トの初期の頃ですが、村井氏はこの問題に没頭していたのです。
村井氏のこの努力が現在のインターネットの日本語化に結びつい
たといえます。インターネットは米国が開発したものであり、当
然のことながら、最初のうちは日本語が扱えなかったのです。
そこで、村井氏が何をしたかを知っていただくために、少し面
倒な話をしなければならないのです。知っておくと後でいろいろ
なことに役立つので、ぜひ読んでいただきたいと思います。
コンピュータの内部では、文字を数値として扱います。例えば
「A」という文字は「65」(16進数では「Ox41」)というコ
ードが割り当てられています。これを「文字コード」と呼んでい
るのです。
コンピュータの黎明期においては、多くのメーカが独自の規格
でコンピュータを作っており、コンピュータ同士の互換性はまっ
たくなかったのです。
しかし、それらのコンピュータが一つの企業、一つの大学、一
つの研究所で使われているうちは何も問題はなかったのですが、
それらのコンピュータをそれぞれ繋いで、企業間、大学間、研究
所間でデータを交換しようとすると、文字コードの互換性がない
ため、それはできなかったのです。
こういう事態を受けて、米国の工業基準を定めているANSI
(アンシ)が乗り出し、データ交換用の標準的な文字コードとし
て定めたのが、ASCII(アスキー)です。
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ASCII
American National Standard Code for
Information Interchange
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ASCIIは本来はデータ交換時に使われる目的で作られたの
です。そのこと、ASCIIの最後の2文字――IIは「データ
交換用」という意味であることから明らかですが、多くの米国の
コンピュータメーカーは、データ交換時だけでなく、コンピュー
タ内部で文字を処理するさいの文字コードして採用したのです。
ASCIIは文字コードの中心的存在となのです。
ここで、「ビット」と「バイト」の関係を知っておく必要があ
ります。「ビット」というのは情報の最小単位であり、具体的に
は「0」と「1」です。コンピュータではこの「0」と「1」し
か扱えないのです。コンピュータは2進数でできているのです。
この「0」と「1」を8個集めた単位を「バイト」というので
す。つまり、次の式が成り立ちます。
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1バイト=8ビット
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この8ビット、これは10進数で2の8乗(0〜255)をあ
らわしています。すなわち、256個の数字を文字コードとして
使うと、欧米の文字は、種類が少ないので、それで間に合ってし
まうのです。これを「シングルバイト(1バイト)文字」という
のです。
これに対して、日本をはじめとするアジアの国の言葉――例え
ば漢字などは8ビットではとても足りないので、8ビットの倍の
16ビット――2バイトを使うのです。2バイトは10進法では
2の16乗(0〜65535)ですから、これだけあれば十分で
す。これを「マルチバイト(2バイト)文字」というのです。
しかし、欧米の文字は8ビットですべてあらわせるのですが、
英語に限ると、もっと少ない数で足りてしまうのです。
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アルファベット大文字 ・・・・・ 26個
アルファベット小文字 ・・・・・ 26個
数字 ・・・・・・・・・・・・・ 10個
記号その他 ・・・・・・・・・・ 30個
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92個
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92個の文字であれば、2の7乗(128個)で足りることに
なります。そこで、米国ではシングルバイト(1バイト)文字は
使うのですが、文字そのものは7ビットで済ませてしまい、残り
1バイトは別の目的で使うことにして、ASCIIコードを決め
てしまったのです。これがマルチバイト文字を使う国々にとって
は、大きな障害となるのです。
もっとも8ビット目に特別な意味を持たせなければ問題はない
のですが、世界の多くのソフトウェアは文字を表すのに7ビット
を使い、8ビット目に固有な意味を持たせているのです。とくに
UNIXというOSでは、この8ビット目を使うソフトウェアが
多くあり、これにマルチバイト文字を通そうとすると、エラーに
なってしまうのです。
UNIXというOSは、ここまで見てきたように、通信ネット
ワークに深い関わりのあるOSであり、これがインターネットで
日本語が使えない原因だったといえます。村井氏はこのOSを開
発したベル研究所に働きかける必要があると考えたのです。
それではどのようにしたら解決できるでしょうか。村井氏は解
決策としては次の2つしかないと考えたのです。
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1.すべてのソフトウェアにおいて、8ビット目に特別な意味
を持たせないようにする
2.日本語が7ビットを基準とした2バイトでも通るように何
らかの工夫をこらすこと
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村井氏は、上記1についてはひたすら声を大にして世界に主張
するが、完全解決は難しいと考えて、とりあえず2に重点を絞る
ことにしたのです。
―― [インターネットの歴史 Part2/18]
≪画像および関連情報≫
・文字コードの解説サイトから・・
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文字コードは、間違いなく情報を交換するための「決まりご
と」なので,正確を期すため厳密な仕様が規定されている。
だが,その仕様そのものを実装するプログラムを作る場合を
除けば,プログラマが仕様の詳細を隅々まで理解している必
要はない。六法全書を読んでいなくても問題なく普段の生活
ができるようなものだ。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061122/254626/
・ASCIIコード
http://dennou.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/arch/zz1998/mozi/zengaku.html
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