2013年05月14日

●「10年ごとに景気が底を打つ中国」(第3545号)

 中国が経済危機を起こす原因として、前回2つの要因を上げま
したが、再現しておきます。
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   第1の原因/不動産バブルの崩壊と地方政府債務危機
   第2の原因/国際的、政治的要因によるバブルの崩壊
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 第1の原因は前回述べたので、第2の原因について考えます。
ここで注目すべきは、政治的要因によるバブルの崩壊です。具体
的にいうと、政治的にバブルを崩壊させることです。
 実は胡錦濤時代に経済を担当していた温家宝首相は、2012
年度にさらに財政出動をして、景気のテコ入れをしたかったので
すが、胡錦濤国家主席は絶対にそれを許さなかったのです。
 当時中国政府は、金融の引き締めをしており、景気が低迷して
いたのですが、これは次期首相が事実上内定していた李克強副首
相(当時)が胡錦濤国家主席に進言して実施していたといわれて
います。この副首相時代の李克強の考え方について、石平氏は次
のように述べています。
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 李克強には見えているのです。不動産バブルを今のうちに潰さ
 ないままにしておけば、自分の代になって必ずバブルが崩壊す
 るだろうと。だから、どうせ不動産バブルが崩壊するのなら、
 今のうちに、自分が首相に就任する前に、全部膿を出し切って
 おきたいと考えているのでしょう。ですから、今、政府が金融
 の引き締めやバブルを崩壊させるという政策を取っているのは
 私の見る限り副首相の李克強のほうです。また、李克強は胡錦
 涛に直訴して、「私の考えていることを認めてくれなければ、
 もうやっていけません」と。こうやって胡錦濤の支持を取り付
 けて、金融の引き締めの方向に走っているのです。
                  ──副島隆彦/石平共著
     『中国崩壊か繁栄か!?/殴り合い激論』/李白社刊
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 しかし、胡錦濤時代にバブルは崩壊せず、習近平政権は発足し
たのです。もしバブルが崩壊すれば、当然のことながら、中国経
済に強い衝撃をもたらします。多くの中小企業は倒産し、銀行は
破綻し、地方政府も破綻することになりますが、政治的には誰の
責任であるかが問われることになります。
 したがって、この7月か8月に中国経済のバブルが崩壊すれば
旧政権の責任になるのは明らかです。そういう背景から、7月の
中国経済の自壊説が出てきたのではないかと思われます。
 中国経済の歴史を見ると、これまで大体8年〜10年で景気が
底を打っていることがわかります。
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       1.   建国時期/1949年
       2.  大躍進運動/1957年
       3.  文化大革命/1966年
       4.  毛沢東死去/1976年
       5.  天安門事件/1989年
       6.アジア金融危機/1998年
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 アジア金融危機から10年というと、2008年になりますが
ここで世界的金融危機(リーマンショック)が起こっています。
しかし、中国は、4兆元の緊急財政支援を行い、これをしのいで
います。つまり、先送りしたわけです。
 しかし、これ以上先送りはできないのです。建国以来の60年
に一度の大不況が襲ってくる恐れもあります。それが今年の7月
に起きる可能性が高いというのです。
 これに加えて、発展研究センターのL副所長の論文は、現在の
中国には次の5つの「熱」が生じており、それが深刻な社会危機
を形成していることを伝えています。
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          1. 公務員「熱」
          2.国有企業「熱」
          3. 不動産「熱」
          4.  投機「熱」
          5.  移民「熱」
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 中国では誰もが公務員になろうとします。現在ではその倍率は
数千倍だそうです。なぜなら、公務員になると、カネと権力と勢
力と保障があるからです。しかし、公務員熱が高まると、国家の
改革は後退するのです。
 中国では、企業といえば国有企業です。1つの国有企業の売上
高が、民間企業上位500社の売上高の総計と同じというのはザ
ラです。国有企業がこれほどの力を持つと、当然のことながら改
革は遠のくことになります。
 また、現在中国では不動産ブームが起きています。中国の白物
家電のハイアールや電機メーカーのTCLといった不動産業でな
い企業までが不動産開発に熱を上げているのです。日本のバブル
時代とまったく同じ現象が起きているのです。
 これに伴い投資ブームが起きています。投資対象は不動産だけ
ではなく、株式にも投資熱が起きています。株式に投資しない者
は、農産品でも何でも投資の対象とします。しかし、中国の株は
政府幹部が情報を独占しており、一般投資家のほとんどは損する
ことになります。
 このようにして投資で富を築いた成功者──とくに共産党幹部
の場合は、国を捨てて国外に高跳びするのです。これが中国の現
実なのです。
 この経済危機と社会危機の到来──いずれこれは近いうちに現
実のものになると論文には書いてあるのです。これらの指摘は敵
国の批判ではなく、習近平国家主席のブレーンの手による論文な
のです。論文は34ページにわたるもので、週刊現代編集部はそ
の全文を入手したのです。     ─── [新中国論/43]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国不動産バブル崩壊」説は大げさ
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  【新華社スイス・ダボス/2013年1月29日】 スイス
  のダボスで世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出
  席している中国不動産大手、万科集団の王石董事長がこのほ
  ど、「中国不動産市場にバブルが存在するのは確かだが、バ
  ブルが崩壊するほどまでにはなっていない。国が不動産市場
  へのマクロコントロールを行っており、不動産価格は一定程
  度、抑えられている」と述べ、中国の「不動産バブル崩壊」
  説は大げさな表現だとの見方を示した。王董事長は中国不動
  産市場にバブルが存在すること自体は否定せず、「バブルが
  あるためそれを抑える必要がある。抑えずにバブルが崩壊す
  れば、不動産市場だけでなく国民経済の健全な発展にも影響
  が及ぶ」と話した。中国不動産市場でバブルが崩壊するとこ
  ろまで来ているとの見方について王董事長は、「それは大げ
  さだ」と主張。「日本のバブル経済の時期となった1970
  〜80年代、住宅ローンを完済するには家族3代での返済が
  必要だったが、中国の不動産価格がそれほどに至っていない
  ことは明らかだ」と話した。王董事長はまた、「国が不動産
  市場に対してマクロコントロールを実施し始めた10年以降
  大都市と一部中規模都市の不動産価格は抑えられている。全
  国で平均価格がまだ上昇しているとは言え、1人当たりの収
  入がそれ以上に増えていることを考えれば、不動産価格は相
  対的に下がっていると言える」と指摘。また、「不動産市場
  にとって不動産価格を抑えることは必要だ。この視点からす
  れば、中央政府の政策は非常に効果がある」と話した。
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130129-00000000-xinhua-cn
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大手企業・万科/王石董事長.jpg
大手企業・万科/王石董事長
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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