の教授です。テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト(WB
S)」などのコメンテーターとしての出演したり、日本経済新聞
や様々なビジネス誌や経済誌へ多くの寄稿を行っており、新聞や
テレビで何度も目にする機会の多い学者です。
政府関係の役職も多く、小渕内閣の「経済戦略会議」、森内閣
の「IT戦略会議」で委員を務め、現在は安倍内閣の経済財政諮
問会議の委員も務めています。
元世界銀行エコノミストの中丸友一郎氏は、安倍首相が8%増
税の決断をする直前の2013年9月4日所載の次の日経の「経
済教室」の記事について、痛烈に批判をしています。
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◎消費税増税の論点(下)
「金利暴騰リスク、より深刻/財政への信認維持を」
──2012年9月4日付、日本経済新聞『経済教室』
http://bit.ly/1iLuGB9
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中丸友一郎氏は、学者としての伊藤元重氏について、次のよう
に論評しています。
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伊藤教授は、これまでデフレ不況を許容し続け、日本経済を持
続的な成長軌道に復帰させることができなかった、というより
むしろ阻害してきたといってもいい。そのことが明白な同教授
を同諮問会議の議員、そして経済の司令塔の一人として安倍政
権が起用していることこそ、問題というべきかもしれない。同
政権の見識が疑われるというものだ。 ──中丸友一郎著
『円安恐慌がやってくる!』/徳間書店刊
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伊東氏の論文のエッセンスを要約してみます。彼は、消費税増
税の推進論者です。彼は、消費税増税を先送りしても、予定通り
実施しても、両方とも大きなリスクがあると主張しています。そ
れは次の2つのリスクです。
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◎増税を先送り ・・・・ 金利が暴騰するリスク
◎予定通り実施 ・・・・ 景気が失速するリスク
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伊藤元重氏は、そのうえでどちらのリスクがより深刻であるか
比較すべきであるといっています。
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このリスクの比較という点に、重要なポイントがある。リスク
と一言でいうが、リスクの「質」にまで踏み込んだ議論が必要
である。デフレ脱却の芽を潰すというリスクは、あらかじめそ
の可能性を認識していれば対応できるリスクである。これに対
して国債の金利暴騰ということになると、実際にそうしたこと
が起これば取り返しのつかないことになる。政府にも日銀にも
国債の暴落を止めることは簡単なことではないのだ。
──伊藤元重著/2014年9月4日の「経済教室」より
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伊藤氏は、消費税増税を先送りすると、国債の信認が低下する
ことによって国債価格は暴落し、金利は暴騰するとほとんど断定
しています。この主張は日銀の前総裁の白川方明氏とそっくりで
す。実はリーマンショック後の4年間というもの、国民はこの手
の理屈を何度も聞かされてきたのです。
これに対して中丸友一郎氏は、金利の暴騰など起こり得ないと
し、消費税増税を先送りした場合には逆に景気回復が持続すると
次のように述べています。
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増税を先送りすれば、積極的な財政政策と金融緩和策のもとで
景気回復が持続する可能性がある。名目GDPも今後4〜5%
程度成長できるかもしれない。その結果、かなりの政府歳入の
伸びが期待される。財政赤字はほぼ確実に好転するだろう。で
あれば、国債(本来は政府債)金利が暴騰することなどまずあ
り得ない。なぜなら、財政収支の好転を背景に、国債のリスク
プレミアムが大きく低下するからだ。
──中丸友一郎著の前掲書より
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伊藤元重氏が心配するのは膨大な政府債務の存在です。しかし
それにもかかわらず、国債金利は非常に低い水準で推移していま
す。どうしてこういう現象が起きているかについて、伊藤氏は次
のような主張を展開します。
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膨大な公的債務の存在は深刻な問題である。それにもかかわら
ず、国債金利は非常に低い水準で推移している。これは市場が
当面の財政危機のリスクを非常に低くみているからだ。(一部
略)しかしこの「低い」確率というのがくせ者だ。確率が「ゼ
ロ」でないからだ。確率が非常に低いので、その可能性につい
て多くの人が真剣に考えないが、いざそのリスクが顕在化した
ら大変なことになる。これをテールリスクと呼ぶ人もいる。世
界的なベストセラーとなったナシーム・ニコラス・タレブ氏の
著書「ブラック・スワン」は、この現象の重要性を指摘したも
のだ。 ──伊藤元重著/「経済教室」より
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伊藤氏は「国債金利は異常に低い」ことをブラックスワンに譬
えています。黒い白鳥なんて計算するのも馬鹿らしいぐらい低い
確率でしか出現しないものですが、もし一羽でも出現すると「白
鳥は白い」というパラダイムを破壊して、歴史を変えてしまうと
いうことをいっているのです。伊藤氏はこういいたいのです。国
債金利が低いといって安心していると、とんでもないことが起こ
ってしまうよ、と。この問題については、明日のEJでも引き続
き検討します。 ──[消費税増税を考える/49]
≪画像および関連情報≫
●御用学者(伊藤元重)の増税論を一蹴する
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『消費税引き上げというと、すぐに震災後のこの厳しい状況
で増税なんてとんでもない、という議論が出てくる。こうし
た議論をする人は、パブロフの犬のごとく、「増税→景気悪
化」という条件反射の世界にいる。なぜ消費税を引き上げた
ら景気が悪くなるのか、そのメカニズムについて深く考えて
いるのだろうか。消費税増税によって、3年間で累計20兆
円前後税金をとったとしても、それはすべて復興資金として
利用するものである。増税で人々の支出が多少は減少するか
もしれないが、税収が歳出にまわされる金額の方がはるかに
大きい。復興のために増税するのだから、その税収はインフ
ラ再建、住宅建設、被災者支援など、すべて需要となるはず
だ。理論的には、20兆円増税で20兆円公的支出を増やせ
ば、有効需要は20兆円増えるはずである』。
「消費税 政争の具にするな」と題する、伊藤元重氏の論
であるが、増税以外で、復興財源と社会福祉の財源を思いつ
かないとは、あきれるしかない。しかも、「東京大学大学院
教授」の肩書きはブランド力がある。その影響力を思うと、
あきれるのを通り越して、憤りさえ覚える。東大大学院教授
ともあろう人が、いや、だからこそなおさらともいえるが、
国富を増大させる気概も、智慧も、企業家精神も、持ち合わ
せていないと見える。そして、それこそ「パブロフ犬」のご
とくに、復興と社会福祉のためには、増税しかないと吠え続
けるのである。 http://bit.ly/1glsU23
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伊藤 元重東京大学教授