2013年05月02日

●「中国の再生策は重慶モデルにある」(EJ第3539号)

 中国の改革開放政策がはじまったのは1978年のことです。
政権を握ったケ小平は、毛沢東時代の大躍進や文化大革命で疲弊
した経済を立て直すため、「4つの近代化」を掲げて、市場経済
体制への移行を図ったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        1.  「工業」の近代化
        2.  「農業」の近代化
        3.  「国防」の近代化
        4.「科学技術」の近代化
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、その結果、税財源の多くが地方政府に帰属してしまう
ので、中央政府の財政力が相対的に弱体化したのです。その結果
1990年になると、中央財政は深刻な財政難に陥ったのです。
 具体的にいうと、国家財政における「2つの比率」に低下の傾
向がみられるようになったことです。ちなみに、国家財政とは、
中央財政と地方財政の合計、2つの比率とは次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.   GDPにおける国家財政収入比率
    2.国家財政収入における中央財政収入比率
―――――――――――――――――――――――――――――
 「GDPにおける国家財政収入比率」は、1980年の25%
から1993年には12%、「国家財政収入における中央財政収
入比率」は、1980年の24.5 %から1993年には22%
に落ち込んでしまったのです。
 このことを憂慮した中国政府は、税目を次の3つに分けて、中
央政府と地方政府の機能分担を明確にしたのです。この改革のこ
とを「分税制」というのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
           1.  中央税
           2.共通配分税
           3.  地方税
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、この「分税制」は本来地方政府に入るべき税源を中央
政府に委譲する性格を持っているので、中央と地方の妥協の産物
になったのです。具体的には、中央が地方の既得権を認めて保証
するなど、その運用について多くの問題点がみられたのです。
 しかし、この分税制によって中央財政は息を吹き返すのです。
何よりも税を分けたことによって徴税行政が強化され、大幅な税
収増に結びついたことと、おりからの経済成長がそれを加速させ
たので、中央財政はみるみる財力をつけたのです。
 しかし、分税制は、公債を発行する権限のない省レベルは、中
央が省から財源を引き上げたのだから、中央にならって下の市や
県レベルから財源を公然と吸い上げるようになり、中央集権的な
体制になっていったのです。そうなると、下級レベルの郷・鎮レ
ベルは、慢性的赤字にならざるを得ないのです。
 その結果、下層レベル──とくに農村部は、財源確保のため、
本来やるべきではないことをはじめたのです。津上俊哉氏はその
弊害を3つ上げ、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 第一は、「一人っ子政策」違反の名目で(それも政策に違反し
 て出産した「超生」だけでなく、検査の不受診など様々な名目
 を勝手に立てて)農民からむやみに罰金を徴収する行為、第二
 は、上級政府から「治安維持(維穏)」の予算を下付してもら
 うため、「危険分子」をみつけて報告、監視する行為、そして
 第三は、土地の処分益を巡る村幹部の専横・不正である。前二
 者は、いずれも役人が必要な食い扶持を得るために、罰金徴収
 の名目を勝手に拡大する、「『危険分子』何人仕立てて来い」
 式の本末転倒を招いている。土地の処分益を巡る村幹部と住民
 の諍いも後を絶たない。そういう「体制」が全国無数の群衆暴
 動事件を引き起こし、共産党の統治に対する信任を傷付けてき
 たのである。               ──津上俊哉著
         「中国台頭の終焉」/日経プレミアシリーズ
―――――――――――――――――――――――――――――
 この事態に対して、中央政府は手をこまねいていたわけではな
いのです。中央政府の財政は豊かになっているので、急速な勢い
で、地方財政に対する所得移転を増加させています。
 しかし、それは、下から上に陳情して下付するタテ割りの補助
金のかたちで行われるところに大きな問題があるのです。省から
市、市から県、いくつものプロセスを重ねるごとに腐敗が増殖す
るのです。日本でも同じですが、そのようにして下付された補助
金の使い方には、上の政府の意向に沿って行わなければならない
ので、財政自主権が欠如してしまうのです。
 この難問を解決する方法がないわけではないのです。それは李
克強新首相の目指そうとしている「農村の都市化」にあります。
これによって生ずる開発差益を、年金、医療、教育など、農民を
都市住民化するための財政需要の財源として使うのです。
 そのためには、都市住民と農民が別戸籍という問題を解決する
必要があります。これについては、農民が都市住民になるには、
農村での農宅地や耕作用農地の権利を放棄することを条件に、都
市戸籍を付与するとによて、年金などの都市サービスを与えよう
という構想です。
 この構想に基づく実験に着手した直轄市(省級)があります。
あの薄熙来が党委書記を務めていた重慶市です。薄熙来は都市戸
籍のない、都市に長期定住している農民とその家族に対し、都市
在住の実績を十分考慮して都市戸籍を与える「重慶モデル構想」
を打ち出したのです。
 重慶モデルは、3年間で3千万平方メートルの低廉賃金住宅を
建設して供給するとともに人口規模20万人以上のコミュニティ
を21ヶ所建設し、そこに500万人を収容するなどの壮大な構
想です。財源が問題ですが、現状を改革するという姿勢に多くの
農民は支持したのです。      ─── [新中国論/37]

