2014年03月19日

●「増税促進番組化する『日曜討論』」(EJ第3753号)

 2013年8月〜9月といえば、政府にとって消費税増税を決
断する直前であり、重要な月です。推測ですが、安倍首相は「8
%増税」は早くから決断をしており、メディアに対してその「地
ならし」を指示していたとみています。
 伊藤元重東京大学教授による日経「経済教室」への論文もその
地ならしの一環です。政府はこの数ヶ月に御用経済学者をはじめ
政府寄りの識者をフル動員して啓蒙活動を展開したのです。
 そういう2013年8月18日、次のメンバーでNHKの「日
曜討論」が行われています。
―――――――――――――――――――――――――――――
    ◎NHK「日曜討論」/2013年8月18日
           『徹底討論/どうする消費税』
   出演者:本田悦郎/井堀利宏/熊谷亮丸/山崎元
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 問題なのはその出演者です。そのときの出演者に増税反対論者
がひとりもいないことです。こういうことは、日本を代表する放
送局であるNHKが絶対にやってはならないことです。
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  増税積極的推進論者 ・・・ 井堀利宏氏/熊谷亮丸氏
  増税時期見直し論者 ・・・ 本田悦郎氏/山崎 元氏
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 井堀利宏氏は、東京大学大学院経済学研究科教授であり、財政
学の権威といわれています。伊藤元重氏と同じで、テレビなどで
は、政府寄りの発言をする日本を代表する学者の一人です。ちな
みに井堀氏を師と仰ぎ、消費税増税や日本財政に関するテーマで
よくテレビ出演をしている慶応義塾大学教授の土居丈朗氏も財務
省系の御用学者の一人です。
 熊谷亮丸氏は、日本の経済学者で、大和総研のチーフエコノミ
ストです。株式会社大和総研の理事長は、元財務事務次官の武藤
敏郎氏であり、そこのチーフエコノミストが増税に反対するはず
がありません。ちなみに、武藤氏は、2020年の東京五輪に向
けての大会組織委員会の事務総長にも就任しています。
 本田悦朗氏は、安倍首相の政策ブレーンの一人で、現在は静岡
県立大学国際関係学部教授です。しかし、本田氏はもともと大蔵
官僚で、2012年まで財務省大臣官房政策評価審議官を務めて
いた人物です。そういうわけで、増税には反対しないが、いきな
り上げると、経済的ショックが大き過ぎるので、毎年1%ずつ上
げて行くことを提案をした人物です。
 山崎元氏は、著名な経済評論家であり、楽天証券経済研究所客
員研究員や一橋大学商学部国際経営戦略研究科非常勤講師を務め
ています。消費税増税については必ずしも反対ではないが、当時
の経済状況はGDPの伸びは悪くないものの、好景気だとするの
は間違いだと指摘し、先送りを勧めています。消費増税を先送り
しても国債暴落のリスクはなく、引き上げるリスクのほうが大き
いと指摘して、もしどうしても増税するのであれば、本田悦朗氏
が提案する少しずつ税率を上げるのに賛成しています。
 熊谷亮丸氏は、消費税を増税することによって景気が腰折れす
るということは海外では何も指摘されていないといっています。
むしろ増税をすることで財政健全化が進むと考える人が増えるこ
とによって、社会に安心感が広がり、そのためかえって個人消費
は増加し、景気上昇につながるといっています。
 この熊谷氏の考え方は、2月14日のEJ第3730号でご紹
介したハーバード大学教授アルベルト・アレシナ教授の学説と非
常によく似た論説です。ある意味において、熊谷氏は明解な増税
推進論者であることが評価されたのか、増税問題でテレビ各局に
多数出演を果たしています。      http://bit.ly/LY9zfG
 問題は井堀利宏教授の発言です。NHKが8月に行った世論調
査では、消費税率を予定通り引き上げるべきかという質問に「実
施すべきである」と答えた人は26%、「実施すべきではない」
と答えた人が42%だったのですが、これに対して井堀教授は、
安倍首相が消費増税に対して控えめな発言をしたことから、国民
もそれに同調したのであり、世論調査などは質問のやり方次第で
結果はどうにでもなるのではないかといっているのです。
 確かに新聞社やテレビ局のやる世論調査は、特定の結論に誘導
するよう質問を調整することが可能です。それに加えて、依然と
して固定電話に昼の時間にかけるという調査のやり方にこだわっ
ています。この時間帯は電話に出るのは老人ばかり。とてもじゃ
ないが、民意を表しているとはいえないものです。なぜ、ネット
や携帯電話も利用しないのでしょうか。「世論調査の結論など、
どうにでもなる」との井堀発言は、世論調査の政府の誘導を認め
たような発言であり、語るに落ちるとはこのことです。
 元世界銀行エコノミストの中丸友一郎氏は、この座談会での井
堀教授の発言に対し、強い反論を展開しているので、EJでは今
回を含め3回にわたって、ご紹介することにします。
 井堀教授が「日曜討論」で主張した論点を整理すると、次の4
つになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.消費税率の引き上げは、日本の景気状況とは切り離して少
   しでも早く実施すべきである。
 2.もし増税で日本の景気が落ち込むようなことになれば金融
   緩和や財政政策で対応できる。
 3.消費税率引き上げは物価を押し上げるので、インフレ的で
   あり、デフレ脱却に寄与する。
 4.現時点での財政赤字の削減は将来の債務を抑制して、将来
   世代の若者の利益になる得る。
―――――――――――――――――――――――――――――
 いずれもテレビによく出演する東京大学教授の代表的発言であ
るといえます。明日のEJから、この井堀利宏氏の論点をひとつ
ずつ取り上げ、その反論を展開することにします。
              ──[消費税増税を考える/51]

≪画像および関連情報≫
 ●【上念司】消費税の偽情報
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  相変わらずマスコミは増税はもう決まったことだと思考停止
  の洗脳報道に余念がありません。安倍総理が増税については
  ずっと反対していて、増税阻止が既定路線になりつつあるこ
  とにたいして、増税派の焦りが見えてきました。増税派は連
  日、怪しげなジャーナリストやポンコツ学者(トンキン大学
  の井堀とか言う人)まで投入して、「○○さんも増税派に寝
  返った!」という偽情報を流しまくっています。正々堂々、
  政策の効果を検証して国益にかなうなら増税をやるべきだし
  そうでないならやめるべきという単純な話です。どうしてこ
  うやって議論を避けて嘘ばかり垂れ流すのでしょうか?これ
  は典型的なコミンテルン式の詐術です。「決まったことだ」
  ということを金科玉条のように振りかざして、議論をさせな
  い、喋らせないという共産主義国家にありがちな言論弾圧の
  一種だと決めつけていいと思います。
                   http://bit.ly/1e9911z
  ―――――――――――――――――――――――――――

NHK「日曜討論」出演者.jpg
NHK「日曜討論」出演者
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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