と考えています。小さい政府の推進によって、年金、医療などの
福利厚生面は、最小必要限度のものしかないというのが、常識に
なっています。そういう国だからこそ世界一豊かな国になれたの
だと考える人も多いと思います。
これに対して戦後の日本の発展は、政府による一貫としたケイ
ンズ政策の実行と、終身雇用制度、年功序列制度、企業別組合に
よる労使一体の日本独特の企業経営スタイルで築かれたものであ
ると信じられています。
しかし、1950年〜1980年代に絞って考えてみると、そ
こには福利に重点を置く現在の米国とは違う米国が存在したこと
を知ることができます。既出のロバート・ライシュ氏は、その違
う米国の姿を次のように表現しています。
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1950年ごろには労使の対立は影を潜めていた。賃金上昇と
並んで福利厚生の充実も進んだためである。福利厚生は労働者
にとって重要な要素となり、1950年には労使契約の1割が
年金を3割が医療保険を契約内容に含んでいた。その5年後に
は中堅規模以上の企業の45パーセントが年金を提供し、70
パーセントが生命、損害、医療など、各保険を提供していた。
しかも、医療保険には入院費用や出産費用も含まれていた。こ
れらの福利厚生は労使双方にとり有益であった。なぜなら、福
利厚生は所得に近い給付だったが、所得ほど厳しく課税されな
かったからである。したがって、全米の納税者が実質的に企業
の福利厚生を補助していたことになる。
──ロバート・ライシュ著
『暴走する資本主義』/雨宮寛/今井章子訳/東洋経済新報社
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日本式経営といわれる終身雇用制度に関しても、その頃の米国
には存在していたのです。企業には、トップから従業員まで多く
の階層に分かれますが、その階層の下位に属する者は階層をひと
つ上がることによって給与が上がり、上層部分では職務が公的性
格を帯びるので、給与の上昇は抑えられ、その結果、所得の平準
化が進んだのです。ライシュ氏は次のように書いています。
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雇用も以前に比べるとずっと安定した。これは労働組合の伸張
と、競争と革新よりスケールメリットを追求した産業の寡占的
秩序によるものだ。1952年の調査によると、企業幹部の3
分の2が同じ会社に20年以上勤めてきたと回答している。社
会学者のウィリアム・H・ワイト・ジュニアは、当時ベストセ
ラーとなった彼の著書でこのような企業幹部を「組織人」とい
う言葉で表現しているが、彼らはブルーカラー同様、あらかじ
め定められたコースと給与で処遇されるようになった。ワイト
が取材した若いホワイトカラーの男性の多くは「会社に忠誠を
尽くせば、会社も尽くしてくれる」と答えてこの見方を裏付け
ている。ワイトは「若者は一般に、彼らと組織の関係が末永く
続くことを期待している」と記し、相互の忠誠が重んじられる
のは「個人の目標と組織の目標が結局は一致し、同一のものに
なる」と考えられているからだと述べている。
──ロバート・ライシュ著の前掲書より
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それでは、年功序列制度についてはどうでしょうか。まさかそ
れはないだろうと思う人は多いと思います。しかし、これについ
ても、その頃の米国には存在していたことをライシュ氏は明かし
ています。
同じ会社に40年ほど勤務し、65歳ぐらいに定年退職をし、
企業年金で余生を過ごすというかつての日本のサラリーマンのよ
うな会社生活が米国にもあったのです。
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当時は年功に基づく処遇が一般的だった。ホワイトカラーの給
与は、個人的努力よりむしろ会社への在籍年数により決められ
た。ブルーカラーも同じで、組合の労働協約に基づき年功に応
じて賃金が引き上げられた。この年功による報酬制度が導入さ
れた結果、企業は生産コストを容易に予測できるようになり、
従業員は将来の生活設計を立てやすくなった。従業員の給与は
世帯の支出をようやくまかなえる水準から出発し、家族が増え
るにしたがってしだいに上昇した。そのため、従業員は無理の
ない支払い計画を立てて住宅ローンや自動車ローンを組むこと
ができた。(中略)そして40年あまり同じ会社に勤めた後、
65歳前後で定年退職を迎えた。退職時には金の時計やネクタ
イピンが記念品として贈られ、その後は現役時代よりは少額だ
が、余生を送るには十分な企業年金が支給された。
──ロバート・ライシュ著の前掲書より
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この頃米国の経済学で主流を占めていたのは、ノーベル経済学
賞受賞の経済学者、ポール・サムエルソン教授が中心となって提
唱していた「新古典派総合」の考え方であったのです。
サムエルソン教授の経済学は、市場メカニズムを重視するマネ
タリストの立場と、政府の介入を認めるケインズ経済学を組み合
わせることにより、資本主義経済は安定的に発展を遂げるという
考え方であったのです。
しかし、1970年代後半になる頃から、政府による市場介入
を全面的に否定する市場原理主義的な急進的学派に席巻されるよ
うになっていき、それが1980年代の、いわゆるレーガノミッ
クスの時代に入っていくのです。
しかし、いわゆる「大圧縮期」の米国の繁栄を支えたのは新古
典派総合というよりも、総需要管理を政府の役割として重視した
ケインズ経済学とその背後にあった福祉国家建設の強い信念なの
です。この福祉国家建設の信念は、サムエルソンの師アルビン・
ハンセン教授の信念です。 ──[新自由主義の正体/08]
≪画像および関連情報≫
●知ってる?ロバート・ライシュを
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知ってる?ロバート・ライシュというアメリカの経済学者
を。知ってる? 少数の金持ちに依存する新自由主義では、
どの中流家庭も全て貧困者に落ちてしまうこと。もう既にア
メリカでも日本でも中流家庭の底抜けが起きていることは周
りの生活を見ればわかるよね。賃金カットや、リストラで中
流家庭から一度落ちてしまうと、医療でも、教育でも決して
元の生活に戻るレベルの暮らしはできない。暮らしを切り詰
め、少しでも安いものを買うことしか、できなくなって、経
済は益々インフレから抜けられない。仕事も無くなり、子育
て後の子どもたちの就職も困難になる。良い成績を取ってき
た学生も、奨学金で700万円も借りてしまった月々の返済
が3〜4万にもなってしまう。若者が社会で独り立ちし経済
的に自立する最初の一歩は、月々3〜4万の負債返済からは
じまる。独立がままならない内に結婚生活に夢も持てない。
安倍自民党が選挙で言ってる「国防軍何てこの若者の貧困状
態を見透かしているんだろう。きっと、月々3〜4万の奨学
金の負債返済を免除するから、最低2〜3年は国防軍入った
ら?」となる。「そうだな、家賃も助かるからどうせ就職口
なかなか見つからないし、国防軍でも行くか」となる。少数
の金持ちに依存する新自由主義とは、何故全面崩壊に向うの
か?ニューヨークタイムズの話題『ロバート・ライシュ』の
論文が読める。『ロバート・ライシュ』の「没落した中流階
級の再生なしにアメリカ経済は復活しない」が読める。
http://bit.ly/RLXXzF
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ロバート・ライシュ氏と著書