2013年07月01日

●「なぜ与党は予算委を欠席したのか」(EJ第3579号)

 第183回通常国会──就任以来終始フル回転の活躍で大いに
支持を広げた安倍首相は、都議選にも完勝して、野党との審議が
済んでいる数本の重要法案を可決して国会を閉じる予定であった
のです。しかし、そうはならなかったのです。
 6月24、25日の両日、野党が求める参院予算委員会の集中
審議に、首相ら政府側と公明党が突然欠席したのです。そのとき
野党としては、アベノミクスの問題点や高市早苗政調会長の「原
発での死亡者ゼロ」発言などを追及し、批判を浴びせたうえで、
参院選に臨むことを考えていたのです。
 しかし、私は自公両党のこの動きはおかしいと思っていたので
す。もし、予算委員会に欠席すれば、国民の生活に影響する次の
重要法案が廃案になる恐れがあるからです。しかし、それにもか
かわらず、与党は予算委員会を欠席したのです。
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      1.       生活保護法改正案
      2. 生活困窮者向けの自立支援法案
      3.      日本船警備特措法案
      4.       電気事業法改正案
      5.        自衛隊法改正案
      6.水源保全のための水循環基本法案
―――――――――――――――――――――――――――――
 政府は、アベノミクスの問題点などはいくら追及されても問題
なく対応できますし、高市政調会長の発言にしても既に本人は撤
回しており、政府にとって大きなダメージにはならないのです。
むしろそれよりも、6本の重要法案が廃案になることの方が与党
としてダメージが大きいはずです。
 それでも与党が予算委員会を欠席したのには、別な理由があっ
たのです。委員会で野党からそれを持ち出されると、自民党が深
刻なダメージを受ける恐れがあったのです。
 与党の予算委員会欠席にいち早く動いたのは、生活の党、みど
りの風、社民党の3党です。安倍首相の問責決議案を提出して自
民党を揺さぶったのです。この動きのウラには小沢一郎生活の党
代表がいます。彼は、他の野党は絶対についてくるとの信念の下
に、先行して問責決議案を出したのです。そして、結果はその通
りになったのです。
 お粗末なのは民主党です。海江田代表と細田幹事長は、何とか
重要法案を成立させようとして、問責決議案の採決を最後にしよ
うとしたのです。ところが、当の自民党が問責決議案の先行採決
に賛成したので、問責決議案は可決されたのです。民主党として
は、問責決議案の採決に、最大野党として絶対に「反対」できな
かったのです。
 問題はその後のメディアの論調です。それは「野党は束になっ
て国民の生活に直結する重要法案を葬った」という論調で、すべ
ての責任は野党にあると糾弾したのです。事情のわからない国民
にはそうみえないこともないのです。しかし、問責が出る原因を
作ったのは予算委員会に欠席した与党なのですが、それをメディ
アは批判せず、すべては野党が悪いという報道を一斉に行ったの
です。自民党のメディア対策の勝利といえます。
 それでは、与党の自民党が予算委員会を欠席した本当の理由は
何でしょうか。
 それは、衆議院議院運営委員長の佐田玄一郎氏と内閣府副大臣
の西村康稔氏の買春疑惑の週刊誌報道なのです。掲載誌が27日
に発売されることを知った自民党は、急遽予算委員会を欠席し、
すばやく作戦を建て直したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    「佐田玄一郎議運委員長/常習的買春の現場報告」
              ──『週刊新潮』7月4日号
 「安倍側近西村康稔副大臣/ベトナム買春スッパ抜き!」
              ──『週刊文春』7月4日号
―――――――――――――――――――――――――――――
 衆議院の議院運営委員長といえば、衆議院ナンバー3の重要ポ
ストです。そのようなポストにある人が長年にわたって女子大生
と買春行為をしていたことが暴かれたのです。『週刊新潮』は相
手の女性と会い、買春の事実を確認しています。週刊誌にはラブ
ホテルから出てくる佐田氏の写真まで掲載されています。
 西村康稔内閣府副大臣は、2012年7月にベトナムのハノイ
において買春行為を行っています。『週刊文春』は現地に取材に
行き、相手の女性(複数)を特定し、西村氏の写真を見せて確認
をとっており、事実は動かしようがないのです。
 問題は、週刊誌が発売された27日と28日の新聞やテレビの
報道です。佐田委員長は委員長辞任を表明していますが、西村氏
は事実を否定しています。27日のテレビでは佐田氏の委員長辞
任表明をコメントなしのニュースとして流すか無視しています。
 28日の「とくダネ!」をはじめとする朝のワイドショーも完
全にこの事件を無視しています。一人は議院運営委員長まで務め
る重要議員であり、かたや安倍首相側近の副大臣なのです。そう
いう2人が、こともあろうに、恥ずべき買春行為をした事実が明
らかになったのです。これがなぜベタ記事やコメントなしで伝え
るような小さなニュースでしょうか。日本のメディアは腐ってい
ます。メディアの自民党寄りの姿勢は目に余るものがあります。
 EJでは、今日から新しいテーマに入ります。選挙も近いので
次のテーマについてしばらく書くことにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
    本当に自民党でよいのか/小沢一郎最後の挑戦
    ──このままでは済まされない問題を探る──
―――――――――――――――――――――――――――――
 この自民党安倍首相側近の2人のスキャンダルに対し自民党は
その影響を最小限にしようとしています。メディアはそれに協力
しているのです。官僚機構もメディアも自民党の政権への完全復
帰を望んでいますが、それは自分たちにとって大きなメリットが
あるからです。      ――─ [自民党でいいのか/01]

≪画像および関連情報≫
 ●2つの週刊誌はこういっている/『週刊新潮』『週刊文春』
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  ◎『週刊新潮』/7月4日号より
  「21日に湯島のラブホテルへ行った件ですが」と問い質す
  と、「何?」と言って立ち止った佐田委員長。そこに記者が
  ホテルの裏口から出る写真を出す。すると、平静を装ってい
  たものの、一瞬、口端に微かな笑みを浮かべた。後は、記者
  が何を聞いても「オレは知らん」の一点張り。そのくせ、女
  子大生によれば、「週刊新潮さんの取材を受けた後、私の携
  帯に寺井(佐田氏のこと)さんから電話がきています。今日
  一日だけで20件くらいの着信があります」。何と往生際の
  悪い男。立法府のナンバー3が、常習的な買春。国民が知っ
  たらどう思うか。佐田委員長はよく考えるべきである。
  ◎『週刊文春』/7月4日号より
  ベトナムでは買春が刑法で禁止されており、違反すると罰金
  や懲役刑が下される。そもそも日本国民の代表である国会議
  員が海外で買春行為をしていたとなれば道義的に許されない
  のは言うまでもない。さらに現在、ベトナムでは日本の政官
  業が一体となって原発などのトップセールスを進めようとし
  ている。その相手国に、日本の政治家が弱みを握られるよう
  なことがあれば、国益を棄損する可能性さえあるのだ。西村
  氏の犯した「罪」は重い。
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佐田玄一郎氏/西村康稔氏.jpg
佐田 玄一郎氏/西村 康稔氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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