2007年03月14日

日本でも78年にイーサネットは稼働している(EJ第2039号)

 日本において「インターネットの父」といわれる人は、村井純
という人物であることで衆目は一致しています。慶応義塾大学教
授(常任理事)の村井純氏です。
 しかし、この村井純氏――これまでインターネットのために尽
くした業績が素晴らしいにもかかわらず、一般的にはそれほど有
名ではないのです。テレビにあまり登場しないからでしょうか。
テレビ局も積極的に出演を求めていないようです。しかし、マス
コミ嫌いではなく、IT系の雑誌にはよく登場しています。
 少なくとも慶応義塾大学教授といって真っ先に名前の出てくる
人でないことは確かです。今や慶応義塾大学教授といえば、浅野
史郎氏や竹中平蔵氏――これらの人々は有名人を教授にした感が
あるので例外としても、経済学の池尾和人氏、朝鮮問題の小此木
政夫氏ぐらいしか名前が浮んでこないのです。しかし、電子・通
信技術に関する政府系のプロジェクトなどには、必ずといってよ
いほど、メンバーに名前を連ねている人です。
 今回のテーマは、結局は村井教授がインターネットで何をやっ
たかについて書くことになるのですが、その前に、「日本のイン
ターネットの祖父」について述べる必要があります。
 インターネットの祖父――これを自称するのは所眞理雄なる人
物です。現在、ソニー株式会社上席常務IT研究所長をされてい
る方です。1976年――この所氏が慶応義塾大学院の電気工学
専攻の博士課程を修了して、同大学工学部の助手をして、相磯秀
夫教授の下で働いていたときの話です。
 あるとき所氏は、米国で発行されているコンピュータの学会誌
である「COMUNICATION OF THE ACM」 に掲載された次の論
文を読んで愕然としたといいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ロバート・メトカフ/デビット・ボックス共著
 「イーサネット:ローカル・コンピュータネットワークにおけ
 る分散パケット交換」
―――――――――――――――――――――――――――――
 この論文は、イーサネット――LANの主流の形態――の開発
者として名高いPARCのロバート・メトカフとデビット・ボッ
グスが書いた最初の論文です。所氏は、主としてLANや複数の
CPUを搭載したシステム――マルチプロセッサ関係の研究をし
ていたので興味を持ったのです。
 それなら、なぜ、愕然としたのでしょうか。これについて所氏
は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ネットワークというのは、代わり番こに誰が話すかを決めた上
 で会話をするようなもんなんですね、普通は。ところがイーサ
 ネットというのは、みんなが好き勝手にディスカッションして
 いるのと同じで、自分がしゃべりたくなったらパッとしゃべれ
 ばいい。うまくいけばそのまましゃべることができるし、ほか
 の誰かが喋っていたらそれを察知して黙る、と。そういう方式
 なんです。論文にそういうことが書いてあった。これはもの凄
 く画期的なものだと感じられたんですね、ぼくには。これから
 はイーサネットがLANの主流になると直感した。
             ――滝田誠一郎著、『電脳創世記/
 インターネットにかけた男たちの軌跡』 実業之日本社刊より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ちなみに、これはデータ通信の話であって、電話のようにしゃ
べるという意味ではないのです。現在、われわれがやっているよ
うに、好きなときにメールを出したり、受信したりする――そう
いう環境をイーサネットでは実現できるといっているのです。
 所氏のいう「ネットワークというのは代わり番こに誰が話すか
を決めた上で会話をするようなもの」という表現は、確かに通信
技術のポイントを衝いています。
 LANのネットワークは、ネットワークに接続しているどれか
のコンピュータが電気信号――以下、パケットを流している間は
他のコンピュータはパケットを発信できないからです。もし、何
かのタイミングで回線上に複数のパケットがのると、衝突(コリ
ジョン)が発生し、データは消失してしまうのです。
 ところがメトカフの論文によると、イーサネットの場合、ネッ
トワークに多くのコンピュータが接続され、それぞれのコンピュ
ータが自由にパケットを流してコミュニケーションがとれると書
いてあったので、愕然としたというわけです。
 どうして、そのようなことができたのでしょうか。
 メトカフは、パケットのコリジョンそのものは避けられないと
判断し、次の2つの方法をとったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.衝突が起こったら早くそれを知る
    2.衝突を知ったら直ちに再送信する
―――――――――――――――――――――――――――――
 イーサネットで一番困るのは、衝突が起こったとき、コンピュ
ータはパケットの再送信を行うのですが、その再送信のタイミン
グが合ってしまい、再び衝突が起こることなのです。
 これを防ぐ方法をメトカフは、ALOHAシステムの開発者で
あるエブラムソンから得ているのです。それはパケットの衝突が
起こったコンピュータが行う再送信のタイミングを乱数を発生さ
せることによってそれぞれずらす方法です。これを「バックオフ
アルゴリズム」といっています。
 この論文を読んで所氏はすぐ相磯教授に報告し、実験をしてみ
ようということになったのです。そこで、相磯教授は通信に強い
所眞理雄とハードに強い小田徹(現豊田工業大学助教授)という
2人の助手でチームを組ませて、実際にイーサネットの構築に成
功しています。日本初のイーサネットの誕生です。
 しかも、所氏はパケットの衝突そのものを起こさない技術をそ
れに取り入れています。これを「アクノレッジング・イーサネッ
ト」と命名しています。 
       ・・ [インターネットの歴史 Part2/06]


≪画像および関連情報≫
 ・ALOHAシステムとイーサネット
  ―――――――――――――――――――――――――――
  イーサネットの起源は,ハワイ大学のノーマン・エブラムソ
  ン教授が開発した「ALOHAシステム」といわれます。ノ
  ーマン氏はハワイ諸島をつなぐ軍用無線通信システムを使い
  複数のコンピュータが任意のコンピュータと同時に通信する
  手段として「ALOHAシステム」を開発したのです。この
  「ALOHAシステム」では,同じ周波数の電波を使って,
  ハワイのそれぞれの島にあるコンピュータ同士が通信してい
  ました。無線という一つの空間を通して,複数の人間が同時
  に会話をしていたようなものでした。
  ―――――――――――――――――――――――――――
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060414/235337/?ST=nettech

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posted by 平野 浩 at 05:12| Comment(0) | TrackBack(1) | インターネットの歴史 Part2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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