2013年06月17日

●「米中首脳サイバー攻撃で意見衝突」(EJ第3569号)

 先週の6月11日頃から先の米中首脳会談の詳しい内容が会議
に同席した高官などの関係者から入ってきています。もともとオ
バマ政権は中国寄りの政権といわれており、尖閣諸島の問題など
では日本に対して厳しいものになるといわれていたのですが、ど
うやらそうではないようです。
 サイバー攻撃でも相当激しいやり取りがあったようであり、尖
閣諸島の問題でもオバマ大統領は、習近平主席が尖閣諸島は中国
の核心的利益であると主張するのに対し、次のように厳しく釘を
刺したといわれます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国には日本がわが国の同盟国であることを認識してもらう
 必要がある。その同盟国である日本が中国から脅迫されるこ
 とを、われわれは絶対に受け入れない。 ──オバマ大統領
―――――――――――――――――――――――――――――
 この会談の内容は、6月13日午前にオバマ大統領から安倍首
相に電話で伝えられており、尖閣諸島問題に関して「日米安保条
約の適用範囲」との認識を共有するとともに、日米同盟関係の強
化を改めて確認したとみられます。
 これを裏付ける動きも出ています。米上院外交委員会のメネン
デル委員長(民主党)やルビオ上院議員(共和党)など超党派の
3議員は、13日までに上院に中国非難決議を提出したのです。
 この動きはオバマ大統領の耳にも入っており、50%大統領の
オバマ氏にとって、この問題で少しでも中国寄りの姿勢を見せる
とまずいという判断があったものと思われます。
 ちなみに米上院は、2011年にも南シナ海問題で、中国非難
決議を全会一致で可決しているので、今回も可決されるものと思
われます。この非難決議案に具体的な軍事挑発の例示として出さ
れたのは次の4つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦へのレーダー照射
 2.    中国公船8隻による尖閣諸島周辺領海への侵入
 3.        ベトナム調査船の探査ケーブルの切断
 4.    フィリピンと領有権を争うスカボロー礁の封鎖
―――――――――――――――――――――――――――――
 ちなみに下院は、議員の支持団体の要望を優先する傾向が強い
のですが、上院は外交安全保障について強い権限を有しているの
です。そこからオバマ大統領に強い圧力をかけたのです。
 習主席による中国外交の明らかな失敗といえます。サイバー攻
撃問題でも、南シナ海、東シナ海問題の領有権をめぐる問題でも
激しく米中が対立することになってしまったからです。
 しかし、中国は一向にひるんでいないのです。6月14日午前
には、尖閣諸島周辺の日本の領海内に中国の海洋監視船3隻が侵
入していますし、サイバー攻撃に関しても米国に対して強いしっ
ぺ返しとみられる行為を行っているからです。
 ここで「スタックスネット」について、ふれる必要があると思
います。これは、2010年9月に起きた事件です。スタックス
ネットとは、ウインドウズをターゲットとしたコンピュータワー
ムであり、2010年に発見されています。
 スタックスネットは、ウインドウズOSの未知の脆弱性を利用
し、感染を拡大するワームです。ここで復習ですが、自己増殖す
るものを「ワーム」、しないものを「ウイルス」と称するので、
スタックスネットはワームなのです。
 何が問題かというと、米国とイスラエルが仕掛けたとされる、
このワームによって、イランの核施設の約1000台の遠心分離
機をストップさせ、核施設の稼働をダウンさせた疑いがあるから
です。遠心分離機はウラン濃縮に不可欠なマシンです。
 一般的に核施設のような機密性の高いインフラはインターネッ
トに接続していないものなのです。そのようなシステムにどのよ
うにして侵入したのでしょうか。
 スタックスネットには、2つの特殊性があります。それは他の
ワームには見られないものです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        1.媒体がUSBメモリである
        2.特定機械に特化するワーム
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の特殊性は、媒体がUSBメモリであることです。一体ど
のようにしてUSBメモリで、システムにワームを侵入させたの
でしょうか。
 考えられることは、核施設の内部にスパイを侵入させ、USB
メモリをシステムに直接接続させたか、施設内にわざとらしくな
くUSBメモリを落としておき、誰かが拾って施設内のPCに接
続するように仕向けたかどちらかしかないのです。つまり、サイ
バー攻撃に従来のスパイ工作を組み合わせた手法を使ったものと
考えられます。
 第2の特殊性とは、スタックスネットというワームは、ドイツ
のシーメンス社の開発した遠心分離機の制御システムという、極
めて限られた対象物をターゲットとしていることです。最初から
シーメンス社製の遠心分離機を破壊してイランの核開発を遅らせ
る目的で作られていることです。
 もし、米国とイスラエルのやったことであるとすると、どうし
てわかったのでしょうか。その詳しい経緯は不明ですが、イラン
核施設の技術者が偶然ひろったと思われるUSBメモリを核施設
のPCに接続しただけでなく、それを自宅のPCにも接続したこ
とで、ワームがネット上に流出したことが原因です。そのワーム
を分析することにより、2国の関与が明らかになったのです。
 そしてこの事実を2012年6月に、ニューヨークタイムズ紙
がすっぱ抜いたため、世界中に知られるようになったのです。中
国はこの事実をもって米国に対し、「中国も被害者である」とい
う主張を繰り返したわけです。サイバー攻撃については決定的な
証拠を特定することが困難なため、知らぬ存せずという主張がま
かり通るのです。          ── [新中国論/67]

≪画像および関連情報≫
 ●産業サイバー兵器スタックスネットの防ぎ方
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  ITセキュリティの専門家に「スタックスネット」について
  語ってもらうのは、芸術評論家にモナリザの魅力を解説して
  もらうようなもの。サイバー安全保障のプロたちはこの新種
  のコンピュータウイルスに畏敬の念を抱いている。2012
  年6月に発見されて以降、世界中に感染が拡大しているスタ
  ックスネットは、かつて見たことがないほど洗練されたコン
  ピューターウイルスだ。世界中の専門家が必死で暗号の解読
  に挑んでいるが、このウイルスが作成された真の目的は今も
  わかっていない。非常に巧妙に作り込まれているため、アメ
  リカかイスラエルがイランの核開発プログラムを阻止するた
  めに作成した「サイバー兵器」ではないかと考える専門家も
  多い。スタックスネットを「兵器」と見なすべきなのは、発
  電所やパイプライン、通信インフラ、空港や船舶といった産
  業用システムに潜入し、密かにプログラムを改ざんできる初
  のコンピュータウイルスだから。イランの原子力発電所も攻
  撃を受けた。複数の従業員のパソコンが感染したという。ド
  イツの多国籍企業シーメンスが開発したソフトウエアを使用
  している少なくとも14カ所の工場でも感染が確認されてい
  る。専門家によれば、スタックスネットの作成には数カ月か
  ら数年を要し、産業用システムに詳しい人物が多数関与した
  可能性が高い。標的に到達するために、ハッカーはしばしば
  ウインドウズなどに潜むセキュリティー上の「穴」を探すが
  スタックスネットの優秀な作成者が見つけたバグは一つだけ
  ではなかった。         ──ニューズ・ウィーク
  http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2010/10/post-1683.php
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米パーム・スプリングスでの米中首脳会談.jpg
米パーム・スプリングスでの米中首脳会談
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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