2007年03月20日

目的は広域ネットワークである(EJ第2043号)

 インターネットというのは、専用線を使った常時接続というの
がその本質なのです。TCP/IPというプロトコル自体が常時
接続を前提としていたことも知っておく必要があると思います。
専門的になって恐縮ですが、一番身近なEメールの送信に使うS
MTPプロトコル、受信に使うPOPプロトコル、ネットニュー
ズを見るためのNNTPプロトコルは、いずれも常時接続を前提
としたプロトコルなのです。
 したがって、学術研究が目的であれば、JUNETも専用線を
使って常時接続でやればよかったのです。しかし、それでもあえ
て電話線を使ってのUUCP接続にしたのは、決して満足のいく
選択肢ではなかったのですが、何よりも少しでも早く広域ネット
ワークを作りたかったからなのです。
 村井氏たちのこの狙いは当たり、東工大、慶応大、東大の3校
ではじめたJUNETは、やがて7OOを超える大学や民間の研
究機関をつなぐ一大ネットワークに発展するのです。
 これは、村井氏を中心とする若手研究者たちの手弁当による営
業努力の賜物なのです。彼らは次のような話法でJUNETの加
入大学・研究機関を増やしていったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 分散しているコンピュータのリソースを共通に使う時代がいず
 れ来ますから、来るべき時代に備えた研究をぜひ一緒にやりま
 しょう、と。      ――滝田誠一郎著、『電脳創世記/
 インターネットにかけた男たちの軌跡』 実業之日本社刊より
―――――――――――――――――――――――――――――
 電電公社が民営化され、1985年から施行された電気通信事
業法によって、電気通信事業に参入することができるようになっ
ています。しかし、この法律の趣旨はかたちのうえでは新規参入
を認めていますが、その一方でそれに強くブレーキをかける内容
にもなっているのです。
 通信のビジネスをはじめるのはよいが、通信はきわめて公共性
の高いものであり、もし何かあった場合はそれ相応の責任はとっ
てもらうという趣旨のことが書いてあるのです。要するにいやい
や電気通信事業の参入を認めているのです。
 こういう状況では、企業は通信事業をはじめるのを逡巡してし
まうのです。その例をソフトバンクがADSL事業に乗り出すと
きにNTTから受けた露骨ないやがらせに見ることができます。
 ADSL事業をはじめるには、電話局にそのための装置(ルー
ターなど)を設置しなければなりませんが、NTTはそのための
場所を局舎内に用意することが法律によって義務付けられている
のです。しかるに、NTTはそのための工事を意識的に引き伸ば
し、これが原因でADSL事業の開始が大幅に遅れたのです。世
間はソフトバンクの責任であると思っていますが・・・。
 村井氏のグループが各大学や研究機関にJUNETへの接続を
呼びかけるさい、一番聞かされた質問は「それは政府公認の研究
なのですか」という質問なのです。何しろスタート当初のJUN
ETは政府公認どころか、まだ大学の助手でしかない村井氏を中
心とする若手研究者のアンダーグラウンド的な研究に過ぎず、十
分相手を納得させられなかったといいます。
 とにかく最初のうちは、電話を通話という本来の目的以外に使
うことにかなり心理的な抵抗感があったのです。かつて永い間に
わたって法律的に認められなかったことであり、その心理的な影
響は大きかったのです。
 JUNETの拡大に実際に携わって2年後の1987年、村井
氏は東工大から東大大型計算機センター助手に転じたのです。や
はり東大は他の大学に比べて権威があり、ネットワークの拡大に
も好都合と考えたからなのです。
 さて、昨日のEJの最後に、村井氏の「鋭い先読み」について
ふれましたが、篠田陽一氏は村井氏のことを次のように述べてい
ます。篠田氏は村井氏よりも4つ年下であるにもかかわらず、村
井氏のことを「純」と呼び捨てにするのがつねだったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ぼくはコンピュータのネットワークを作ること、コンピュータ
 とコンピュータをつなぐこと自体が面白くて、それを夢中でや
 っていた。そういう連中が多いんですよ。ハードを作ること、
 ソフトを作ること自体が面白くてネットワークに首を突っ込ん
 でいる連中が。でも、純は違う。コンピュータをつないだら何
 ができるのか、そういう環境が整ったら何ができるのか、それ
 を一番真剣に考えてきたのが村井純なんです。そういう視点か
 ら、彼はネットワーク全体のプランニングとかマネジメントと
 かを考えてきた。だからこそ、「日本のインターネットの父」
 といわれるんですよ、純は。
               ――滝田誠一郎著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 その村井氏は、このネットワークの分野に入り込むきっかけと
なったのは「コンピュータが嫌いであり、コンピュータをやって
いるヤツも嫌いだったから」――そういうように話し、次のよう
に述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 なぜかというと、コンピュータに人が群がっていたから。機械
 に人が群がるとは何ごとだと。機械は人間を支えるための道具
 なんだから、コンピュータも道具として人間を支えるべきだ、
 と。直感的に思った。    ――滝田誠一郎著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように村井氏はつねに先をみつめ、手を打っていったこと
がわかります。あえて専用線を使わず、UNIXマシンさえあれ
ば、コンピュータ同士をつなげるUUCPを採用し、多くの大学
や研究機関につなぎやすい環境を提供したのも、広域ネットワー
クを構築するという目的があったからです。それが、1984年
にJUNETとして結実し、4年後にWIDEプロジェクトとし
て実るのです。 ―― [インターネットの歴史 Part2/10]


≪画像および関連情報≫
 ・ネットニューズとは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ネットニューズはコンピュータネットワークでの情報交換に
  使われるシステムのうち、広範に用いられたものとしては、
  Eメールとともに、最も古いシステムの1つである。インタ
  ーネットやWWWが一般的に普及する前から存在している。
  初期のネットニューズはEメールと同様に、IPによらず、
  UUCPで配送された。現在では、やはりEメールと同様に
  ほぼ全てのネットニュースのトラフィックはIPにより配送
  されている。通信プロトコルは、今日ではNNTPが多く使
  われるが、もともとはUUCPで配送されていた。
                    ――ウィキぺディア
  ―――――――――――――――――――――――――――
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posted by 平野 浩 at 04:41| Comment(0) | TrackBack(0) | インターネットの歴史 Part2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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