2013年05月22日

●「海外に逃亡を図る中国共産党幹部」(EJ第3551号)

 2010年の日本のジニ係数は、0.336 でしたが、同じ年
の中国のジニ係数は0.61 (公表値は0.474/2012)
であって、北朝鮮よりも悪い数字になっています。それだけ格差
が拡がっているということです。
 西南財経大学の研究センターの調査によると、中国の全家庭の
55%は貯金がゼロ。世界第2の経済大国がこの有様です。中国
の富はどこへ行ってしまったのでしょうか。
 同じ研究センターの調査によると、大体75%の金融資産の貯
蓄が、上位1割の人々に集中している。このように富は偏在して
います。その資金が中国に止まっていれば、内需拡大の起爆剤に
なりうるのですが、そうはならないのです。なぜなら、その資金
の多くは海外に逃げ出しているからです。
 2012年8月のことですが、中国の北京空港でちょっとした
騒ぎがあったのです。1機の旅客機を100人以上の警官が取り
囲むという騒ぎです。実はこの飛行機は、中国国際航空の北京発
ニューヨーク行きの便で、約7時間のフライトの後、急遽北京へ
引き返してきたのです。
 表向きの理由は、同機が脅迫を受けたというものですが、本当
の理由は海外に逃亡を図った中国の高官が搭乗していることを国
家安全部が情報をキャッチし、北京への帰還を命令したのです。
他の乗客もいるのに随分乱暴な話ですが、中国はそのようなこと
を平気で行う国です。
 なぜ、中国の高官が海外に逃げ出すのかというと、汚職の摘発
を恐れて高跳びするケースが多いのです。とくに政権の交代直前
にはこういうことはよく起きるのです。
 それもいきなり身辺に危険が迫ってから慌てて逃げ出すという
よりも計画的に逃亡するケースが多いのです。この逃亡手順につ
いて、拓殖大学・華僑研究センター長の渋谷司氏は、次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 一般的な海外逃亡の手順はこうだ。まず自分の息子か娘を留学
 させる。次に妻が出国する。地下銀行などを使って資産を海外
 に移転するといった準備を進め、最後に本人が中国を脱出し、
 逃亡が完了する。各省や直轄市幹部の子女の75%がアメリカ
 のグリーンカード(永住権)、あるいはアメリカ国籍を取得し
 ているとされる。自分の子供がアメリカ国籍を持っていれば、
 本人も永住権を取りやすいからだ。子女の留学が本人の逃亡の
 布石になるのである。  ──SAPIO/2013年6月号
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国社会科学院の調査によると、海外に逃亡した中国高官の数
は、1990年代以降、1万6000〜1万8000人であると
いいます。しかし、中国の統計は信用できないので、その数はこ
れよりもはるかに多くなると思われます。
 中国の司法や警察の総元締めは、政治局常務委員の管轄下にあ
る次の2つの委員会なのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.中央規律委員会 ・・・・・党内部の汚職や犯罪の摘発
 2.中央政法委員会 ・・・・・社会全体の犯罪全般の取締
―――――――――――――――――――――――――――――
 中央規律委員会は、共産党内部の汚職や犯罪の摘発を担当する
委員会です。これに対して中央政法委員会は、党内も含めて社会
全体の犯罪全般を取り締まる委員会です。そのため、警察力も有
しているのです。
 これら2つの委員会は政治局常務委員の管轄下にあったのです
が、習近平政権では中央政法委員会は政治局業務委員の管轄から
は外れています。薄熙来事件でミソをつけたことが原因とされ、
いずれ解体される運命にあります。
 実は、胡錦濤前政権の時代にはこの2つの委員会は、上海閥の
江沢民派が握っていたのです。中央規律委員会は賀国強、中央政
法委員会は周永康がそれぞれ書記を務めているのです。賀国強は
上海閥に属し、江沢民の子分といわれた人物ですし、周永康も江
沢民にきわめて近い人物です。とにかくこの2つのポストを握っ
ていれば、上海閥としては強大な権限を駆使できたのです。
 とくに賀国強の役割は胡錦濤派(団派)を上海閥に寝返らせる
ことと、上海閥に属する者の汚職や犯罪の摘発・逮捕をさせない
ようにすることの2つです。
 ところが、習近平体制になると、中央規律委員会には団派でも
上海閥でもない王岐山副首相が書記に就任し、習主席は「腐敗防
止」を政策として強く訴えているので、これからは中国から逃亡
することは困難になると思われます。しかし、あまりこれを厳し
くやると、自分へ跳ね返ってくることも多く、果たして習近平主
席がどこまでやれるか注目されます。
 1995年〜2005年の統計ですが、子女を海外に定住させ
た中国高官は既に約118万人もいるのです。この状態は彼らの
海外脱出の準備が完了しているともいえるので、自分の身に少し
でも危険が迫れば、いつても身ひとつで逃げ出すことができるの
です。そのため、彼らは「裸官」と呼ばれるのです。
 このような「裸官」は、中央政府だけでなく、地方政府にも多
くの裸官がいます。これらの裸官の動静について、華僑研究セン
ター長の渋谷司氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国国内に残っている「裸官」たちはどのタイミングで動き出
 すのか。これまで同様に収賄の疑いをかけられることをきっか
 けに逃げ出す者が出てくるだろう。さらにこれから増えるのは
 中国という国家の未来に希望を失った逃亡だ。一斉逃亡のトリ
 ガーとなるのは経済成長の減速・停滞であろう。国家の危うい
 バランスをなんとか見せかけの成長で支えていることを裸官た
 ちは知っている。遅かれ、早かれ、その時はやってくる。
             ──SAPIO/2013年6月号
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ─── [新中国論/49]

≪画像および関連情報≫
 ●幹部の国外逃亡にみる中国共産党の内部崩壊の兆し
  ―――――――――――――――――――――――――――
  中国商務部が先日発表した調査報告によると、ここ30年来
  中国から逃亡した官吏の人数はおよそ4千人で、約500数
  億ドルを持ち逃げしたという。これらの逃亡官吏の大多数は
  権力があり、金もありのナンバーワンまたは銀行で働いてい
  た官吏である。彼らの中には、国有企業の理事長や社長、銀
  行支店の頭取、支店の主任、共産党の副市長、庁長、甚だし
  きに至っては部長級の官吏さえもいた。更に驚いたのは、こ
  れらの官吏の大部分は、逃亡する前からいわゆる「裸官」で
  あった。つまり、その配偶者や子女をすでに海外に出国させ
  ており、自分一人が国内に残っているのである。適当な時機
  を見つけて、これらの官吏は正規の証明書で堂々と出国する
  か、偽の身分証を使ってパスポートを作り、旅行団を通じて
  出国して第三国へ出る。これらの逃亡官吏が一番気に入って
  いるのは独立した司法体系を持つ国、例えば米国、ヨーロッ
  パ、カナダ、オーストラリアなどであり、これらの国は通常
  北京政権の圧力があっても彼らを引き渡さないからである。
  http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=226508
  ―――――――――――――――――――――――――――

賀国強/周永康.jpg
賀国強/周永康
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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