ることを強調しました。現在、世界は第3次産業革命といわれる
情報社会の真っ直中にいますが、社会の変化に国や国民が対応で
きなくなりつつあります。
産業革命とは、技術革新による産業構造の変化および経済発展
のことですが、第1次から第3次まであります。
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◎第1次産業革命/18世紀〜19世紀
・石炭、蒸気機関を動力源とする軽工業中心の発展である
◎第2次産業革命/19世紀〜20世紀
・石油を主な動力源とする重工業中心の工業の発展である
◎第3次産業革命/21世紀〜
・情報技術の発展により、もの作りや社会が変革すること
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産業革命によって社会や生活は激変し、混迷を極めます。第1
次産業革命が起こった18世紀半ばの英国の混迷を救ったのは、
議会制民主主義の確立であり、それによって自由と平等が保障さ
れたのです。民主主義の第一歩です。
第2次産業革命では、労働者の反乱が起きたのです。これをめ
ぐって、共産主義国と資本主義国ではイデオロギーの対立が激化
したのですが、激動のなかで資本主義社会の混迷を救ったのは、
福祉社会の実現だったのです。
福祉社会とは何か。収入の多い人が多くの税を負担する「所得
再配分」によって公共サービスを行い、社会保障を整備する──
そういう福祉社会を資本主義国は実現していったのです。
このとき、活躍したのが英国のジョン・メイナード・ケインズ
なのです。あまり知られていないのですが、ケインズもユニテリ
アンであったといわれています。
しかし第3次産業革命が起きると、これまで築いてきた福祉社
会の仕組み──社会主義的なシステムが崩壊しつつあります。理
由は、グローバル化による国の税収の激減と支出の拡大です。こ
れにかわって生まれたのは、弱肉強食による過激な競争資本主義
です。第3次産業革命によって、400年続いてきた資本主義が
変質してしまったのです。
2007年9月に急に退陣した安倍首相に代わって福田康夫政
権が発足したのですが、その直前の参院選で民主党をはじめとす
る野党は勝利し、与党の議席数を上回り、いわゆる「ねじれ」が
はじまったのです。
実は、その参院選の時点で小沢氏は米国の投機資本主義と金融
資本主義の崩壊を予想し、「友愛・共生社会」を創るために「国
民の生活が第一」という政策を掲げたことを明かしています。そ
のとき、小沢氏のいった言葉を平野貞夫氏は次のように紹介して
います。
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参院選で「国民の生活が第一」の政策理念を作ったのは、その
予感(投機資本主義と金融資本主義の崩壊)があったからだ。
これから、「日本型セーフティーネット」を整備して、混乱す
る国民生活を守ったうえで、公正で活力ある市場経済社会を創
るようにしなければならない。 ──平野貞夫著
『わが友・小沢一郎』/幻冬社刊
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「日本型セーフティーネット」──これに基づく具体策として
小沢氏は「新しい生活をつくる5つの約束」を発表しています。
それは、次の5つです。
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1.すべての国民が安定した生活を送れる仕組み
2. 安心して子育てと教育ができる仕組み
3. まじめに働く人が報われる雇用の仕組み
4. 地域社会を守り再生させる仕組み
5. 国民の生活コストを安くする仕組み
──平野貞夫著の前掲書より
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この2つ目の仕組み「安心して子育てと教育ができる仕組み」
の具体策として民主党は、子ども手当毎月2万6000円、高校
無償化──公立高校生の授業料である月額9900円を徴収せず
国が負担する。私立高校生には年間約12万円の「就学支援金」
を学校に支給する──これらをマニフェストに掲げ、民主党は政
権交代を成し遂げています。
今では「できもしないウソの公約」といわれていますが、予算
ですからそれを全面的に組み替えて、優先順位をつければできる
のです。ただ、民主党の一部の勢力が政権交代をするや小沢外し
を行い、自分たちの手でやろうとして失敗しただけなのです。彼
らにはそれを実現させる腕力も能力も気力もなかっただけのこと
です。この経緯については改めて述べます。
現在、参院選が行われていますが、各党とも「マニフェスト」
という言葉を使わず、公約を記載した冊子の部数を減らしていま
す。なぜなら、候補者が公約冊子を配付しようとしても有権者が
受け取ってくれないからです。民主党があまりにも劣悪な政治を
行い、「マニフェスト=できもしない約束」と国民に印象づけて
しまったからです。この罪は万死に値します。
ちなみに改正公選法では、政党のホームページに掲載された公
約やビラを印刷して配付すると、2年以下の禁固、または50万
円以下の罰金になるのです。実にバカげた規制です。
「国民の生活が第一」は、単なるスローガンではないのです。
現在の日本の国家・社会構造は第2の産業革命による重化学工業
社会を前提としてできていますが、それは第3の産業革命による
高度情報社会に適合していないため、社会にさまざまな混迷が生
じています。この混迷によって国民生活が混乱しないためのセー
フティネットとして、「国民の生活が第一」の5つの約束を掲げ
民主党は2009年の衆院選に臨んだのです。そして待望の政権
交代を実現したのです。 ── [自民党でいいのか/08]
≪画像および関連情報≫
●新しい共生社会の柱とは何か/平野貞夫氏
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第一次世界大戦の後には、マックス・ウェーバーは「良き資
本主義、良き民主主義は死んだ。今あるものは、しょせん偽
物だ」と、ある日本人に語っている。資本主義や民主主義を
健全に持続させるために、人間の倫理観では不可能になった
のが、近代化した人間社会の現実である。それは制度によっ
て保証されなければならない問題だ。そこで健全な市場経済
社会・資本主義を機能させる前提として、2つの条件が必要
となる。ひとつは「基礎的社会保障──基礎年金、介護、高
齢者医療、保育等──を国の責任で整備する」こと。もうひ
とつは「地球環境の保全を国家、企業・団体のみならず、す
べての人間に義務づける」ことだ。CO2削減問題で国際的
にも国内的にも激論が続いているが、地球環境が保全されて
いて、人間を含むすべての生物が生存できるのである。この
前提条件を憲法の中に規定して、新しい共生社会の柱とすべ
きである。 ──平野貞夫著
『わが友・小沢一郎』/幻冬社刊
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「わが友・小沢一郎」/平野 貞夫著