延期するのかの決定が安倍首相に委ねられたとき、次のようなこ
とが盛んにいわれたのです。
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◎消費税増税は既に国際公約になっており、もし見送りになれ
ば、日本の信用が失われる。
◎消費税増税を見送れば日本が財政再建をやる気がないと看做
され、長期金利が上昇する。
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これは、きわめておかしな話なのです。明らかに国内問題であ
る消費税増税の時期を日本という主権国家がいつにしようと日本
の勝手であって、他国からどうのこうのといわれる筋合いのもの
ではないのです。しかし、増税法案が成立以来2013年10月
の増税決定までこれらのメッセージは流され続けたのです。
これは、何としても増税をしたい財務省とその財務省に飼われ
ている御用学者たちが、新聞や雑誌でそういう論説を書いたり、
テレビに出てきて吹きまくったウソの情報なのです。しかし、そ
れを本当のことと受け止めた国民も多くいたのです。
ここに格好の例があります。日本で消費税増税論議が高まって
いた2012年5月6日、フランスで大統領選の決選投票が行わ
れたのです。ニコラ・サルゴジ氏とフランソワ・オランド氏の決
選投票ですが、争点は付加価値税(消費税)の増税をするかしな
いかだったのです。
選挙前のフランスの付加価値税の標準税率は19.6 %だった
のですが、サルゴジ氏はそれを21.2 %に引き上げると公約し
オランド氏は増税撤回を約束していたのです。選挙戦の結果、得
票数は、オランド氏51.62 %、サルゴジ氏48.38 %でオ
ランド氏がフランスの大統領になったのです。
大統領に就任するやオランド氏は、直ちに付加価値税の増税を
凍結し、公約を果したのです。ところで、当時フランスのトップ
であるサルゴジ氏は増税を選挙の公約にしていたのですから、こ
れは公の事実です。ましてフランスはEUの加盟国ですから、フ
ランスが増税をして財政再建に取り組むかどうかはちょうどギリ
シャ問題で欧州債務懸念が強まっていたさなかであり、同じEU
の諸国にとって、関係のない話ではないのです。
しかし、そのサルゴジ氏は大統領選に敗れ、増税は凍結されて
しまったのです。そうだからといって、国際世論が、いやEU諸
国がフランスを非難したかというと、そんなことはないのです。
増税するかしないかは、その国の内政の問題であり、他国が干渉
すべきことではないからです。
それでは、フランスでは、増税が見送りになって長期金利は上
昇したでしょうか。
選挙直前の2012年5月4日の終値で2.826 %だった長
期金利は選挙直後から利回りが低下し、1年後の2013年5月
に1.6 %になったあと、2013年11月には2.1 〜2.2
%で推移しているのです。増税撤回で長期金利が暴騰することな
ど起こっていないのです。
このように、増税をしたいがためにマスコミを通じて国民にウ
ソの情報を流して増税を受け入れさせる──こんなことは犯罪行
為です。建前上増税で得た資金は全額社会保障に使うといってい
ますが、おカネに色はついていないのです。きっと10%では足
りないので15%するといって、またしても税率を引き上げるこ
とは目に見えています。そんなことより、役人の天下りの無駄を
やめさせる方が先ではありませんか。
それに政治家も「身を切る改革をする」と国民に約束したのに
何もしていないではないですか。そんな安倍政権に国民は現在で
も、なんと50%を超える高い支持を与えているのです。
ちなみにオランド大統領は、就任直後に増税は凍結したものの
政権発足半年後の2012年11月6日の時点で、2014年か
ら0.4 %の付加価値税の増税を宣言したのです。フランス国民
は完全に裏切られたのです。そのため、政権発足当時60%以上
あった大統領の支持率は、増税発表後に急落し、現在では20%
以下に落ちています。もはやオランド大統領の再選は絶望的であ
るとフランスではいわれているのです。
日本でも消費税増税はしないという公約を掲げて政権交代を成
し遂げたのに、一転して国民を裏切り、こともあろうに当時野党
の自民党と組んで、公約破りの消費税増税を実施した民主党に国
民は選挙で厳しい審判を下しています。
しかし、それではスジが通らないとして民主党を離党してけじ
めをつけた小沢一郎氏のグループに対して国民は何をしたでしょ
うか。増税を強行した民主党と一緒にして選挙で大敗させ、少数
政党にしてしまっています。こういうことをやって喜ぶのは官僚
機構──役人たちだけなのです。
本当に官僚機構を壊し、政治を官僚から国民の手に取り戻せる
剛腕が振るえる政治家は、官僚機構と棲み分けをしている自民党
は論外として、石原慎太郎氏でも橋下徹氏でも渡辺喜美氏でもな
く、小沢一郎氏だけです。だからこそ、官僚機構は小沢氏に対し
ていわれなき人格破壊を仕掛けて潰したのです。日本国民はもっ
と賢くなるべきです。
ところで、私たちは消費税制度についてどれほどの知識がある
でしょうか。
実は米国は、日本の消費税や他の各国の採用する付加価値税に
対して「非関税障壁」(関税以外の方法で貿易を制限する)であ
ると受け止めているのです。とくに米国は消費税をやっていない
ので、余計にそのことを問題視しているのです。
今回日本は消費税率を8%にしましたが、カナダは5%と低率
です。両国とも税率は導入から20年を経過しているのに他国に
比べて低い水準です。これは欧州の高率と対照的です。これは、
日本、カナダ両国がともに親米国家であることと無関係ではない
のです。 ──[消費税増税を考える/65]
≪画像および関連情報≫
●フランス経済2013年の展望/日テレニュース24
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12年5月の大統領選挙で、社会党のオランド氏が現職のサ
ルコジ氏を破り、フランスで17年ぶりに社会党政権が誕生
した。オランド氏は、サルコジ氏の政策を「金持ち優遇」だ
と批判して、「富裕層への増税」「雇用の拡大」「経済成長
重視」をアピール、若年層や低所得者の支持を集めて新大統
領に就任した。しかし、就任から半年余りが経った現在、オ
ランド政権は厳しい批判を浴びている。国民の間に「暮らし
が良くなった」という実感がないためだ。フランスの経済成
長率は12年後半にマイナス成長に転落し、13年も0.1
%にとどまる見通し。失業率は10.7%に上昇し、失業者
数は300万人を超えた。この数字は、サルコジ政権下より
も悪化している。雇用の悪化を象徴するのが、フランスの自
動車大手「プジョー・シトロエングループ(=PSA)」。
ヨーロッパの自動車市場が低迷する中、12年7月に約80
00人の雇用削減と一部工場の閉鎖を発表した。オランド大
統領は「人員削減は認めない」と介入に乗り出したが、進展
は見られない。また、付加価値税(消費税)の税率引き上げ
をめぐり、国民の不信が募っている。オランド政権は就任後
サルコジ氏が選挙前に発表した付加価値税の増税を「撤回す
る」と発表した。しかし、12年11月、付加価値税率の引
き上げ(標準税率19.6%を20.0%に)を14年から
実施する方針を発表した。国民は「裏切られた」と感じてい
る。 http://bit.ly/1hTjAaJ
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フランス/オランド大統領