2014年05月02日

●「荻上チキ氏と財務省の『ご説明』」(EJ第3783号)

 財務省が今回の増税の実現に、いわゆる「ご説明」をする対象
をいかに拡大していたかを示す事例があります。それは、評論家
の荻上チキ氏に対して財務省が電話を入れ、増税の「ご説明」に
訪問しているという事実です。
 ところで、荻上チキ氏という評論家をご存知ですか。
 実は私は知らなかったのです。偶然4月25日放送の「朝まで
生テレビ」(テレビ朝日)に出演しており、そのとき、はじめて
知ったのです。テーマは「集団的自衛権」でしたが、並みいる論
客のなかでも実に堂々と自分の意見を展開し、33歳ながらその
知識は並みではないという感じで、存在感を示していました。
 ちなみに「荻上チキ」はハンドルネームで、実名は明かしてい
ないのです。彼はいわゆるネットの寵児であり、著書も多く、最
近はラジオにも毎日のように出演しているのです。ブログも出し
ており、ツイッターもやっていますが、ツイッターのフォロワー
は6万人を超えるレベルです。
 その荻上氏は、2013年11月に財務省から電話を受けたと
いっているのです。既に10月1日に安倍首相は8%の増税を決
定していたのですが、財務省はまだ「ご説明」運動を行っている
のです。10%引き上げをにらんだ工作と思われます。
 萩上氏は、何かの参考になると考えて、会うことに同意したそ
うです。その模様を「週刊現代」4/26より引用します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 メールで「ご著書を拝読しました。消費税について一度お話を
 させて下さい」とコンタクトをとってきました。スターバック
 スで会うことになったんですが、来たのは電通から官民交流で
 財務省に来ている広報担当者と財務省プロパーの広報担当者。
 これまではマスメディア、政党、学者などに「ご説明」に伺っ
 ていたけれど、それだけでは不十分なので、私のような個人や
 NPOなどにも対象を広げでいると言っていた。財務省側は数
 センチにもなる分厚い資料を持参、その上で荻上氏の著書に大
 量の付箋を付けて、それをもとに説明をはじめたという。「簡
 単にいえば、「いまなぜ消費税増税が必要なのか」について説
 明を受けたわけです。私がいますぐにやらなくてもいいという
 話をすると、「違う、今でしょ」という説明を繰り返していま
 した。           ──「週刊現代」4/26より
―――――――――――――――――――――――――――――
 荻上チキ氏によると、「ご説明」で財務省は、97年の増税の
さい、景気が落ち込んだのは、アジア通貨危機の影響であって、
消費税増税の影響ではないという、御用学者が口を揃えていう陳
腐なロジックを繰り返したといいます。
 これについて、三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・
社会政策部主任研究員の片岡剛士氏は、消費税増税の影響は明白
であると次のように述べています。
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 96年度の実質GDP成長率は2.7 %だったのですが、民間
 消費の寄与は1.3 %でした。それが増税後の97年度に民間
 消費の寄与は―0.6 %まで下がっている。住宅投資の寄与も
 96年度は0.6 %だったのですが、97年度には―1.0 %
 になっています。消費税増税は民間消費と住宅投資に影響を与
 えるという事を念頭におけば、消費税増税の影響がなかったと
 は言えないことは確かなんですね。  http://bit.ly/1kv2Y9E
―――――――――――――――――――――――――――――
 もうひとつ片岡氏は、増税に対応する5.5 兆円の補正予算の
ことについても触れています。実はこの5.5 兆円、国債を発行
していないのです。
 実は毎年予算は使い切れず大幅に残っているのです。そのおカ
ネは本来国庫に戻すべきですが、繰越金として残され、恣意的に
使われています。金額はおよそ数兆円規模になります。このよう
にして役人の懐(埋蔵金)はどんどん豊かになっていくのです。
 5.5 兆円は、予算が使い切れずに残ったおカネと景気がよく
なったことで増えた税収をプラスしたものなのです。国の財政が
危機的状況で、消費税を増税しなければならないのなら、執行で
きない無駄な事業を減らし、その余ったお金と景気回復で増えた
税収こそ財政再建に回すべきです。矛盾しています。
 荻上チキ氏は、「なぜ消費税なのか」と聞いたところ、財務省
は次の答えを返してきたそうです。
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 荻上:(財務省の説明は)所得税は、現役世代が限られている
    から限界がある。相続税も同様だ。高所得者層はすでに
    多く負担しているし、これ以上を求めると海外に逃げて
    しまう。それから所得分布をみてほしい。日本人の平均
    所得は408万円。世帯収入で最も層が厚いのは200
    〜299万、300〜399万。ボリュームゾーンから
    取る手段は重要だ。控除を検討しつつも、どう理解を得
    ていくかが課題だ、と。こんな感じですね。
 片岡:酷い説明ですね。       http://bit.ly/1kv2Y9E
―――――――――――――――――――――――――――――
 これをみると、財務省という役所は、国民のことなどカケラも
考えていないことがわかると思います。彼らのアタマにあるのは
役人天国を維持することだけです。
 300〜399万円の層から税金をとっていると、これらの層
は200〜299万円の層に多く転落し、200万円以下の層が
増大することは必至です。
 大切なことは、増税に頼ることなく国全体の税収を上げること
なのです。そのうえで、所得税で税収を確保するのが正しいやり
方ですが、そういう議論は出てこないのです。だいいち、今回の
増税は財政再建のためではなく、社会保障に全額使うということ
になっているのではないでしょうか。これにはカラクリがあるの
です。これについては来週のEJで詳しく述べることにします。
              ──[消費税増税を考える/81]

≪画像および関連情報≫
 ●景気回復基調に変化なし/西村内閣府副大臣/4月17日
  ―――――――――――――――――――――――――――
  [東京17日ロイター] -西村康稔内閣府副大臣は17日夕
  月例経済報告関係閣僚会議後に記者会見し、4月の経済報告
  で景気の判断を下方修正したことについて、景気の基盤は引
  き続きしっかりしており、緩やかな回復基調に変化はないと
  の認識を示した。消費などの弱い動きは想定されたことで一
  時的なものだと指摘。消費増税の駆け込みの反動も、今のと
  ころ想定の範囲内に収まっていると述べた。西村副大臣は、
  「消費増税を決めたときから反動は想定していた」と指摘。
  「住宅、自動車、家電などは基本的に売り上げが落ちている
  が、家電はパソコンの買い替え需要で少し戻している。サー
  ビスや飲食は引き続き強く、しっかりとした強い消費傾向が
  みられる。いまのところ前回(の消費増税時)と比べ、想定
  している範囲内の動きと考えている」との認識を示した。そ
  のうえで、政府としては景気対策をしっかりと進め、成長戦
  略を含めて政策を実行していきたいとした。とくに医療分野
  農業分野、雇用改革などで議論を詰めており、しっかりと6
  月の成長戦略に盛り込みたいと語った。賃上げの動きに関し
  ては一定のレベルで妥結してきていると指摘、大手企業など
  で2%前後の賃上げが実現しており、ボーナスも含めれば3
  %を超えるところまで期待できるとの見方を示した。
                   http://bit.ly/1n0BX1k
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荻上チキ氏.jpg
荻上 チキ氏


posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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