2007年03月23日

OSIとは一体何なのか(EJ第2045号)

 日本におけるOSI推進の第1人者である猪瀬博とTCP/I
Pの推進者である村井純――このように書くと、「OSI」とい
うのは一体何なのかと思う人が多いと思うのです。
 通信・ネットワークについて少しでも勉強したことのある人は
嫌でも「OSI」という専門用語に向き合うことになります。と
ころがこのOSI――なかなか分かりにくいのです。
 中には「OSIは神学である」という人までいます。神学に失
礼ですが、何をいっているのかわからないということから、そう
いわれるのでしょう。OSIが分からないと、猪瀬対村井の対決
構図もわかりにくいので、ここでOSIについて少し考えてみた
いと思うのです。
 OSIは定義からしてわかりにくいのです。OSIとは次のよ
うにいわれています。
―――――――――――――――――――――――――――――
      OSI=Open System Interconnection
      開放型システム間相互接続
―――――――――――――――――――――――――――――
 「開放型システム間相互接続」といわれてピンとくる人は少な
いと思います。しかし、冒頭に「オープン(開放型)」という言
葉が置かれていることによって、OSIが提案されるまでのネッ
トワークは企業間、団体間で「クローズド(閉鎖型)」であった
ことがわかると思います。
 しかし、ネットワークが閉鎖型では広域ネットワークができな
いので、開放型にしようじゃないかという提案がOSIだという
わけです。
 それでは、OSIはどう定義されているのでしょうか。通信の
事典には次の説明があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 OSI――「開放型システム間相互接続」と訳される。異なる
 ベンダーの製品を組み合わせて使用した際の相互運用性を確保
 するため、ISOがコンピュータ間の通信に関する方法を体系
化したもの。―秀和システム『通信ネットワーク用語事典』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在、書店のコンピュータ関係書籍の棚には「TCP/IP」
のタイトルを冠する本がたくさんあります。技術の指導書で、同
じタイトルの本がたくさんあるということは、それが売れている
ことを意味しています。それは、1冊読んだだけでは、TCP/
IPを理解できないので、他のTCP/IPの本を買う人が多い
ことを物語っているのです。
 そういうTCP/IPの本の中で、OSIに関する説明は、ほ
とんどの本が上記の事典と同じ説明になっています。そこだけは
著者の言葉ではなく、事典とほとんど同じなのです。
 その中で、若林宏氏の著書のOSIの解説は他の本のそれとは
少し違っています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 国際標準化機構ISOでは、異なるコンピュータメーカーのコ
 ンピュータ間でも通信できるようにするため、ネットワークプ
 ロトコルの標準を作成しようとOSIを考案、OSIの検討会
 には各メーカーの代表者が参加して話し合いが行われました。
 ISOからOSIが発表されると、各メーカーは自社製の汎用
 大型コンピュータに、このOSIを導入、OSIが導入された
 ことで、異なるメーカーのコンピュータ間でも情報通信ができ
 るようになりました。
    ――若林宏著、『最新TCP/IPハンドブック』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 若林氏によるOSIは、ISOの主導の下で異なるコンピュー
タ間で相互接続して使える国際的なプロトコル――そのようにと
らえることができます。要するに、ISOは国際的に標準のプロ
トコルを作り、それを現在のPCのウインドウズのように、あら
ゆるコンピュータに実装させ、異機種コンピュータ間で通信がで
きるようにしたかったのです。
 これならよくわかるのです。実際に若林氏は上記の記述の後に
次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 OSIは次世代のネットワークプロトコルとして大いに期待さ
 れました。しかし、たいへん複雑で大きなシステムであったた
 め、結果的には。パソコンに不向きなネットワークプロトコル
 であると判断され、市場での普及は見ませんでした。
                 ――若林宏著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 若林氏は、ここではっきりと「OSIはネットワークプロトコ
ルである」といっています。そしてそれは市場では普及しなかっ
たと述べています。
 ところが、前掲の通信ネットワーク事典のOSIの説明――ほ
とんどの通信ネットワークの本の説明と同じ――とは、合ってい
ないのです。それらの本には「OSIとは何か」という項目さえ
ないのです。
 結論からいうと、事典ではOSIではなく、「OSI参照モデ
ル」の説明をしているのです。なぜ、「OSI参照モデル」なの
でしょうか。「OSI参照モデル」とは何でしょうか。
 現在、どのコンピュータにも搭載され、国際的に通用している
通信プロトコルとしては、TCP/IPがあります。通信ネット
ワークの本には、TCP/IPとこのOSI参照モデルを結び付
けて説明されています。だから、余計に混乱するのです。
 コンピュータメーカ−各社の独自のプロトコル、TCP/IP
それにOSIとOSI参照モデル――これらの関係は歴史的考察
をしない限りわからないのです。TCP/IPの著者たちはそう
いう歴史的考察をしないで書こうとするので、自分でもよくわか
らなくなっているのです。猪瀬対村井の対決は標準化とデファク
ト・スタンダードのそれです。
          [インターネットの歴史 Part2/12]


≪画像および関連情報≫
 ・OSI関するスラング
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ネットワーク技術者の間のスラングでは、第8層――政治層
  社内政治やビジネスなど。第0層――土建層、有線ネットワ
  ークを敷設する建物の構造などがある。また、米国では、第
  8層――ユーザ層、第9層――財務層、第10層――政治層
  とか、第8層――お金層、第9層――政治層、第10層――
  宗教層と比喩することもある。ネットワークに関わる人間の
  問題を比喩して「第8層問題」と言うこともある。
                    ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

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posted by 平野 浩 at 05:22| Comment(0) | TrackBack(0) | インターネットの歴史 Part2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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