2013年08月19日

●「野田首相はなぜ法相を罷免したか」(EJ第3613号)

 まず、次の報告書を読んでいただきたいのです。おそらくびっ
くりされると思いますが・・・。
―――――――――――――――――――――――――――――
 【平成24年6月5日午後6時、法務省法務大臣室において、
 小川敏夫法務大臣は、笠間治雄検事総長に対し、虚偽捜査報告
 書事件について、
   ・公判請求も念頭に置いて厳正なる捜査を行うこと
   ・捜査体制を新たに構成すること
   ・虚偽内容の公表等、情報の公開に努めること
 を行うよう検察庁法14条の規定に則り指示した。次いで、同
 日午後7時、小川法務大臣は、緊急記者会見に臨み、右の指揮
 権を発動したことを以下のとおり公表した。指揮権の発動につ
 いては、公正であるべき捜査を政治が介入して歪めてはならな
 いという見地から努めて抑制すべしとするなど様々な見解があ
 るが、検事が虚偽の捜査資料を捏造するような検察内部の事件
 について検察が消極的対応に終始し、このような対応が検察に
 対する信頼回復を願う国民の期待に背くような場合、国民の声
 を代表する法務大臣は、検察の信頼を回復するために指揮権を
 発動して適正な対応をするよう検察に求めることが真の職責で
 あると判断し、本日、指揮権を発動しました】
    ──小川敏夫著「指揮権発動/検察の正義は失われた」
                      朝日新聞出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 「そんなことあったっけ?」と思う人がほとんどであると思い
ます。それは当然です。これが実行に移されることはなかったか
らです。この報告書を書いた人物は、元法務大臣の小川敏夫氏で
あり、彼はこれを実行する6月5日の1日前の6月4日に法務大
臣を罷免されているからです。時の野田首相は法務大臣を罷免し
てまで検察の一大不祥事を世間の目から蔽い隠したのです。
 2012年5月11日に小川法相は野田首相と会い、指揮権発
動行使の決意を伝えています。そのとき、野田首相は驚いて、次
のようにいったそうです。そのときのやり取りを公開します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小川:指揮権を行使しなければならない状況なので、行使しよ
    うと思っています。
 野田:指揮権って50年くらい前に騒ぎになったあれですか。
 小川:そうです。
 野田:大騒ぎになるんじゃないですか。
 小川:なるように思います。
 野田:やれば喜ぶ人もいるでしょうが、少し考えましょう。
                ──小川敏夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このとき小川法相が指揮権を発動するといったのは、陸山会裁
判を巡り、東京地検特捜部の田代政弘検事(当時)が事実とは異
なる虚偽捜査報告書を作成した件についてです。
 捜査報告書は、供述者が内容をチェックできない検察内部の文
書であり、そこにうそが書かれるといくらでも罪のない人を犯罪
者にできる恐ろしい文書です。政治資金収支報告書の記載ミスで
国会議員を逮捕・起訴する検察が、自らは虚偽の捜査報告書を書
いて、無実の犯罪者を作っている。それがばれると、今度はその
検事を懲戒処分とい微罪で幕引きを図ろうとしている──小川法
相はそれをチェックしようとしたのです。これについて小川元法
相は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察が行った虚偽捜査報告書の作成は、検察の公正さ、捜査の
 適正さを根底から覆すもので、これを看過してはならない。こ
 の不正を見過ごせば、検察は同じ不正を繰り返し、罪もない国
 民に罪を被せる結果をもたらすことになるだろう。また、国民
 が検察に対する信頼を失えば、国民は、検察の捜査に協力しな
 くなる。検察崩壊の危機である。この危機を回避し、検察に対
 する国民の信頼を回復するためには、虚偽捜査報告書について
 事実とその責任の所在を国民に明らかにしなければならない。
 それによって初めて検察の信頼回復を語ることができる。
                ──小川敏夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 小川法相の考え方は正しいと思います。検察が2009年3月
に小沢氏の秘書を逮捕して以来、検察の不祥事は目に余るものが
あります。しかし、野田首相はこれを民主党内の政治家同士の争
いの次元に矮小化しようとしています。それは「やれば喜ぶ人も
いるでしょうが」という言葉によくあらわれています。
 この知られざる指揮権発動の件はさておき、そもそも田代政弘
検事は、石川知裕氏に対してなぜ事情聴取したのでしょうか。事
情聴取は、2010年5月17日に行われており、石川氏は既に
起訴されているのです。
 起訴した被告を裁判の前に検察に呼び出して事情聴取する──
きわめて異例なことであり、通常では行われないものです。それ
では、何のための事情聴取なのでしょうか。
 それは、ずばり小沢一郎氏を検察審査会で強制起訴するために
必要だったのです。検察としては小沢氏については不起訴処分に
せざるを得なかったので、検察審査会に2回にわたって「起訴相
当」議決を出させ、強制起訴する計画を既に着実に実行に移しつ
つあったのです。
 田代検事の上司である当時の斉藤隆博特捜部副部長は田代の虚
偽報告書を大量に引用して、新たな次の文書を作成し、田代検事
作成の捜査報告書とともに検察審査会に提出しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 捜査報告書─再捜査の結果を踏まえた証拠の評価等について
―――――――――――――――――――――――――――――
 虚偽の報告書を引用してさらに虚偽文書を作り、これによって
小沢一郎氏を強制起訴に追い込む計画──これはきわめて計画的
に行われたのです。     ── [自民党でいいのか/35]

≪画像および関連情報≫
 ●小川前法相の指揮権発動について考える/郷原信郎氏
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  小川敏夫前法務大臣が、2012年6月4日の退任会見で、
  虚偽報告書作成問題に関して、「指揮権の発動を決意したが
  野田佳彦首相の了承を得られなかった」ことを明らかにした
  (朝日)。多くの記事では、「指揮権発動相談」と表現して
  いるが、小川氏は「相談」などという言葉は使っていないし
  検事総長に対する指揮権は法相の固有の権限であって、権限
  行使に関して総理大臣に「相談」すべきことではない。「了
  承」が得られなかったという朝日新聞の表現が正しい。とは
  言え、小川氏が指揮権の「発動」という言葉を使い、それに
  ついて野田総理に「了承」を求めたことは事実である。虚偽
  報告書作成問題について検察の判断だけに委ねておいて良い
  のか、という問題提起としては評価できるが、この「発動」
  と「了承」に関しては、法相指揮権の本来の在り方にも関連
  する大きな問題がある。      http://bit.ly/M8XdtU
  ―――――――――――――――――――――――――――

小川敏夫元法相.jpg
小川 敏夫元法相
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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