言し、米国人を驚かせたことがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
アメリカは軍事費を増やすことはできない。軍事費を増やせ
ば我々から金を借りられなくなる。──温家宝首相(当時)
―――――――――――――――――――――――――――――
昨日のEJ第3559号で、「中国からの借金がなければ、米
国の経済が成り立たず、借金漬けの財政が成り立たない」と述べ
ましたが、これは中国政府が無制限で米国債を買い上げたことに
より、2011年のはじめに、2.5 %から3.5 %だった米国
の長期金利が1年後には1.56 %まで下がったからです。
その結果、米政府はインフレ率よりも安い1%台の安い金利で
ふんだんに資金を借り受けられるようになったのです。ちなみに
2011年の米国のインフレ率は3.14 %です。
なぜそんなことができたかというと、中国政府は、コマーシャ
ルベースを無視して、金利や値段に関わりなく、米国債を大量に
買い入れ、政府による独自のドル中央管理体制でコントロールで
きるからです。
皮肉な話ですが、米議会は中国政府のその独自のドル中央管理
体制を批判しているのですが、オバマ政権にとってはそれがある
からこそ、中国に米国債を大量に買い上げてもらっていることに
なります。オバマ政権が中国に何もいえないのも当然です。これ
について、日高義樹氏は次のようにコメントしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
オバマ大統領の中国寄り政策の裏には、安い中国の資金を借り
続けるという暗黙の約束があった。そのお返しとしてオバマ大
統領は、中国に政治的な注文はいっさいつけてこなかった。中
国の人道活動家に対する弾圧についても目をつぶり、マスコミ
の注目を浴びた陳光誠の実質上の亡命についても、中国政府の
メンツを守るための努力を怠らなかった。「陳光誠事件(≪画
像および関連情報参照≫)で中国の非人道的な行動が政治問題
化すれば、中国の立場は一挙に悪くなったはずだ」。保守系の
雑誌『ウイークリー・スタンダード』などがこう厳しく批判し
たが、オバマ政権にとっては、人道主義よりも中国から資金を
借りることのほうが重要だったのである。 ──日高義樹著
「アメリカの新・中国戦略を知らない日本人」より/PHP
―――――――――――――――――――――――――――――
こういう事情があれば、お世話になっている中国政府の手前、
オバマ大統領としては、日本の安倍首相と親密ぶりを演出するわ
けにはいかなかったのです。そのためオバマ大統領は安倍首相に
は極端に冷たくあしらい、その後にやってきた韓国の朴槿恵大統
領とは親密演出をせざるを得なかったものと考えられます。
このようにいうと、オバマ大統領がそういう考え方では、尖閣
諸島の防衛の問題でも米国は知らん顔をするのではないかと心配
する人もいると思います。この点について日高義樹氏は、日米安
保条約に関わる問題では、米国はオバマ大統領の態度いかんに関
わらず、米国は条約を守ると述べています。なぜなら、尖閣諸島
は米国にとっても太平洋の自由を守る軍事上の重要拠点であると
いうことがわかっているからです。
2012年10月に日高義樹氏は、沖縄の普天間基地の取り決
めをし、長期間にわたって沖縄基地に関わってきた元国防次官の
ダグラス・フェイス氏と会談していますが、そのなかで尖閣諸島
について、次のやりとりをしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
日 高:尖閣列島について、お聞きしたい。中国は何をする
か分からない国だと私は思うが、実際に戦争をしか
けてくる危険があるでしょうか。
フェイス:アメリカは尖閣列島を守るという態度をはっきりと
表明しています。日米安保を遵守するつもりで、中
国もそのことは分かっているはずです。戦争を始め
れば高いものにつくということは十分に理解してい
ると思う。 ──日高義樹著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
米国は調子のよいことをいっていると思うかもしれませんが、
そうではないのです。実は、尖閣諸島をめぐる中国海軍対日米の
潜水艦艦隊との攻防は海面下で既に始まっているのです。5月の
上旬に中国の潜水艦が尖閣諸島の接続水域を潜航して航行してい
ることを防衛省が公表していますが、日米の潜水艦もそれに対し
て活発に活動しているのです。
その証拠に普段はグアムにいる米国の潜水艦母艦「エモリー・
S・ランド」が5月初旬に佐世保基地に姿を現しています。そし
てその佐世保港において、米ロサンゼルス級原潜「サンフランシ
スコ」が横付けされたのです。
潜水艦母艦とは、海軍における補助艦艇の一つで、前進根拠地
などにおいて潜水艦を接舷させ、食料、燃料、魚雷その他物資の
補給を行うことを目的とする艦艇のことです。潜水艦母艦は米海
軍には2隻しかないといわれています。なお、日本の海上自衛隊
にも潜水艦母艦機能と潜水艦救難艦機能を持つ「ちよだ」を保有
しています。
5月の中旬には、沖縄県久米島沖の東シナ海で、潜水艦によっ
て日本漁船のはえ縄が切られる事件が起こったのですが、これは
沖縄県近海を潜航してきた中国潜水艦を海上自衛隊と米海軍の潜
水艦が追跡しているときの事故であることがわかっています。
日米安保があるから守るとか守らないの議論どころではなく、
既に海面下では、日米の潜水艦が中国の潜水艦を追い詰めている
のです。そのことを当の中国海軍は百も承知なのです。そのため
中国としては、もし尖閣諸島で戦端を開けば、確実に米海軍が出
てくることがわかっているので、まず中国は尖閣諸島には手を出
してこないと考えられます。
中国の経済にはかなり問題が出てきています。今後も今までの
ようなことができるかどうか疑問です。── [新中国論/58]
≪画像および関連情報≫
●米中による人権問題の異例な交渉プロセス/陳光誠事件
―――――――――――――――――――――――――――
中国の「盲目の人権活動家」陳光誠氏が中国当局による軟禁
を脱し米国大使館に保護された問題は、2012年5月3〜
4日北京で開催された米国と中国の閣僚が経済や安全保障上
の課題について話し合う第4回「米中戦略・経済対話」の直
前に発生した。人権問題は、米中間における極めて機微な事
案となっているので、双方とも細心の注意を払って処理に臨
んだと思われるが、米側は、特別なやり方(ロック米大使に
よれば「ミッション・インポッシブル」を実施)で陳光誠氏
を米大使館で保護した際、同氏は安全が保障されるなら中国
に留まりたいとの意向を米側に示していたことを踏まえ、中
国側に対し米大使館による保護行為を不問に付すよう交渉し
中国側も外交部報道官が米側のやり方は、明らかな内政干渉
だと不満を述べつつ了解を与えた様子であった。しかし、そ
の後、陳光誠氏が中国にとどまるとの当初の意向を翻し、米
国への出国を希望することを外国記者に表明したことから事
件はさらに複雑化し、上記米中対話会合の進行中も舞台裏で
米中間で鋭意交渉が行われるという異例な展開を見せた。
http://blogs.yahoo.co.jp/ksmgsk66/30580796.html
―――――――――――――――――――――――――――
米国長期金利推移チャート