2013年05月31日

●「ワシントンの中国関連3グループ」(EJ第3558号)

 5月29日のEJ第3556号で「オバマ大統領は中国寄りで
ある」と述べましたが、これについて、もう少し正確に述べる必
要があると思います。なぜなら、オバマ大統領が中国派であると
すると、日米同盟に影響を与えることが懸念されるからです。
 日高義樹氏によると、ワシントンには中国に関連して、次の3
つのグループがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.イデオロギー的にリベラルなグループ
     2.中国をビジネス相手と考えるグループ
     3.共産党は滅ぼすべきと考えるグループ
                      ──日高義樹著
  「アメリカの新・中国戦略を知らない日本人」より/PHP
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1は、「イデオロギー的にリベラルなグループ」です。
 これは文字通り、リベラルなグループであり、労働組合や進歩
的な学者や「ニューヨークタイムズ」の記者など、思想的に中国
に近いと思っている人たちのグループです。
 第2は、「中国をビジネス相手と考えるグループ」です。
 これは、思想的なことは問題外で、中国をビジネス上不可欠な
パートナーと考えるグループであり、また、世界を動かすには中
国との連携が必要であると考える現実主義的なグループです。
 第3は、「共産党は滅ぼすべきと考えるグループ」です。
 このグループは「共産党は悪である」と考えて、中国も共産党
の一部であるので、滅ぼしてしまわなければならないと考えてい
る過激なグループです。
 それでは、オバマ大統領は3つのグループのうち、どのグルー
プに属しているのでしょうか。これについて、日高義樹氏は、オ
バマ大統領は第1グループに属する政治家であるとして、次のよ
うに述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 オバマ大統領がこの第1のグループ、中国派であると言い切る
 のをためらっている人々は、オバマ大統領がシカゴの現実的な
 政治家で、イデオロギーで敵と味方を決めるのを嫌がる政治家
 のグループに属しているのを知っているからだ。オバマ大統領
 の属するシカゴのグループは労働組合やマフィアにも近く、ア
 メリカの良識派からは嫌われている。(中略)オバマ大統領が
 中国派であると私が位置づけるのは、オバマ大統領のホワイト
 ハウスが、シカゴのグループよりも労働組合とリベラルな評論
 家、それに『ニューヨーク・タイムズ』などのリベラルのマス
 コミに取り囲まれているからだ。──日高義樹著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 考えてみると、オバマ政権は発足以来、有力な政権スタッフが
次々と途中で退任するケースが多いのです。元FRB議長のボル
カー氏、サマーズ元財務長官、エマニュエル元主席補佐官も途中
で辞めています。なぜ、辞めてしまうのでしょうか。
 日高氏によると、彼らは、オバマ大統領の周りを取り囲んでい
る選挙専門家や若い労働組合員と意見が合わず、ホワイトハウス
を去って行くそうです。一般的に労働組合の人たちというのは、
仲間同士の結束力が強く、情報を外には漏らさない閉鎖的なとこ
ろがあるといいます。
 もともと労働組合はイデオロギー的に中国の共産党に近く、ど
うしても中国寄りになるのです、新国務長官のケリー氏もリベラ
ルな学者たちとの付き合いが多く、「ニューヨーク・タイムズ」
などのリベラルなジャーナリストを大事にしています。そういう
わけで、ケリー国務長官は親中国派であるといえます。
 橋下徹日本維新の会共同代表の慰安婦問題についての発言で、
「ニューヨーク・タイムス」紙や国務省がかなり強いトーンで日
本を批判したのはそのためです。第2次世界大戦では中国と米国
は同盟軍で、日本は敵であったのですから、そういう意味でも日
本よりも中国に親しみを感ずるのは仕方がないことです。
 第2のグループ──中国をビジネス相手と考えるグループの中
心は、キッシンジャーグループです。もともとキッシンジャー氏
は、ニクソン大統領とともに中国との国交を開始したという経緯
もあり、中国を理解できるグループです。思想的なことは別とし
て中国を重要なビジネスパートナーと考えているのです。
 キッシンジャー派には、ガイトナー前財務長官、ゲイツ元国防
長官、キャンベル国務次官補などが属しますが、いずれも政権を
去っています。
 第3のグループ──共産党は滅ぼすべきと考えるグループは、
共和党保守派のブッシュグループなどが中心であり、ラムズヘル
ド元国防長官、ダグラス・フェイス元国防次官などが属しており
彼らは中国共産党勢力を敵と考えています。しかし、日高氏によ
ると、昨年の大統領選でオバマ大統領と戦ったロムニー候補は、
対中強硬政策を主張していたものの、第3グループではなく、ど
ちらかというと、キッシンジャーグループに近い存在です。
 このように、ワシントンには日本よりも中国にシンパシーを感
ずる米国人が多いのですが、第2期オバマ政権になってからは、
少し様相が変わってきているのです。マスコミの論調が中国に厳
しくなっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2012年11月6日に行われたアメリカ大統領選挙の3日前
 『ニューユーヨーク・タイムズ』は中国が通貨の人民元を操作
 していると批判し、続いて『ウォール・ストリート・ジャーナ
 ル』は、中国政府が人道主義者の弾圧をやめようとしないと厳
 しく批判した。(中略)『ニューヨーク・タイムズ』はさらに
 欧米諸国に評判のいい温家宝首相の母親が不正な手段で膨大な
 資産をつくりあげていると厳しく非難し、共産党大会について
 も、中国が政治的に後ろ向きに動いていると厳しく指摘した。
                ──日高義樹著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ─── [新中国論/56]

≪画像および関連情報≫
 ●オバマ政権よ、同盟国の日本をもっと支持せよ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  米国の有力研究機関「ハドソン研究所」は尖閣諸島をめぐる
  日本と中国の対立へのオバマ政権の姿勢に対し「敵対的行動
  で緊張を高めているのは中国なのに中国に遠慮しすぎる政策
  を取り、かえって危険を増している」と批判する報告を20
  13年2月23日、発表した。2期目のオバマ政権の外交・
  安保布陣がとくに危険だという。同報告は「米国は中国の日
  本威嚇を止めねばならない」と題され、共和党ブッシュ前政
  権の高官で現在はプリンストン大学教授のアーロン・フリー
  ドバーグ氏らにより執筆された。同報告はオバマ政権が昨年
  からアジア旋回(ピボット)と名づけた中国の勢力拡大に対
  するアジア・太平洋での抑止力増強策も最近、中国の機嫌を
  損ねないという方向に軟化し、ピボットという政策用語も会
  計用語のような「リバランス(再均衡)」へと薄められた、
  とまず述べている。
  http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/cdce538fc74050e46f2bc9d3bd09604d
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中国に関する3つのグループ.jpg
中国に関する3つのグループ
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とても参考になる内容でした。
また、遊びに来ます。
Posted by takeru at 2013年06月02日 12:50
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