のが1948年に発足したのです。GATTでは、国が特定企業
に補助金を出したり、税金の免除をすることは公正な貿易を阻害
するものとして、原則禁止になっています。
現在、GATTの活動は、1995年1月に発足したWTOに
引き継がれていますが、その基本理念などは一切変更されてはい
ないのです。
そのWTOの協定で、例外的に補助金や課税免除を認めている
項目が間接税なのです。間接税を導入している国においては、そ
の調整手段として、還付金を政府から特定企業に出すことを認め
ているのです。
GATTの多角的貿易交渉において「ケネディ・ラウンド」と
いわれるものがあります。GATTの第6回目の多角的貿易交渉
で、1962年1月にケネディ大統領の年頭教書で提唱されたこ
とからこのように呼ばれています。
ケネディラウンドとは、1964年5月〜1967年6月に行
われた多角的貿易交渉のことですが、この交渉の頃から、米国の
財界や政府は、GATT協定の付加価値税の規定や輸出還付金な
どに関して、その被害を訴えるようになっていたのです。
ちょうどそのとき、欧州各国はEC(当時の欧州共同体)加盟
国の統一税制を目指し、付加価値税導入に傾いて行くのです。付
加価値税導入時期は次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
ドイツ ・・・・・ 1968年
オランダ ・・・・ 1969年
ノルウェー ・・・ 1970年
ベルギー ・・・・ 1971年
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欧州各国が続々と付加価値税を導入していたこの時点で、日本
は消費税を導入していないのです。したがって、欧州向けの日本
の輸出品には欧州の付加価値税がかかり、欧州から日本への輸出
に関しては輸出還付金があるのです。つまり、日本は貿易的には
現在の米国と同じように不利な立場に立っていたのです。そうい
う米国の声明に対し、日本とカナダは、米国を支持する姿勢を明
らかにしています。
ドイツが付加価値税を導入した1968年の『通商白書』には
次の記述があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
なお、EEC各国は、70年の1月1日までに付加価値税制へ
移行すると予定されている(ドイツは68年1月1日付加価値
税制に移行)。その際にはEEC向け輸出品には、各国毎に一
定率の付加価値税が賦課され、EEC各国が輸出を行なう際に
は、付加価値税率と同率の戻し税を受取ることになる。このよ
うな税制の改正は税率の変更のいかんによっては、わが国の貿
易にも影響を及ぼす可能性がある。この付加価値税制の問題に
ついては従来からOECDの場で検討されてきているが、最近
はガットの場において長期的な観点から、検討が行なわれてい
る。 ──1968年『通商白書』より
──岩本沙弓著『アメリ
カは日本の消費税は許さない/通貨戦争で読み解く世界経済』
文春新書948
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日本が消費税を導入したのは、1989年4月のことです。竹
下内閣のときです。竹下内閣が消費税増税の導入を検討していた
時期、世間ではリクルート事件一色だったのです。その竹下内閣
が消費税を導入した同じ年の6月に退陣したのは、この事件が影
響しているのです。
細川内閣も国民福祉税という名の消費税を導入しようとして発
表した直後に佐川急便事件で内閣を降り、それに強く反対してい
たはずの村山富市氏も首相になると、消費税増税を可決して退陣
しています。そして、その消費税増税法を実施した橋本内閣も経
済が失速して選挙に敗れ、退陣せざるを得なくなっています。
さらに、公約に違反して突然消費税増税を打ち出した民主党の
菅内閣も長続きせず、これを受け継いだ野田内閣は、法案成立後
の総選挙で大敗し、民主党は政権を失っています。
このように見て行くと、消費税導入や消費税増税に関与した内
閣のすべてが早期に退陣するという不幸に見舞われています。今
回増税を実施した安倍内閣もけっして無事で済むとは思えないの
です。そのすべてがそうであるとはいいませんが、そのウラには
米国の影が見え隠れするのです。
今回の増税を実施した安倍内閣について、岩本沙弓氏は次のよ
うに予測しています。
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現実的に考えれば、2014年からの消費税増税で実際に税金
が徴収されるのは2015年になってからということになる。
そして2015年10月にはもう一段の消費税引き上げが用意
されているとなれば、2015年は再度駆け込み需要が見込め
るために、景気は表向きには堅調に推移する可能性が高い。従
って、2014年、2015年の2回の増税の影響は、ダブル
で2016年に日本経済に降りかかってくる、ということにな
る。2017年以降はかなり深刻な経済状況となろうが、次の
総選挙が2016年であることから、それまでの任期と安倍首
相も初めから割り切ってのことか。その間米国からの政権への
圧力をかわすつもりなら通商交渉が米国寄りとなろう。
──岩本沙弓著の前掲書より
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しかし、米国は付加価値税や消費税の増税をした国には、これ
まで制裁措置を行ってきています。もちろん日本に対しても行っ
ています。TPP交渉がどなるかについても、この問題と深い関
係があるのです。 ──[消費税増税を考える/69]
≪画像および関連情報≫
●欧州で付加価値税(消費税)のウエイトが高い理由
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欧州で付加価値税(消費税)のウエイトが高い理由は簡単で
す。欧州各国の経済主体が、帳簿を正しくつけていないから
(嘘を帳簿につけているから)、利益に対して課税し難いか
らです。利益は「売上−費用」ですが、利益を正しく把握す
るためには、売上と費用を正しく帳簿につける必要がありま
す。利益に対しての課税を潜脱したければ、売上を水増しす
るか、費用を過小に記録するか、どちらかの手口が必要にな
ります。いずれにしろ、帳簿には事実通りの記載をすること
はできません。こうなると、企業の帳簿は信用できませんか
ら、売上それ自体に課税しないと税金を徴収できないことに
なります。だから、消費税が広まったのです。そして、この
ことは同時に、裏社会の蔓延・定着を促進することになりま
す。代表例はもちろんイタリアです。アンダーグラウンド経
済が大きな規模を誇っており、そのアンダーグラウンド経済
で得た利益を「洗濯」するために、「バチカン銀行」がおお
いに活用されています。それに、欧州は「EU」ということ
で、欧州内での移動(イタリアからフランスに移動、など)
はボーダーレス状態ですから、個人の課税所得の把握も徴収
も、日本の場合と違って、とても難しいわけです。そもそも
徴収しようと思ったら隣の国に引っ越していた、なんてこと
もあるわけですし。だから、売上という「外から見ても、あ
る程度、把握し易いもの」に課税する消費税という方式、わ
れわれ日本人にとっては不公平・不公正な税制が欧州では、
「やむをえず」広まっているわけです。
http://bit.ly/1kUccv8
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岩本 沙弓氏