2014年03月25日

●「日本経済新聞の政権への擦り寄り」(EJ第3756号)

 消費税増税1週間前の3月23日付、朝日新聞と日本経済新聞
の第1面トップ記事の見出しは、次のようになっています。
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 ◎朝日新聞/2014年3月23日付
  8%消費税、首相正念場/アベノミクスは株価で評価
 ◎日本経済新聞/2014年3月23日付
  消費増税「影響軽微」7割/なし・5%未満/反動減も楽観
  景気「9月ごろ復調」55%
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 朝日新聞の記事は、安倍首相は17年ぶりの増税を果して乗り
切れるか、第2次政権発足後、最も難しい局面を迎えて正念場で
あるというトーンで書かれています。そして、アベノミクスは株
価で評価されており、もし増税によって株価が下落すると、安倍
政権の支持率に影響すると書かれています。
 増税を決めたが、その景気への影響をどのように少なくするの
か、安倍政権の真価が問われるという記事であり、新聞論調とし
ては、違和感のない内容です。
 日本経済新聞の記事は、同新聞社が3月22日にまとめた「社
長100人アンケート」の結果を報道しています。社長100人
の氏名は、同紙の第7面に出ていますが、これを見ると、すべて
一流企業のトップばかりであることがわかります。
 さて、第1面のトップ記事は、「駆け込み需要の動向」と「増
税後の年間売上高への影響」の2つを伝えているのですが、そこ
で日経独特の不思議な計算をしているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪駆け込み需要の動向≫
  1.ほぼ想定通り         ・・ 39.9 %
  2.想定をやや下回る       ・・  2.0 %
  3.駆け込み需要は発生していない ・・ 25.7 %
  4.想定をやや上回っている    ・・ 10.8 %
  5.大幅に上回っている      ・・  1.4 %
 ≪増税後の年間売上高への影響≫
  5%未満+なし          ・・ 70.2 %
     ──2014年3月23日付/日本経済新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 「駆け込み需要の動向」についてですが、駆け込み需要があっ
たかなかったかを調べるのは「1+2+4+5=54.1 %」の
合計を求めるのが普通です。しかし記事によると、「1+2+3
=67.6 %」の合計を求めています。いったい何を調べたいの
でしょうか。記事の表現は次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 消費増税前の駆け込み需要が想定通りかそれを下回っていると
 の回答が全体の3分の2に達した。
       ──2014年3月23日付/日本経済新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 「増税後の年間売上高への影響」については、アンケート結果
の詳細を伏せて、「5%未満となし」の合計が70.2 %に達し
ていると報道しています。記事は次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 駆け込み需要や、増税後の反動減による年間売上高への影響は
 「5%未満」と「なし」の回答が合計で7割を超え、影響は軽
 微との見方が多い。
       ──2014年3月23日付/日本経済新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 要するに日本経済新聞としては「消費増税『影響軽微』7割」
という記事をトップ記事にしたかったのだと思います。安倍政権
を擁護するためです。
 本当に消費増税後の売上高の影響を調べたいのであれば、一流
企業100人の社長だけではなく、中小企業を含めた幅広い企業
経営者からアンケートを集めるべきです。しかも、その集計は実
に不可解であり、一度読んだだけではわからないのです。多くの
読者は見出しだけを見て、「増税の影響は軽微」だと思ってしま
うでしょう。明らかに世論を誘導しているのです。
 いつの頃からか、日本経済新聞は、現政権寄りの記事を書くよ
うになり、安倍政権ではそれが一層ひどくなっています。そうい
うことから、私は日経はとっていますが、政府の政策に関する記
事は一切信用しないことにしています。
 2014年3月13日のEJ第3749号で取り上げた日本経
済新聞の次の記事の見出し「消費増税7割超が容認」とその手法
はまったく同じです。それにしても「7割」が好きな新聞です。
―――――――――――――――――――――――――――――
    内閣支持率上昇、68%/消費増税7割超が容認
               http://bit.ly/1gaSmHm
―――――――――――――――――――――――――――――
 新聞報道には特色があってよいのです。米国ではウォールスト
リート・ジャーナルは保守的な報道をし、ニューヨーク・タイム
ズはリベラルな報道をすることで知られています。それに英国の
フィナンシャル・タイムズが加わって激しい競争をしているので
す。それでいて、彼らは権力とは距離を置き、偏らない報道姿勢
を貫いています。
 しかし、これに対して日本の報道機関はどうでしょうか。新聞
社とテレビ局が同系列の企業であり、世界に例を見ない記者クラ
ブ制度があって、権力と結びついているのです。民主党政権のと
きに記者クラブを壊そうとしましたが、猛反発を食って結局何も
できなかったのです。
 安倍首相は、NHKに会長や経営委員に自分の腹心を送り込み
他のメディアのトップとも飲食を共にするなど、マスコミには親
密な関係を築いています。日経の政権への好意的報道は、首相の
そういうメディアとのコンタクトが効いているのでしょうか。
              ──[消費税増税を考える/54]

≪画像および関連情報≫
 ●NHKは政権に擦り寄り、メディア幹部は首相と会食
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  NHKは今度の安倍首相の靖国参拝に関しても、ひたすら安
  倍氏の擁護に走り、彼の言い分だけを伝えるという態度を徹
  底しました。直接言葉で肯定したり持ち上げるということこ
  そしないものの、細心の配慮のもとに、報じることと報じな
  いことを峻別してさりげなく報じるので、何気なく視聴する
  人たちを「洗脳」する効果はその分大きいといえます。そし
  て安倍首相は12月、内閣支持率の低下と歩調を合わせるよ
  うに、マスメディア幹部との会食を増やしています。秘密保
  護法の強行や靖国神社参拝などで国民や多くのメディアから
  強い批判が起きるなかで、メディア対策に躍起になっている
  わけです。靖国神社参拝をした2013年12月26日夜に
  もANAインターコンチネンタルホテル東京内の日本料理店
  で報道各社の政治部長らと会食しました。16日にも山王パ
  ークタワー内の中国料理店でNHK解説委員、「読売」論説
  委員長、日本テレビ報道局長、時事通信解説委員、「毎日」
  専門編集委員、「朝日」政治部長らと会食したばかりです。
  その他にも当然メディア・トップスとも会食するなど、マス
  メディアのトップスや幹部との癒着ぶりは相変わらずです。
  しんぶん赤旗の二つの記事を紹介します。
                   http://bit.ly/1h9gL12
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2014年3月23日日経のトップ記事.jpg
2014年3月23日日経のトップ記事
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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