税を現行の5%から8%にすることを決めましたが、それについ
て、FNN(フジニュースネットワーク)の世論調査によると、
国民の反応は次の通りです。
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支持する ・・・・・ 51.0 %
支持しない ・・・・・ 43.7 %
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メディアの世論調査など信用できませんが、一応支持する国民
の方が多くなっています。支持する国民に意見を聞くと、「増税
はいやだが、国にお金がないのじゃ仕方がない」とか、「すべて
を社会保障に回すならいいんじゃないか」という意見がほとんど
です。日本人は大変物わかりのよい国民だと思います。
しかし、この政策は間違っているのです。財政を健全化すると
いうことは、一般的には、財政赤字を減らして財政を黒字化する
ことであると考えられていますが、その国の経済の状況によって
財政健全化の政策はそれぞれ違ってくるのです。
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経済がデフレ下にあるとき ・・・ 財政赤字を増やすこと
経済がインフレであるとき ・・・ 財政黒字を増やすこと
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現在、日本人は日本の財政は最悪で、早急な財政健全化が必要
であると思っています。それは、税収以上に政府支出が多く、そ
れを埋めるため、毎年国債を発行しているので、そういう政府債
務が巨額に達していることをメディアを通していやというほど刷
り込まれているからです。
国債といえば政府の借金であり、それは少なければ少ないほど
よいに決まっていますが、世界中に財政赤字のない国なんかない
のです。世界には193の国があります。これらの国の財政収支
を合計すると、大幅な赤字になるのです。
したがって、政府債務が巨額であるからといって、日本国民が
心配することはないのです。まして、日本は世界最大の債権国の
地位を2012年度現在、22年連続で維持しているのです。と
ころが日本人の多くは、日本は世界一の借金国であることは知っ
ているものの、日本が世界最大の債権国であることは知らない人
が多いのです。これもマスコミの報道のせいです。
それはマスコミというより、正確にいえば、それを動かしてい
る官僚機構がそうさせているのです。なぜでしょうか。政府の借
金が多いことを強調しておく方が、増税しやすいからです。
上記の「財政赤字を増やす政策」とは、中央銀行が積極的な通
貨発行(金融緩和)を行い、政府は財政出動を続けることです。
これによってなんとか経済をデフレから脱却させる──これが最
終の目的です。これについては、現在の安部政権が「アベノミク
ス」として取り組んでいます。
これに対して「財政黒字を増やす政策」とは、増税または新税
を創出することです。インフレが過熱して暴走しないように一時
的に財政を冷やすために増税が必要なのです。
インフレになると、供給が不足し、需要が過多になりますから
そういう時期に政府まで支出を増やすと需要が膨らんでしまいま
す。とくにインフレ率が高いときには、政府はもとより、民間の
支出を抑える必要があるのです。
そのために中央銀行は金利を引き上げ、政府は増税によって民
間の支出、すなわち需要を抑える必要があるのです。増税はそう
いうときに行われるべきです。そうすると、財政は黒字化し、健
全化してきます。つまり、このようなインフレ対策をとると、自
然に財政黒字が増えるのです。
このように、一般的には「赤字=悪/黒字=善」というイメー
ジがあるので、財政健全化というと、財政を黒字化することであ
ると考えてしまうのです。その結果、下手をすると真逆の政策を
とってしまうのです。
思えば、民主党政権時代において、デフレであるにもかかわら
ず、白川日銀総は金融緩和を躊躇し、政府は国債発行に上限を設
けてを発行を抑制し、公共事業を削減するなどの間違った経済政
策を実施してデフレを一層悪化させています。
加えて、菅政権と野田政権は、財務省に完全に洗脳され、消費
税増税に異常にこだわり、自民党や公明党と一体になって「社会
保障と税の一体改革」という名の消費税大増税をスケジュール化
させています。これなどは、完全に経済政策としては間違ってい
るのですが、当事者たちはまだ分かっていないようです。
政権を取り戻した安倍政権のアベノミクスは、その逆のことを
やっただけのことです。日銀総裁を黒田総裁に交代させ、異次元
の金融緩和を継続実施することによって通貨量を増やし、長期国
債の多額購入を長期的に継続することによって、インフレ率を上
昇させ、2年間をめどに物価の上昇を図るのです。この金融政策
がアベノミクスの「第1の矢」と呼ばれるものです。
以上の日銀の政策に加えて、政府は国債を発行して公共事業を
増加させることによる財政政策を実施します。これは13兆円の
補正予算で具体的に示されています。この財政政策はアベノミク
スの「第2の矢」と呼ばれています。
さらに、経済を安定的な成長の波に乗せる「成長戦略」を展開
させ、雇用を増やすことが求められていますが、その成長戦略に
ついては、これはというものが出てきていない状況です。これが
アベノミクスの「第3の矢」と呼ばれています。
これら、第1の矢と第2の矢は、両方とも「財政赤字を増やす
政策」であり、経済がデフレの状況にある経済政策として正しい
といえます。
しかし、そうであるなら、2013年10月1日に安倍首相は
なぜ消費税増税8%の実施を決断したのでしょうか。これは「財
政黒字を増やす政策」であり、経済をデフレから脱却させる政策
ではないのです。 ── [消費税増税を考える/03]
≪画像および関連情報≫
●菅直人政権のときのあるブログの随想
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日本の財政赤字は改善のめどが立ちません。菅首相が「社会
保障と税の一体改革」というのは、結局のところ、消費税率
の引き上げをしたいということです。きょうは、政府の財政
赤字のことを考えてみたいと思います。現在、主要な先進国
で、財政赤字でない国は、ちょっと見当たりません。いうま
でもなく、日本は赤字です。アメリカの財政も大幅な赤字で
す。アメリカは、もともと、財政と貿易の双子の赤字でした
が、2008年9月のリーマンショックに対応するため、財
政支出を拡大し、一挙に赤字が拡大しました。欧州を見ると
ギリシャは赤字のために政府財政が破たんしました。アイス
ランドも同じように破たん状態です。イギリス、ドイツ、フ
ランス、イタリア、スペインも軒並み赤字となっています。
中東の産油国サウジアラビアも財政は赤字だったりします。
もっとも、ここは石油を増産すれば収入が増えますから、そ
う心配はないかもしれません。南米諸国も赤字がひどく、ア
ルゼンチンなど、一時は破たんの危機に瀕していました。こ
の21世紀に、財政が赤字ではない国、財政黒字の国は、非
常に少ない。 http://bit.ly/1e1IccU
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アベノミクス