2014年01月10日

●「借金千兆円に対応する資産がある」(EJ第3707号)

 今回の消費税増税を国民に聞くと、「増税は嫌だが、政府が莫
大な借金を抱えているなら、仕方がない」という人が少なからず
います。また、年金生活者では「増税分がすべて社会保障に回る
ならしょうがない」という人がいます。実は政府のいっているこ
とはどちらもウソです。財務省のプロパガンダによって国民は洗
脳されているのです。つまり、「国の莫大な借金」も「全額社会
保障費に回す」も真実ではないことを意味しています。
 しかし、記者クラブ所属の大新聞やテレビに常時出演している
経済評論家やコメンテーター、経済学者はいずれも財務省のいっ
ていることに対して肯定的な発言しかしませんから、国民は自然
にそうなんだと思い込んでしまうのです。いわゆる「刷り込み」
が国民に浸透してしまっているのです。
 何が何でも増税をやり遂げたい財務省の立場に立って考えてみ
ましょう。彼らにとって、大新聞や政治問題を扱うテレビ番組に
出演する識者が増税に関して反対する発言や論説を発表する影響
力はけっして小さくはないのです。しかも、継続的にそれをやら
れると、ダメージはかなり大きくなります。
 だから「番組から外してしまえ!」という結論になるのです。
財務省は新聞やテレビ局に対して広告ひとつとっても、絶大な権
力を持っているのです。「外さないと、広告からお宅を外すよ」
とでもいわれれば、ひとたまりもないでしょう。しかし、すぐは
外さない。少しずつ出演回数を減らして行き、最後は完全に外し
てしまう。そして、そういう識者は以後絶対に番組には復帰させ
ないのです。このようにして外された識者は数多くいます。
 「デイリー・オリーブ・ニュース」という日刊メールマガジン
があります。その「特集コラム」を担当する徳山勝氏の評論はい
つも参考にさせていただいていますが、2014年1月5日号の
徳山氏の「首相年頭所感」の冒頭に次の記述があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
  元旦夜のテレビドラマ「相棒」を視た。その中で警視庁公安
 部長が取調室で、殺人未遂と殺人教唆の罪で問い詰められて吐
 いた台詞(せりふ)がある。録画をしなかったので正確な台詞
 を再現できないが、おおよそ次のような趣旨のことを述べた。
 生活保護費を減らし、その分を国家の安全を守るエリートたち
 の処遇を厚くするために使う。そのために情報を改竄した。そ
 れのどこが悪いのだ、と。
  たかがテレビドラマの一台詞である。それがどうしたと思う
 だろう。だが今のテレビ局では一部の脚本家とかディレクター
 がドラマの中で、こういう形でしか権力を批判することしかで
 きなくなったのではないだろうか。何故、そう言うか。それは
 ジャーナリストとして、権力を批判していた鳥越俊太郎さんや
 江川紹子さんなどに次いで、作家の室井佑月さんまでが、6ヶ
 月前にテレビ番組を降板させられたからである。
  その室井さんが、週刊朝日のコラムに、「近頃、本の出版依
 頼がこなくなった」と書いている。思い当たることとして、福
 島第一原発事故以来、マスコミをだらしなく思い、マスコミ批
 判を続けてきたことを挙げている。フリージャーナリストから
 は、テレビという発言の場を奪い、作家からは作品発表の場を
 奪う。これが今、権力が行なっている「表現の自由」「言論の
 自由」への圧迫ではないかと思うからだ。   ──徳山勝氏
 ──「デイリー・オリーブ・ニュース」/2014年1月5日
―――――――――――――――――――――――――――――
 政府にとって都合のよいことしか伝えない──大メディアでこ
ういうことが行われると、国民へは少しずつ刷り込みが行われ、
多くの国民が政府によって洗脳されてしまうことになります。
 日本の財政にとって消費税増税が必要であることの根拠として
日本の政府債務が1000兆円あるということがあります。これ
は確かに「莫大な借金」であり、その表現自体は正しいのです。
しかし、借金はあくまで資産との対比でみる必要があります。借
金の額の大きさだけでは何もいえないのです。
 植草一秀氏は、近著で日本の1000兆円の借金について次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本政府の資産と負債の現況は、内閣府が公表している国民計
 算統計で確認できる。現在、2011年末の数字まで確認でき
 る。この数値を見ると確かに日本の一般政府の債務は1000
 兆円をわずかに超えている。日本のGDPが、500兆円を下
 回っている。したがって日本政府の債務残高はGDP比の2倍
 を超えている。諸外国と比べても、日本の財政状況が突出して
 悪いということを示す数値として、これがいつも用いられてい
 る。ところが、この統計の資産の側を見ると、実は日本政府の
 資産も1000兆円を超えている。2011年末になって初め
 て負債が資産をやや上回ったが、両者はほぼ同水準である。政
 府債務1000兆円というが、資産を差し引くとほぼプラスマ
 イナス0である。米国の財務省が発表している米国連邦政府の
 バランスシート統計によると、米国連邦政府の資産負債状況で
 は、負債が資産を1400兆円程度上回っているのである。つ
 まり米国政府は債務超過の規模が1400兆円ということなの
 である。                 ──植草一秀著
     『日本経済撃墜/恐怖の政策逆噴射』/ビジネス社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 個人であれ、国であれ、借金は返済しなければなりませんが、
国は個人とは事情が違うのです。個人が銀行でローンを組む場合
その返済期限はその人の収入のある期間に限定されます。
 しかし、国の場合はどうでしょう。国は永遠に存続するという
前提に立っているので、どんな長期ローンだって組むことができ
るのです。100年ローンでも、500年ローンでも、1000
年ローンでも返済が継続できるのであれば、超長期ローンを組む
ことは可能なのです。ここが個人とは全然違うのです。一緒に論
ずるべきではないのです。 ── [消費税増税を考える/05]

≪画像および関連情報≫
 ●借金1000兆円は誇大表現!/元大蔵官僚内幕暴露
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  安倍晋三首相が来年4月に消費税率を予定通り8%に引き上
  げる方針を固めたと相次いで報じられた。財政再建や社会保
  障のために増税やむなしとのムードが強まっているが、これ
  に待ったをかける元大蔵官僚がいる。財務省が旧大蔵省時代
  に始めた増税キャンペーンの内幕を暴露し、「国の借金が、
  1000兆円というのは過大な表現だ」と訴える。消費税を
  めぐっては国際通貨基金(IMF)も13日に20カ国・地
  域(G20)首脳会合に提出した報告書で、消費税増税など
  財政健全化の取り組みを加速するよう訴えた。IMFは日本
  の財政問題や増税の必要性について言及することが多いが、
  その裏側を告発するのは、大蔵官僚から衆院議員を務め、現
  在は東北福祉大特任教授の宮本一三氏(82)。1966年
  から6年間、大蔵省からIMFに出向した宮本氏は「当時の
  対日勧告文は私が作成していた」と語る。その内容について
  「大蔵省の局長から直接命じられることはなかったが、意向
  は配慮していた」。現状についても「財務省の意見はIMF
  にも反映されているだろう」とみる。財務省はウェブサイト
  上で「国の財政は大赤字」「日本は厳しい財政状況」と強調
  するが、宮本氏は渡辺美智雄蔵相の大臣官房審議官当時「財
  政危機」キャンペーンの基本政策を作った張本人でもあると
  いう。              http://bit.ly/1ibTyOu
  ―――――――――――――――――――――――――――

植草一秀著『日本経済撃墜』.jpg
植草 一秀著『日本経済撃墜』
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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