をいかに拡大していたかを示す事例があります。それは、評論家
の荻上チキ氏に対して財務省が電話を入れ、増税の「ご説明」に
訪問しているという事実です。
ところで、荻上チキ氏という評論家をご存知ですか。
実は私は知らなかったのです。偶然4月25日放送の「朝まで
生テレビ」(テレビ朝日)に出演しており、そのとき、はじめて
知ったのです。テーマは「集団的自衛権」でしたが、並みいる論
客のなかでも実に堂々と自分の意見を展開し、33歳ながらその
知識は並みではないという感じで、存在感を示していました。
ちなみに「荻上チキ」はハンドルネームで、実名は明かしてい
ないのです。彼はいわゆるネットの寵児であり、著書も多く、最
近はラジオにも毎日のように出演しているのです。ブログも出し
ており、ツイッターもやっていますが、ツイッターのフォロワー
は6万人を超えるレベルです。
その荻上氏は、2013年11月に財務省から電話を受けたと
いっているのです。既に10月1日に安倍首相は8%の増税を決
定していたのですが、財務省はまだ「ご説明」運動を行っている
のです。10%引き上げをにらんだ工作と思われます。
萩上氏は、何かの参考になると考えて、会うことに同意したそ
うです。その模様を「週刊現代」4/26より引用します。
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メールで「ご著書を拝読しました。消費税について一度お話を
させて下さい」とコンタクトをとってきました。スターバック
スで会うことになったんですが、来たのは電通から官民交流で
財務省に来ている広報担当者と財務省プロパーの広報担当者。
これまではマスメディア、政党、学者などに「ご説明」に伺っ
ていたけれど、それだけでは不十分なので、私のような個人や
NPOなどにも対象を広げでいると言っていた。財務省側は数
センチにもなる分厚い資料を持参、その上で荻上氏の著書に大
量の付箋を付けて、それをもとに説明をはじめたという。「簡
単にいえば、「いまなぜ消費税増税が必要なのか」について説
明を受けたわけです。私がいますぐにやらなくてもいいという
話をすると、「違う、今でしょ」という説明を繰り返していま
した。 ──「週刊現代」4/26より
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荻上チキ氏によると、「ご説明」で財務省は、97年の増税の
さい、景気が落ち込んだのは、アジア通貨危機の影響であって、
消費税増税の影響ではないという、御用学者が口を揃えていう陳
腐なロジックを繰り返したといいます。
これについて、三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・
社会政策部主任研究員の片岡剛士氏は、消費税増税の影響は明白
であると次のように述べています。
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96年度の実質GDP成長率は2.7 %だったのですが、民間
消費の寄与は1.3 %でした。それが増税後の97年度に民間
消費の寄与は―0.6 %まで下がっている。住宅投資の寄与も
96年度は0.6 %だったのですが、97年度には―1.0 %
になっています。消費税増税は民間消費と住宅投資に影響を与
えるという事を念頭におけば、消費税増税の影響がなかったと
は言えないことは確かなんですね。 http://bit.ly/1kv2Y9E
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もうひとつ片岡氏は、増税に対応する5.5 兆円の補正予算の
ことについても触れています。実はこの5.5 兆円、国債を発行
していないのです。
実は毎年予算は使い切れず大幅に残っているのです。そのおカ
ネは本来国庫に戻すべきですが、繰越金として残され、恣意的に
使われています。金額はおよそ数兆円規模になります。このよう
にして役人の懐(埋蔵金)はどんどん豊かになっていくのです。
5.5 兆円は、予算が使い切れずに残ったおカネと景気がよく
なったことで増えた税収をプラスしたものなのです。国の財政が
危機的状況で、消費税を増税しなければならないのなら、執行で
きない無駄な事業を減らし、その余ったお金と景気回復で増えた
税収こそ財政再建に回すべきです。矛盾しています。
荻上チキ氏は、「なぜ消費税なのか」と聞いたところ、財務省
は次の答えを返してきたそうです。
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荻上:(財務省の説明は)所得税は、現役世代が限られている
から限界がある。相続税も同様だ。高所得者層はすでに
多く負担しているし、これ以上を求めると海外に逃げて
しまう。それから所得分布をみてほしい。日本人の平均
所得は408万円。世帯収入で最も層が厚いのは200
〜299万、300〜399万。ボリュームゾーンから
取る手段は重要だ。控除を検討しつつも、どう理解を得
ていくかが課題だ、と。こんな感じですね。
片岡:酷い説明ですね。 http://bit.ly/1kv2Y9E
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これをみると、財務省という役所は、国民のことなどカケラも
考えていないことがわかると思います。彼らのアタマにあるのは
役人天国を維持することだけです。
300〜399万円の層から税金をとっていると、これらの層
は200〜299万円の層に多く転落し、200万円以下の層が
増大することは必至です。
大切なことは、増税に頼ることなく国全体の税収を上げること
なのです。そのうえで、所得税で税収を確保するのが正しいやり
方ですが、そういう議論は出てこないのです。だいいち、今回の
増税は財政再建のためではなく、社会保障に全額使うということ
になっているのではないでしょうか。これにはカラクリがあるの
です。これについては来週のEJで詳しく述べることにします。
──[消費税増税を考える/81]
≪画像および関連情報≫
●景気回復基調に変化なし/西村内閣府副大臣/4月17日
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[東京17日ロイター] -西村康稔内閣府副大臣は17日夕
月例経済報告関係閣僚会議後に記者会見し、4月の経済報告
で景気の判断を下方修正したことについて、景気の基盤は引
き続きしっかりしており、緩やかな回復基調に変化はないと
の認識を示した。消費などの弱い動きは想定されたことで一
時的なものだと指摘。消費増税の駆け込みの反動も、今のと
ころ想定の範囲内に収まっていると述べた。西村副大臣は、
「消費増税を決めたときから反動は想定していた」と指摘。
「住宅、自動車、家電などは基本的に売り上げが落ちている
が、家電はパソコンの買い替え需要で少し戻している。サー
ビスや飲食は引き続き強く、しっかりとした強い消費傾向が
みられる。いまのところ前回(の消費増税時)と比べ、想定
している範囲内の動きと考えている」との認識を示した。そ
のうえで、政府としては景気対策をしっかりと進め、成長戦
略を含めて政策を実行していきたいとした。とくに医療分野
農業分野、雇用改革などで議論を詰めており、しっかりと6
月の成長戦略に盛り込みたいと語った。賃上げの動きに関し
ては一定のレベルで妥結してきていると指摘、大手企業など
で2%前後の賃上げが実現しており、ボーナスも含めれば3
%を超えるところまで期待できるとの見方を示した。
http://bit.ly/1n0BX1k
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荻上 チキ氏