市場の自由化と規制緩和を求め説得する。
 3.東アジアに通貨危機を起こさせ、それらの国がIMFに
   支援を求めると、ワシントンコンセンサスを飲ませる。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで「シカゴボーイズ」というのは、新自由主義の思想を各
国に伝播する役割を持つ人物です。米国は、ターゲットとする諸
国に密かにシカゴボーイズを送り込んでいますが、米国人とは限
らず、その国の人間を教育してシカゴボーイズに仕立てることも
あるのです。ミルトン・フリードマンがシカゴ大学の教授であっ
たことからその名で呼ばれています。現在の安倍政権にも多くの
シカゴボーイズが入り込んでおり、日本もかなり新自由主義に染
まりつつあります。
 また、1997年のアジア通貨危機が米国が仕掛けたものとは
断定できませんが、その原因が、タイ・バーツの急落をきっかけ
に、ヘッジファンドなど欧米の投機筋が一斉にアジア諸国から短
期資金を引き揚げたことが直接的な引き金になって起きており、
米国が意図的に起こそうと思えばできるのです。
 何よりもその結果、アジアの多くの国がIMFの援助を受けた
ことにより、米国が望むワシンンコンセンサスに従わざるを得な
くなったことで、米国の利益に繋がっているのです。韓国などは
その被害国のひとつであると思います。明日のEJでは、米国の
手口について考えます。    ──[新自由主義の正体/33]

≪画像および関連情報≫
 ●日本繰り対策班/きなこのブログ
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  世界帝国アメリカの尖兵として属国日本の政・官・財・学・
  マスコミを、思うがままに動かしてきた「日本操り対策班=
  ジャパン・ハンドラーズ」。ロバート・ゼーリックは、麻生
  政権で財務・金融大臣だった国士の中川昭一を、篠原尚之財
  務官と財務省国際局長だった玉木林太郎と、その愛人の読売
  新聞経済部の越前谷知子を使い、ワインに薬物を入れてフラ
  フラ(朦朧)会見をさせ失脚させた。ロバート・ゼーリック
  は竹中平蔵を操った一人でもある。小泉純一郎より竹中のほ
  うがアメリカから直接指令を受けていた。ブッシュ前政権で
  は国務副長官になろうとしていたが、中国でハニー・トラッ
  プ(女性問題)に引っかって、国務副長官を辞めた。ところ
  がその後、不思議なことに世界銀行の総裁になった。ゼーリ
  ックもまた、“皇帝”デイビッド・ロックフェラーの直臣の
  ひとりだからだ。竹中平蔵の育ての親だったのは、ピーター
  ソン国際経済研究所(IIE)というシンクタンクの所長で
  あるフレッド・バーグステンだ。バーグステンが竹中にずっ
  と目をかけてアメリカに資金を貢がせる係として教育した。
  (それを見抜いた植草一秀氏を、竹中は手鏡痴漢事件で陥れ
  た)バーグステンは1985年の「プラザ合意」(先進国為
  替密約)の下書きを書いた張本人でもある。
                  http://amba.to/1pqEgZf
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菊池英博氏の著書.jpg
菊池 英博氏の著書
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新自由主義の正体 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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