のの、ほとんど国交断絶に近い関係になっています。両国とも新
政権ができているのに、両国首脳は電話会談すらできない関係に
なっています。その原因は、いうまでもなく、日本の尖閣諸島の
国有化に2012年9月11日に日本が尖閣諸島を国有化したこ
とにあります。
これが原因で中国国内では激しい反日デモが勃発し、中国の公
船が毎日のように尖閣周辺海域に出没し、日本の領海を侵犯して
まさに一触即発の緊張状態を作り出しています。いつ局地戦が起
こっても不思議ではない危機的状況です。
尖閣諸島問題に火を点けたのは石原慎太郎東京都知事(当時)
です。尖閣諸島を東京都が買い取ると宣言したからです。しかも
日本ではなく、米国でその宣言を行ったのです。米ワシントンの
ヘリテージ財団主催のシンポジウムにおける講演の場で、尖閣諸
島を地権者から買い取る方向で基本合意したことを明らかにした
のです。しかもそのことを政府に対しては一切相談していないの
です。2012年4月16日のことです。
中国に詳しいジャーナリストの富坂聡氏は、むしろ東京都が、
一切秘密裏に島の所有者から尖閣諸島を買い上げ、必要な手続き
を行ってしまうのがいちばんよかったといっています。日本とし
ては、尖閣諸島の棚上げに同意したわけではないのですから、日
本国内の土地の所有権を東京都に変更しても何ら問題はないはず
です。富坂氏は次のように述べています。
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今回のことで私が残念に思うのは、さっさと黙ってやってしま
えばよかったのに、ということ。ある日突然、都が一年前から
所有者となっていたと発表する。これなら中国は怒りようがな
い。ところが今回のように、やるぞ、やるぞ、と騒いだら、当
然中国はそうはさせじと反応してくるわけですね。(中略)今
後、摩擦が高まった時に、アメリカが得策でないと判断した場
合、日本は退かざるを得なくなる、ということにもなりかねま
せん。国内で行う売買さえも中国がノーと言ったらできないと
いう悪しき実績をつくってしまったら、それこそ取り返しがつ
かない。そうなった場合の外交的敗北は非常に大きい。東京都
はそんなリスクの高いことをやって、いったい責任がとれるの
かと私は問いたい。あまりにも軽率だったと私は思うのです。
──富坂聡著/「間違いだらけの対中国戦略
/日本人だけが知らない中国の弱点」/新人物往来社刊
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石原都知事(当時)の発言に中国はほとんど反応しなかったの
です。なぜかというと、石原氏によるこの種の発言ははじめてで
はないし、東京都の知事といえども中国の感覚からいえば、地方
政府であり、日本政府が善処するだろうと考えていたのです。
しかし、野田前首相に石原氏を説得する力はなかったし、東京
都に尖閣諸島を買い取らせる選択肢もなかったのです。それどこ
ろか、東京都が買い取ってしまうと、公然と島に上陸し、測量を
したり、灯台を建てたり、港を作ったりして、中国との間に深刻
な対立が生まれることを懸念し、東京都と争うように地権者と交
渉し、強引に国が買い取ったのです。
石原氏は、東京都知事時代から沖縄や尖閣諸島の日本の領土に
関しての発言を米国で何回もやっているのです。
その1つは、いささか旧聞に属しますが、2005年11月に
ニューヨークの外交政策協会での石原氏の講演があります。この
講演の内容は「文藝春秋」2006年2月号に全文が掲載されて
いますが、その概要は次の通りです。
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中国が意図している東アジアにおける軍事的なヘゲモニーにと
って、もっとも目障りなバリアは日米安保条約だろう。その日
米安保体制を保障している重要な戦略基地の一つが沖縄だが、
ここに原爆なり水爆が一発落ちたら、アメリカが抱えている基
地は全滅するだろうし、沖縄も全滅する。そういう事態に対し
てアメリカがどう対処し、報復するかということについて、私
はあまり楽観できない。アメリカは大きくたじろぐだろうし、
場合によっては安保体制が崩れるかもしれない。中国は、そう
いうものを可能にするための戦略の展開をいくつかおこなって
いる。その一つが潜水艦の数を急速に増やしっつあること。毎
年ロシアから10ずつディーゼル型の潜水艦を買っている。こ
のまま5年経つと中国の抱える潜水艦の数は130隻。アメリ
カが太平洋で有する潜水艦の数は37隻、これは致命的なこと
になる。 ──鳥居民著/草思社
「それでも戦争できない中国/中国共産党が恐れているもの」
―――――――――――――――――――――――――――――
講演の第2弾が2012年4月16日のワシントンのヘリテー
ジ財団主催のシンポジウムでの講演であり、それに駄目を押すよ
うに東京都は2012年7月27日付の米紙「ウォールストリー
ト・ジャーナル」紙に、尖閣諸島を東京都が購入することへの理
解と支持を求める意見広告を掲載しているのです。意見広告の要
旨は次の通りです。
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成長著しい中国が東シナ海で、歴史的に日本の領土である尖閣
諸島への圧力を強めている。アジアの海域が不安定な状況にな
れば、アメリカにとっても経済的な面などに影響を及ぼす。こ
の問題で中国と対峙するアジア諸国を支持しなければ、アメリ
カは太平洋の全てを失いかねない。─2012年7月27日付
の米紙「ウォールストリート・ジャーナル」紙
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この意見広告には、国内では、東京都が買い取りを予定してい
る尖閣諸島3島しか記載しておらず誤解を招くという批判や、東
京都がなぜそのための莫大な広告費(約1600万円)を払わな
ければならないのかといった多くの不満が噴出したのです。
─── [新中国論/53]
≪画像および関連情報≫
●東京都の米紙掲載意見広告に対する疑問
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昨夏、東京都が米紙に出した「尖閣」意見広告をめぐり奇妙
な事実が明らかになった。「尖閣諸島」は8島全体をさす総
称であるにもかかわらず、意見広告では石原都知事(当時)
が購入を表明した3島だけを地図に載せて「尖閣諸島」と説
明していたのだ。米軍に貸与中の久場島(現在も民有地)と
大正島の2島は、米国領と勘違いしているためか、特に説明
もなく地図から省かれ、本文でも「尖閣諸島は3島」とも誤
解されかねない表現。残りの領土は放棄したいという意見表
明なのか。都は「紙面の制約」と釈明するが、1600万円
もの税金で「理解と支援」を求めた意見広告にしてはお粗末
で、むしろ「米国のために尽くしたい」という石原氏の卑屈
な精神ばかりを伝える内容にも見える。当該広告を全訳とと
もに検証する。 http://www.mynewsjapan.com/reports/1759
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東京都が米紙に掲載した意見広告
WJFプロジェクト
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