民党の総務会で了承されたのです。根回し不足として保留になっ
ていた計画案の了承です。
この実行計画というのは、医療研究の司令塔になる「日本版N
IH」の設立法案や、電力小売りを自由化する電気事業法改正案
など約30本の法案を今国会に提出する内容になっています。こ
れで自民党として、今国会で国家戦略特区法に基づく政策の法的
措置を講ずることになります。
問題は国家戦略特区法なのです。竹中平蔵氏は本気で日本とい
う国を変えようとしています。それは多くの日本人にとっては好
ましい方向ではない改革になる恐れがあります。
安倍首相と竹中平蔵氏は、小泉政権のとき、官房長官と経財担
当相という立場で、銀行の不良債権処理や経済・財政の立て直し
政策に取り組んできているので、気心が知れている仲です。その
さい、安倍氏は竹中氏の考え方に相当感化されているはずです。
したがって、安倍首相は、第2次安倍内閣では、竹中氏を経済
財政諮問会議のメンバーにしようとしたのですが、麻生財務相の
反対で果たせなかったのです。麻生氏は「彼とは顔を合わせるの
も嫌だ」といって拒否したといわれます。
そういうわけで竹中氏は、産業競争力会議のメンバーにならざ
るを得なかったのですが、そこで規制改革を推し進めるとともに
そのための政治装置ともいうべき国家戦略特区法を昨年末に成立
させています。その国家戦略特区法において竹中氏は、ある仕掛
けを施しています。それによって、経済財政諮問会議のメンバー
になれなかったリベンジを果そうとしているようにみえます。
国家戦略特区法によって内閣府には「特区諮問会議」が設置さ
れることになっています。問題なのは、この会議が経済財政諮問
会議と同格の位置づけになっていることです。竹中氏は当然その
メンバーに収まっています。ジャーナリストの佐々木実氏は、こ
れについて次のように述べています。
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特区諮問会議の設置を主導してきたのは竹中氏です。麻生太郎
副総理らの反対で経済財政諮問会議のメンバーになれなかった
竹中氏は、産業競争力会議のメンバーになって、特区構想を推
し進めてきた。そのうえで、特区の法制化の段階で、特区諮問
会議と同格にして、自分がメンバーになったのです。
──2014年1月21日発行/日刊ゲンダイ
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この特区諮問会議には大きな問題点があります。その会議のメ
ンバー(諮問会議議員)と出席大臣には次の条件が設けられてい
るからです。
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諮問会議議員:構造改革の推進による産業の国際競争力に関し
優れた見識を有する者
会議出席大臣:首相が指定する国務大臣
──2014年1月21日発行/日刊ゲンダイ
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まず、諮問会議議員はこの条件によって、構造改革反対派はメ
ンバーになれないことです。そして、大臣も首相が任命するので
反対する大臣は外されます。構造改革推進派だけの議論になって
しまうので、何でも決まってしまうことになります。
昨年「解雇特区」でもめたときに、最終的には厚労相が憲法に
抵触するとして反対し、実現しなかったのです。今回は反対する
大臣は確実にメンバーから外されてしまいます。こんなとんでも
ない法律がその内容が十分吟味されないまま、国民の知らないと
ころで、安倍政権の強行採決によって決まっているのです。
経済評論家の渡邊哲也氏は、世の中には、「作る人」と「売る
人」の2つにわけることができ、日本では「売る人」ばかりが優
先されてきたことを指摘しています。流通業界が寡占化すること
で、メーカーが苦しみ、それがデフレを加速させる要因になって
いるともいっています。そして同じことが産業競争力会議という
狭い世界でも起きているとして、この会議のやっていることに対
し、次のように強い批判を展開しています。
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産業競争力会議のメンバーのバックグラウンドを、昔の産業名
に読み替えてみると、彼らの正体がよくわかる。人材紹介会社
パソナ会長の竹中平蔵氏は、口入れ業である。楽天などは口銭
取り以外の何ものでもない。お祭りのときにテキ屋の親分がテ
キ屋を集めてきて、縄張りに店を出させるかわりに場所代を取
るのと一緒。要はインターネット・テキ屋である。それが「新
しい産業」と言えるだろうか。しかもこうした「声の大きい」
人たちは、モノづくり企業ではない。彼らの主張にばかり沿っ
た計画を立てても、まともな国づくりができるとは思えない。
かつての「士農工商」ではないが、商人よりも、職人や農家と
いった生産者のことを、もっと考えのベースに置かないと、国
家を支えるインフラは強く豊かなものにはならない。このこと
をもう一度強く思い出すべきだろう。
──渡邊哲也著/徳間書店
『これから日本と世界経済に起こる7つの大激変』
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渡邊哲也氏は「クールジャパン機構」にしても、「作る人」が
置き去りにされているといいます。クール・ジャパンとは、ジャ
パン・ブランドを海外に売り込むための官民ファンドですが、商
社や流通など売る側の人間ばかりがクローズアップされ、実際に
アニメや漫画を作っている人間が置き去りにされているといいま
す。渡邊氏はこれが成長戦略最大の問題であるというのです。
「作る」人が安心して仕事ができる環境を作り、暮らしていけ
る基盤を作るのが国として政治家がやるべき仕事なのです。売る
人はとくに専門性の必要はなく、外資がそれにとってかわること
が可能な分野なのです。 ── [消費税増税を考える/16]
≪画像および関連情報≫
●産業競争力強化法案は「劇薬」となるのか?
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「産業競争力強化法の中心に据えられている規制緩和は、積
極的事業展開を目指す企業の足かせを外すことで、産業の成
長を加速化します。しかし反面、規制によって守られていた
消費者や労働者などに対する保護が弱くなり、これまで以上
に自己責任が強調される社会になってしまう可能性がありま
す」──舛田弁護士はこう指摘する。産業が成長するという
メリットの反面、消費者・労働者保護という観点からは、そ
れがマイナスに働く場面も出てくるようだ。「また、この法
律は、競争力の低下している事業分野においては、企業再編
や事業からの撤退を促すことも目的としています。そのため
それらの事業分野に従事している人たちが廃業や転職を迫ら
れることになるという、痛みを伴う改革でもあります」。そ
うなると、競争力が低い分野では、廃業や転職を余儀なくさ
れる人が出てくることになるだろう。政府の方向性に、問題
はないのだろうか。「国家における限られた人的・物的資源
を、停滞している事業分野から成長が見込める事業分野にシ
フトするよう誘導し、国全体の競争力を強化するという方向
性は間違っていないと考えています。ただし、やり方を誤る
と、格差拡大などの副作用を招く恐れのある『劇薬』になり
かねないということも認識しておく必要があるでしょう」。
http://huff.to/1ivYsJ2
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渡邊 哲也氏の本