2014年04月02日

●「ニュークラシカル派が増えている」(EJ第3762号)

 日本でいうところの「新しい古典派」、すなわちニュー・クラ
シカル・エコノミクス──小さな政府とか構造改革とかいってい
る人のほとんどはこのニュー・クラシカル派と考えられます。
 私が愛読している「経済コラムマガジン」というメルマガがあ
ります。2002年の小泉政権のときですが、この「経済コラム
マガジン」で、ニュー・クラシカル派のことを取り上げたことが
あります。
 そこにこんな話が出ていたのです。蜜蜂の話です。蜜蜂を見る
と、多くの蜂がいつも慌ただしく働いています。だから、働き蜂
というのでしょうが、よく観察すると、20%ぐらいの蜂は仕事
をしているフリをしてサボッているのだそうです。
 そこでその20%ほどの不届きな蜂を駆除してみたところ不思
議なことが起きたのです。やはり、20%の蜂が仕事をサボるよ
うになったというのです。人間でもそうですが、多くの蜂が集ま
ると、どうしても20%ぐらいはサボる蜂がおり、そういうバラ
ンスで仕事が行われているのです。その意味では、20%の蜂は
必ずしも不要の存在とはいえないのです。
 2002年当時、次のような言葉が政権サイドからよく聞こえ
てきたものです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎悪い銀行は市場から退場させるべきだ
 ◎建設・土木のような生産性の低い産業は淘汰が必要である
 ◎整理されるべき流通業者は早く整理せよ
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、仕事をしない蜜蜂の駆除と同じ発想です。これを進め
れば、日本の構造改革は前進し、企業の生産性は高くなり、日本
はデフレから脱却できるという考えたのです。
 小泉内閣は「改革なくして成長なし」というスローガンを掲げ
ましたが、その改革を進めるために、財政支出を削減し、規制緩
和を推進する必要があるとして、市場への政府の関与をできるだ
け減らし、文字通り小さな政府の実現を目指したのです。
 その結果、日本経済はどうなったでしょうか。
 相当の数の中堅ゼネコンや大手流通業者が破綻し、銀行や証券
会社、保険会社も何行かは退場し、証吸収合併されています。労
働市場の規制緩和によって、正職員が減少し、不正規雇用者が激
増したのです。これによって雇用の不安定化が進んでいます。
 しかし、これだけの構造改革とやらをやったにもかかわらず、
成長率はマイナスであり、デフレから脱却するどころか、かえっ
て事態は悪化したのです。効率の悪い企業も市場から退場させて
も一向に企業は成長していないのです。どうやら蜂の世界も人間
の世界も同じようです。
 それにもかかわらず、ニュー・クラシカル派は増える一方であ
り、メディアの論説委員などもすべてニュー・クラシカル派に染
まっています。何しろ彼らは「排除の論理」を進めているので、
ニュー・クラシカル派は増える一方です。彼らは、一貫してケイ
ンズ政策を批判するのですが、今やテレビなどに出演して、ケイ
ンズ的政策を唱えようものなら、経済学者やコメンテーターなど
から袋叩きに遭う可能性があります。
 「経済コラムマガジン」の筆者によると、とくに日経新聞の論
説委員、編集委員のほとんどはニュー・クラシカル派になってし
まっているといいます。同メールマガジンの筆者は、今やケイン
ジアンは「福神漬」のような存在になってしまったとして次のよ
うに述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日経新聞はとくに極端である。日経のコラムの執筆者の全部が
 「小さい政府」論者と言って過言ではない。例外は頑固にケイ
 ンズ政策を主張している金森久雄氏だけである。テレビに登場
 する例外的なエコノミストも、リチャード・クー氏ぐらいであ
 る。確かにこの両者以外で、ときどき「小さな政府」論に反す
 る意見に接することがあるが、本当に稀である。今日、これら
 のケインズ主義的な意見は、カレーライスに例えるなら「福神
 漬」のような存在である。
         ──「経済コラムマガジン」(第246号)
        2002年3月25日 http://bit.ly/1hS6Dds
―――――――――――――――――――――――――――――
 「ケインジアンはカレーライスの福神漬」とはよくもいったり
ですが、2002年当時、さかんにテレビ出演を果たしていたリ
チャード・クー氏は、最近ではテレビからは完全に排除されてし
まっています。「排除の論理」が効いているのです。
 しかし、この「経済コラムマガジン」が書かれた2002年の
前年にはニューヨークで同時多発テロがあり、これによって世界
経済は急速に悪化しています。そのとき、米国はITバブルが崩
壊し、金利引き下げや減税で経済を支えていたのですが、そこに
テロが起こったのです。貯蓄率は一挙に跳ね上がり、FRBは緊
急利下げを決め、米政府は大型の財政政策を実施しています。何
のことはない。ケインズ政策を実施しているのです。同マガジン
の著者による強烈なニュー・クラシカル派批判です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 筆者はニュークラシカルの経済学にはまるっきり興味はない。
 こんなものは経済学以前の「ケイザイガク」と言うくらいの認
 識しかない。端的に言えば「子供の屁理屈」である。もしこの
 ような奇妙な経済学が少しでも有効としたなら、「蟹工船」や
 「女工哀史」、つまり小林多喜二時代の資本主義の社会であろ
 う。少なくとも世界が今日直面する経済問題の解決には何の役
 にもたたない。実際、米国政府始め、どの国の政府も彼等をま
 るで相手にしていないのである。筆者は、早晩このようなカル
 ト的な経済学は世の中から消え去ると思っている。
         ──「経済コラムマガジン」(第246号)
―――――――――――――――――――――――――――――
              ──[消費税増税を考える/60]

≪画像および関連情報≫
 ●同時多発テロとITバブル崩壊/小宮一慶氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  米国では1990年代後半にインターネット関連のベンチャ
  ー企業が次々に登場し、華々しい成長を遂げていました。こ
  れらは「ドットコム」企業と呼ばれてマーケットでもてはや
  され、1999年から2000年にかけて株価が急騰しまし
  た。なかでもネット関連銘柄が多いナスダック市場の盛り上
  りはすごくて、1996年には1000前後で推移していた
  株価指数が2000年3月には5000を超えました。この
  頃には「今後は大きな景気後退が起こりにくい」というよう
  な「ニューエコノミー論」もまことしやかにささやかれまし
  た。(一部略)ところが2001年に入ると、多くのドット
  コム企業が、実は売上も利益も伴わない会社だったというこ
  とが世間に知れるようになり、株価は急落し、バブルが弾け
  てしまいました。そして、2001年9月11日に、米国で
  同時多発テロが起きました。ご記憶の方も多いと思いますが
  テロの直後は株価が乱高下して、数日間はニューヨーク証券
  取引所が取引停止になるなど、金融市場は大混乱しました。
  けれども、その後のイラク戦争に伴う需要拡大などもあり、
  世界経済は中長期的には回復へと向かいました。日本経済へ
  の直接的なダメージも限定的でした。というより、日本経済
  は97年からの金融危機の処理に手一杯でそれどころではな
  かったと言ったほうがよいかもしれません。
                  http://nkbp.jp/1i75kJ6
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小泉・竹中政権.jpg
小泉・竹中政権
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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