ると、次のようになります。
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第1の矢 ・・・・・ 金融政策
第2の矢 ・・・・・ 財政政策
第3の矢 ・・・・・ 成長戦略
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問題は、第3の矢の「成長戦略」なのです。これは、産業競争
力会議が策定しているのですが、ここに竹中平蔵氏の影響が強く
及んでいるのです。
経済評論家の植草一秀氏によると、経済政策の基本は、金融政
策と財政政策と構造改革の3つであり、アベノミクスの第3の矢
である成長戦略は「構造改革」に該当します。構造改革とは、制
度の変更、規制の撤廃といった中長期の成長をもたらすための各
種制度変更策を指しています。
さて、アベノミクスの成長戦略ですが、植草氏によると、そこ
には次の5つが含まれているのです。
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1.農業の自由化
2.医療の自由化
3.解雇の自由化
4.経済特区創設
5.法人税の減税
──植草一秀著
『日本経済撃墜/恐怖の政策逆噴射』/ビジネス社刊
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このように整理すると、安倍政権がやろうとしていることがよ
くわかると思います。「農業の自由化」や「医療の自由化」は、
TPP交渉によって実施しようとしている課題です。「経済特区
創設」は、昨年末に国家戦略特区法が与党の強行採決で成立して
おり、既にその実行計画も策定されていて、総務会に提出されて
います。もし、成立すると、その特区において「解雇の自由化」
などが実現する可能性があります。
そして「法人税減税」は、安倍首相が1月22日(日本時間)
にスイスのダボス会議において国際公約化しようとして発言して
います。今や安倍政権は、成長戦略(構造改革)にシャカリキな
のです。何が狙いなのかというと、安倍首相はとにかく株価を上
昇させ、「経済が回復した」と訴えることが支持率を上昇させる
かぎになると考えているからです。
しかし、経済が成長すると、果たして国民は幸せになれるので
しょうか。これは大いに疑問です。これについて、植草一秀氏は
次のように安倍政権のやり方を批判しています。
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成長戦略として安倍政権が掲げているものは、中期的に重大な
弊害を伴うものである。安倍政権は成長重視であり、日本のG
DP成長率を引き上げることを是としている。確かに全体とし
て日本経済の効率が高まるとしても、それがすべての国民の幸
福につながるとは限らない点に問題がある。株価への影響だけ
を考えるのであれば、資本に優しく労働に厳しい政策は、短期
的には株価にプラスに作用する。資本と労働は、経済活動の成
果として生まれた所得を分かち合う、あるいは奪い合う関係に
ある。資本の取り分を増やすことは、すなわち労働の取り分を
減らすことを意味する。経済活動の成果であるパイを拡大させ
そのパイの拡大を資本も労働も共に享受できるのならば、それ
が望ましい姿であるが、現在安倍政権が進めている政策は、そ
うではなく、資本の取り分を増やすが、労働の取り分は減らす
傾向の強いものである。 ──植草一秀著の前掲書より
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これは、間違いなく新自由主義の発想に基づく政策です。した
がって、「第3の矢は新自由主義に染まっている」というのは、
こういうことを指していっているのです。
いま東京都知事選に挑戦している細川護煕元首相は、その出馬
に当たっての記者会見で次のように述べています。
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今の国の目指している方向、その進め方に何か危ういものを感
じる。成長がすべてを解決するという傲慢な資本主義から幸せ
は生まれない。原発がなくても日本は発展していけると信じて
いる人々の先頭に立って闘う。 ──細川護煕元首相
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「成長がすべてを解決するという傲慢な資本主義」とは、アベ
ノミクスの基本的な考え方を意味しています。この考え方に立っ
ているから、原発が必要だということになるのです。そもそも法
人税を大幅に下げ、日本のインフラを激安で売り渡すような国家
戦略特区を作ってまで、なぜ海外投資家やグローバル企業などを
日本に呼び込む必要があるのだろうか。経済評論家の渡邊哲也氏
はその政策に、次のように疑問を呈しています。
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忘れてはいけない。日本は世界一の金主なのである。GDPの
8割以上を内需が占め、国富は3000兆円以上あるという国
である。これほど豊かな国が、なぜ海外からの資金に頼らなく
てはいけないのか。また世界最高水準の技術を持つ国である日
本がなぜ海外からの技術に頼らないといけないのか。(中略)
日本には十分なお金がある。わざわざ海外から資金を呼び込ま
なくても、日本人のお金を使えばよいのである。もし、海外に
投資しているお金があるのだとしたら、それを日本企業への投
資に回せばよい。それで何の問題があるのだろうか。
──渡邊哲也著/徳間書店
『これから日本と世界経済に起こる7つの大激変』
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── [消費税増税を考える/15]
≪画像および関連情報≫
●安倍成長戦略が打ち出す“規制緩和”の恐ろしい側面
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アベノミクスは第1の矢が「異次元の金融緩和」、そして第
2の矢が「公共事業への財政支出」であるが、それに続く第
3の矢として、仰々しく打ち出されているのが「安倍成長戦
略」である。各ジャンルにわたる成長戦略を、数値目標を上
げて説明する賛成派はいるが、その前に成長戦略自体が何で
あるのかという、基本的な部分を政府が国民に周知させてい
るとは到底思えない。それどころか肝心な部分をはぐらかし
たまま、いきなり規制緩和至上主義に踏み込んでいる。ここ
にこの政権が体現する暴政が、特定秘密保護法だけではない
という話になってくる。安倍政権が唱える規制緩和万能論に
は何が抜けているのだろうか。それは「規制緩和」の出力が
どこをめがけているのかという部分である。簡単に言えば、
彼らがやろうとする規制緩和が企業のためなのか、国民のた
めなのかという単純な話に行きつく。おかしいとは思わない
だろうか。弱者保護や、公益性を保証するために設けられた
様々な規制が、時代のニーズや社会に合わなくなって内容を
変える場合、その変更によっは、現在の弱者層の保護機能が
残るのか、あるいは公益性などがきちんと担保されるのかな
ど、基本的な部分を慎重に配慮しなければならないはずであ
る。ましてや安倍成長戦略で行う規制緩和の目的は時代の二
ーズではなく、企業のニーズオンリーなのである。これがど
れほど異常なことか分るだろうか。 http://bit.ly/1e0zWfL
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ダボス会議で演説する安倍首相