2014年04月10日

●「輸出還付金は2兆5千億円になる」(EJ第3768号)

 4月8日付の日本経済新聞第5面によると、OECD事務総長
の発言が記事になっています。
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 ≪日本の消費税、15%必要/法人税、適切に下げて≫
 経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は7日、都内
 で日本経済新聞社の取材に応じ、「消費税は長期的に15%ま
 で引き上げてもよい」との見方を示した。法人税率引き下げの
 議論も並行して進めるべきだとも指摘した。2020年までに
 基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字にする日本政
 府の目標に対し、OECDは消費増税による財政健全化を提言
 している。グリア氏は、「OECD加盟国の付加価値税(VA
 T)は平均で20%だ」と説明。「日本は10%に引き上げて
 もまだ半分にすぎない」と話し、高齢化社会への対応として、
 15年に予定する10%を超えてさらに引き上げる必要がある
 と述べた。  ──2014年4月8日付、日本経済新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この発言にはきわめて違和感を感じます。余計なお世話ですし
明らかな内政干渉です。「OECD加盟国の平均は20%であり
日本は10%に引き上げてもその半分に過ぎない」──それは日
本の事情であり、国外からとやかくいわれる筋合いのものではな
いからです。
 それに現在のEUの現状をみると、消費税増税では財政健全化
ができないことは明らかです。財政健全化どころか、増税によっ
て雇用が激減し、経済状況はかえって悪くなっていることをOE
CD事務総長はどう考えているのでしょうか。
 この記事のウラには財務省がいます。OECDの事務総長が来
日する場合、財務省は何らかのかたちでからむはずです。そこで
日経の記者に指示して記事にしたものと考えられます。とにかく
日本経済新聞は政権べったりの報道をする新聞社なのです。
 財務省としては、次の10%への引き上げを何としても実現さ
せたいのです。昨日のEJで述べたように、財務省は財政危機悪
化を理由にしてさらに税率を引き上げたいと考えています。この
会見記事はそのためのひとつの布石です。彼らは国民の生活など
どうなってもかまわないと考えているのです。
 「関税」は世界最古の税金です。ところで、関税のことを英語
で次のようにいうことを知っていますか。
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           関税=customs
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 「customs」 は「習慣」という意味です。なぜ、そう呼ばれる
かというと、それが想像を絶するほど昔から行われていた「慣習
的な支払い」であるからです。アダム・スミスは『国富論』でそ
のように書いています。
 しかし、付加価値税や消費税は、1954年にフランスで採用
されたもので、それからわずか60年しか経っていないのです。
そういう税制にはどうしても不備は避けられないのです。それに
付加価値税をはじめて採用したフランスが債務危機に陥っている
ことを考えれば、消費税増税による財政再建がいかに難しいかわ
かるというものです。ちなみに日本については財政危機であると
は私はまったく考えていないのです。
 米国の州や地方自治体が行っている小売売上税について考えて
みることにします。これはきわめてシンプルです。店側は、顧客
に商品を提供しますが、そのさい購入者に対して一定の税を徴収
します。店側はその徴収したおカネをそのまま州や地方自治体の
当局に申告して納税する──それだけのことです。
 しかし、日本の消費税の場合は非常に複雑なのです。店側は仕
入れの段階で卸業者などに消費税を払っています。そのようにし
て仕入れた商品やサービスを店側が売る場合、購入者から消費税
を受け取ることになります。
 それではどのようにして消費税を納めるのかというと、店側が
仕入れたときに支払った消費税と、店側が購入者から受け取った
消費税を相殺して納税することになります。しかし、この場合重
要なのは、個々の商品やサービスの売り上げから仕入れを差し引
いて納税するのではないということです。
 事業者は年間の売上高から年間の仕入高を差し引いて納税額を
計算し、税務署に収めるのです。つまり、実際に消費者が負担し
た個々の消費税分と事業者の納税額との間には直接関係がないこ
とになります。
 これは、流通過程におけるすべての事業者が、仕入れのさい支
払った消費税分を控除する作業を行っていることになります。生
産→製造→卸→小売りのそれぞれの段階で、その清算作業を行っ
ているのです。きわめて複雑な話です。
 問題は輸出の場合です。輸出品には「仕向地原則」というもの
が適用されるのです。自動車のケースを例にとります。自動車が
輸出されると、消費税は原産地の日本ではなく、それを消費する
国(輸出する先の国)──仕向地で課税されることになります。
 もし現在、日本車をフランスに輸出すると、仕向け地であるフ
ランスの付加価値税20%がかかります。しかし、自動車を生産
する過程で部品などを原産地の国内で調達していると、そこで消
費税分を負担しているとして、国内で既に支払った消費税分は自
動車メーカーに還付金として渡されるのです。この還付金のこと
を「輸出還付金」というのです。
 2012年度予算で試算すると、輸出還付金の総額は2兆50
00億円になっています。そのうちの約半分は、輸出企業の上位
20社に渡されています。消費税の税収は年間10兆円ですが、
本来は輸出還付金を含めた12.5 兆円のはずなのです。
 そして、もし消費税率が10%になると、輸出量や単価がその
ままであるとすると、この2兆5000億円は5兆円に倍増され
るのです。何かおかしいと思いませんか。そのからくりは、明日
のEJで考えます。     ──[消費税増税を考える/66]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税と税収の関係/Garbage NEWS.com
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  日本でも消費税が1989年に導入されてから20年以上の
  月日が経つが、昨今再び消費税周りの話題を良く耳にする。
  言うまでも無く、現行税率の5%から、さらに上乗せがされ
  る可能性があり(2段階方式で最終的には10%)、その判断
  がこの数か月の間になされるからだ。一方、消費税の税率ア
  ップの理由に「財政再建」「安定税収の確保」「不景気下で
  落ち込み気味な税収のアップ」などが語られている。ところ
  が各種シミュレーションでも「消費税を上げても総合的な税
  収増にはつながらない」との話もある。そこで今回は過去の
  税収関連のデータを基に、日本における消費税と税収の関係
  をグラフ化し、精査を行うことにした。一般会計税収の推移
  は1985年度(1985年4月〜1986年3月分)以降は
  財務省の【一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移】
  で確認、取得ができる。さらに消費税のみの税収は【統計表
  一覧】、概念の把握は【「税収について考えてみよう」解説
  記事】で探し出すことができる。そして、消費税についての
  日本における過去の出来事「1989年4月1日に新設/3
  %」「1997年4月1日に増税(3%から5%)」を盛り込
  んだのが次のグラフ。「購買力などを考慮し、消費者物価指
  数を反映すべきだ」との声もあるが、この数十年間実質的に
  消費者物価指数はほぼ横ばいなことを考慮すれば、無視でき
  るものと判断する。        http://bit.ly/1gFWaB8
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一般会計と消費税税収推移(兆円)/2013.jpg
一般会計と消費税税収推移(兆円)/2013
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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