ばかりです。しかもこれから10年も続くのです。それがこの政
権で中国共産党は終るというのですから、ことは穏やかではない
のです。しかも2020年までの10年も持たず、前期の5年で
中国共産党は終るという人さえいるのです。
一般論として、習近平新政権の抱える課題には次の4つがある
といわれています。
―――――――――――――――――――――――――――――
1.「政経乖離」
2.「国進民退」
3.「外強内弱」
4.「官腐民怨」
──沈才彬著/「大研究!中国共産党」/角川SSC新書
―――――――――――――――――――――――――――――
第1の課題である「政経乖離」は、経済改革が先行し、政治改
革が遅れることを意味しています。
ケ小平は改革開放路線の実施によって、経済改革を政治改革よ
り優先させたのです。そのため、経済はもの凄い勢いで発展した
のですが、政治改革の方は置き去りにされたのです。とくに天安
門事件が起こってからは、政治改革を口にすることは一切タブー
になってしまったのです。
しかし、その結果として、経済と政治のギャップが拡大し、こ
のギャップを解消しないと、肝心の経済の持続的成長が困難にな
り、共産党の一党支配も崩壊することになります。これが、「政
経乖離」です。
第2の課題である「国進民退」は、国有企業が躍進し、民間企
業が後退することを意味しています。
中国の国有企業については、4月5日のEJ第3521号で述
べましたが、中国では圧倒的に国有企業が多く、民間企業の影が
薄いのです。リーマン・ショックのさいの4兆元投資の景気対策
資金のほとんどは、これら国有企業に投入されたのです。米誌の
「フォーチュン」は、世界の企業の上位500社を選んでランキ
ングを発表しています。2012年の「フォーチュン500」の
ランキングによると、中国企業は73社、はじめて日本企業68
社を上回ったのです。ここでも中日逆転が起きています。
しかし、国有企業がこれほど突出すれば、その分民間企業が後
退するわけです。民間企業が伸びなければ、真の経済成長の持続
は期待できないわけです。まさに「国進民退」です。
第3の課題である「外強内弱」は、外需に強く依存し、内需が
きわめて弱いことを意味しています。
これまで中国の経済成長を支えてきたのは輸出です。その主な
対象は日米欧の先進3地域です。しかし、これら3地域はいずれ
も長引く不景気にあえいでいて、今後のさらなる伸びが期待でき
ない状況です。とくに中国の最大の輸出先である日本との関係は
現在悪化しており、これが中国の経済発展に大きな足かせになっ
ています。もはや輸出依存は限界に達しているのです。
しかし、そうかといって、既に述べているように、中国の内需
はあまりにも弱いのです。なぜなら、一部の富裕層が富を独占し
格差が拡大しているからです。
第4の課題である「官腐民怨」は、役人が腐敗し、格差で国民
の不満が募ることを意味しているのです。
役人──中国共産党高官の腐敗は止まるところを知らないので
す。胡錦濤も習近平も「腐敗根絶」を訴えていますが、それは中
央委員会委員以上の高官に集中しているのです。したがって、腐
敗を根絶させるということは彼ら自身の問題なのです。そして、
それを裁くのも彼ら自身なのです。こういう政治的な仕組みも民
衆の怒りを買っているのです。
腐敗のほとんどは収賄罪なのですが、問題はその金額が巨額で
あることです。沈才彬氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
腐敗現象が蔓延する特徴の1つに、腐敗幹部による収賄金額が
巨額であるということがある。5年前、中国のマスコミが、腐
敗で逮捕された局長・課長クラス30人に関するアンケート調
査を行った。この調査では、1人あたりの腐敗金額の平均がど
れくらいかが判明している。驚くことに平均3000万円であ
る。しかし今、この額は数倍に跳ね上がっている。
──沈才彬著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
本当に腐敗を根絶するには、共産党一党支配という政治の仕組
みそのものを変える必要があります。したがって、この問題はど
んなに真剣に取り組んでも成功しないのです。しかし、これをや
らないと、民衆の怒りを止められなくなる。これが一番中国高官
にとって怖いわけです。だから、フランス革命的革命を恐れ、海
外に高跳びしようとするのです。
石平氏によると、中国の収賄は「官民」間で行われるだけでは
なく、「官官」の間の収賄もあるとして、次のように述べていま
す。まさに底知れない腐敗の蔓延です。
―――――――――――――――――――――――――――――
もうひとつ深刻な問題があります。官僚はただ収賄して自分た
ちが金持ちになるだけじゃないんですね。幹部になると、上に
上がるために幹部もお互いに賄賂を贈るんですよ。賄賂という
のは、幹部と商売人の間の関係だけじゃないんです。いわゆる
買官ですね。幹部の地位を買う。いまはもう公然と行なわれる
事態になっているんです。地方に行ったら、官職はだいたいの
ところ値段が付けられているんです。財政局長とか国土管理局
長は、いちばん値段が高い。何故なら利権が大きいからです。
いちばん安いのは教育局長みたいな閑職(笑)。
──石平/宮崎正弘著
「2013年後期の『中国』を予測する」/ワック刊
―――――――――――――――――――――――――――――
─── [新中国論/51]
≪画像および関連情報≫
●調べなければ、調べたら/中国の反腐敗運動/BLOGOS
―――――――――――――――――――――――――――
中国の習近平指導部は、官僚の腐敗撲滅を重要な政治課題に
している。そこで、失脚した薄熙来がかつてトップをつとめ
た重慶市を切口に、官僚たちの腐敗状況を調査したところ、
中国の官僚の腐敗の特色は以下の通りであった。調べなけれ
ば、人民には党が樹立した清廉潔白の模範人物「孔繁森」に
見えるが、調べたら、全員が汚職問題で自殺した元北京市副
市長の「王宝森」のようであった。調べなければ、腐敗は会
議場の最前列に坐っている幹部たちのように見えるが、調べ
たら、すべて壇上に坐っている共産党指導層に根源があるこ
とが分かった。調べなければ、共産党幹部はみんな真面目く
さった顔をしているが、調べたら、一人もまともなものがい
ないことが分かった。調べなければ、道路はどこでも美しい
花草に飾られた立派なものだが、調べたら何処も彼処も「お
から工事」(手抜き工事)だと判明した。調べなければ、誰
も革命のために職場で勤勉に働いているように見えるが、調
べたら、共産党幹部はみんな海外に移住するためのグリーン
カードを所持していた。調べなければ、共産党幹部はみんな
「人民」に奉仕しているように見えるが、調べたら全員「人
民元」に奉仕していることが分かった。
http://blogos.com/article/56377/
―――――――――――――――――――――――――――
石平/宮崎正弘共著の中国本