2007年04月13日

パソコン通信が中心のMSN(EJ第2060号)

 日本最初のパソコン通信会社/ニフティ・サーブは、2006
年3月31日まで続いたのです。実に19年間――インターネッ
トが普及するなか、よく続いたものです。
 これに対して、マイクロソフト社のMSN(マイクロソフト・
ネットワーク)は、1995年にパソコン通信会社としてスター
トしたものの、次の年の1996年にパソコン通信を中止しイン
ターネット・サービス・プロバイダ(ISP)としてスタートし
ています。あまりにも対照的です。
 MSNの場合、明らかに方針転換なのです。つまり、マイクロ
ソフト社は、ウインドウズ95を発売する時点ではインターネッ
トはあまり念頭になく、パソコン通信事業を継続していくつもり
だったということです。
 1996年1月に私がウインドウズ95について書いた本があ
ります。当時日本のビジネスパーソンの間ではパソコン通信がか
なり普及していたのです。この本のなかでMSNについて書いた
部分があるので、以下に引用します。その当時マイクロソフト社
がMSNについてどのように考えていたかわかるからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ウインドウス95の波紋として、もうひとつ見逃せないもの
 があります。それは、ウインドウズ95の発売と同時にサービ
 ス開始したパソコン通信事業、MSN(マイクロソフト・ネッ
 トワーク)です。
  第1は、MSNはGUI(グラフィカル・ユーザ・インター
 フェイス)を前提としたサービスであり、従来のパソコン通信
 のイメージを破っていることです。(一部略)
  第2は、MSNにはウインドウズ95に標準で装備されてい
 る専用の通信ソフトウェアしかアクセスできないことです。こ
 の通信ソフトはウインドウズ95と操作性が統合されており、
 ウインドウズ95に標準でついています。MSNへのアクセス
 はこの通信ソフトがないとできないのです。(一部略)
  第3は、MSNはごく簡単な操作でアクセスでき、インター
 ネットにも簡単に接続できるということです。
  ウインドウズ95のユーザは、まるでハードディスクのなか
 をのぞく気軽さでMSNにアクセスできます。そして、簡単な
 登録手続きでMSNのサービスを利用できます。まさに、ウイ
 ンドウズ95の拡張機能なのです。どこまでが、ウインドウズ
 95でどれがMSNなのかわからないユーザも多いはずです。
 ――平野浩著、『ウインドウズ95パソコンらくらく修得法』
               KOSAIDO BOOKS/廣済堂出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、結果としてこのやり方は成功していないのです。当時
世界一のパソコン通信会社AOL社から独占禁止法(反トラスト
法)訴訟を起こされ、以後長期間にわたってマイクロソフト社に
とって重い足かせになったからです。
 上記文中に「MSNはごく簡単な操作でアクセスでき、インタ
ーネットにも簡単に接続できる」というところがあります。これ
を見ると、明らかにパソコン通信が中心で、インターネットはそ
の他的扱いになっています。
 この傾向は、ウインドウズ95の発売の時点で、WWWにアク
セスするブラウザ――インターネット・エクスプローラは標準装
備されていなかったことでもみられることです。それほど、マイ
クロソフト社はインターネットに無関心であったのです。
 なぜ、マイクロソフト社は、その時点でも怒涛のように襲いか
かりつつあったインターネットの波に、十分対処しなかったので
しょうか。
 最大の原因は、マイクロソフト社の総帥であるビル・ゲイツ自
身がインターネットに無関心だったからです。これについて、東
京電機大学の脇英世教授が面白いことをいっておられます。ビル
・ゲイツは、インターネットはゴールドラッシュであると考えて
いたというのです。だから、出遅れた、と。
 ゴールドラッシュで一攫千金の夢を果たした金鉱掘りはほとん
どいなくて、結局儲けたのは全米から集まった人々に食料などの
生活必需品を売った人々といわれているのです。ビル・ゲイツが
とりわけ好きなのは、ゴールドラッシュの3年後に食料品を売り
はじめ、20年後にリーバイのジーンズを売って財をなしたドイ
ツ移民のリーバイ・シュトラウスなのです。
 したがって、ゴールドラッシュのようなインターネットに手を
出さず、まっとうな仕事に精を出すべきだと考えたのです。その
まっとうな仕事というのが、パソコン通信事業だったというわけ
です。しかし、それは結果として間違えていたのです。
 もうひとついえることは、マイクロソフト社はインターネット
の技術に弱いことがあげられます。これについては、次回に詳し
く述べますが、ビル・ゲイツは密かにこのことに不安を持ってい
たのではないかと思われます。それは、ビル・ゲイツ自身の伝記
に出ている次の文章からもそれとわかります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは考えると恐ろしいことだが、コンピュータ技術の進展の
 なかで、ある時期の業界リーダーは、けっして次の時期のリー
 ダーになれなかったという事実もある。マイクロソフトは「パ
 ソコン期」のリーダーだった。ということは、歴史的見地から
 すれば、情報時代の「ハイウェー期」のリーダーとしてはマイ
 クロソフトは不適格なのかもしれない。わたしはそのジンクス
 に挑戦したい。             ――ビル・ゲイツ
       ――西 和彦著、『ビルゲイツ未来を語る』より
                      アスキー出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、インターネットに乗り遅れる危機には、ビル・ゲイツ
は見事な采配によって乗り切っています。ところがウェブ2.0
時代の現代、次のニューウェーブにマイクロソフト社は乗り切れ
ないでいます。 −― [インターネットの歴史 Part2/26]


≪画像および関連情報≫
 ・MSNとは
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ウインドウズ95の発売と共にサービスを開始した。当初は
  いわゆるパソコン通信的なサービスであり、マイクロソフト
  は、当時関心の高まっていたインターネットには否定的だっ
  た。しかしユーザーにおけるインターネットへの関心が無視
  できないとわかると、急遽路線を変更してインターネットの
  接続サービスに転換、さらに情報系コンテンツを充実させ、
  MSNをインターネットのポータルサイトへと位置付けた。
  現在は日本をはじめ接続サービスからは撤退している国が多
  い。                ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

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posted by 平野 浩 at 05:03| Comment(0) | TrackBack(2) | インターネットの歴史 Part2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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