≪画像および関連情報≫
 ●薄熙来が目指す「重慶モデル」/加藤嘉一氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「重慶模式」を代表する政策のツートップはなんと言っても
  「公営賃貸住宅の大規模建設」と「戸籍制度改革」にある。
  安価な公営賃貸住宅は中国語で「公租房」という。重慶政府
  は今後3年以内に、4000万平方メートル分の住宅を公的
  資金で建設し、100〜200万人の住居問題を解決する。
  筆者が重慶市内を走り回って集めた現場の声を総括すると、
  現在重慶市中心部の不動産価格は、最も高くて1平方メート
  ル当たり1万元。平均は6000〜7000元くらい。中心
  部を少し外れれば3000〜4000元くらいに落ち着く。
  全国平均がいくらなのかは知る由もないが、沿岸部、内陸部
  を含め、筆者が日ごろ中国各地を回っている皮膚感覚からす
  ると、重慶の住宅価格は決して高くない。むしろ、意図的に
  安く抑えられていると感じる。それでも、大学卒業生や農民
  工を含め、家をレンタルすることすら困難な人たちが数多く
  存在するということだ。だからこそ、重慶政府は社会的弱者
  への優遇政策として、「公租房建設計画」を実施する。ただ
  し、住宅建設を促進する一方で、商業住宅への規制を緩和し
  ている。お金を持っていて、不動産を購入したい人の欲望は
  抑制しないということだ。
  http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110614/220770/
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重慶モデルの薄熙来.jpg
重慶モデルの薄熙来
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「署名もできぬドバカ偽日本人学歴詐称欠格総理」
>>http://iiyama16.blog.fc2.com/blog-entry-4581.html

こいつの署名「安」の字も「晋」の字も間違えとる。日本語にこんな運筆はありえない。

ただのバカじゃない、底抜けのドバカとしかいいようがない。内政も外交もまったく出来んな。そもそも公文書に署名が正しく出来ん、じゃ話にならん。

憲法70条は底抜けのドバカが一瞬たりとも日本国総理大臣を務めることを刑罰を以って厳禁しておる。
ただちに自分の名前も正しく書けない学歴詐称底抜けドバカを総理大臣解職罷免し即日内閣総辞職するよう憲法70条は刑罰を以って厳しく国会へ命じている。

憲法によって選出された国会議員が憲法の命令に逆らえばただちに当該国会議員の国家統治体制への反逆行為であり、ゆえにその議員個人に内乱罪が適用される。
刑法規定により最高刑は死刑、憲法規定により刑期中すべての公民権が剥奪され受刑以前に所有した全財産没収され粛々と国庫へ収められる。

故西岡参院議長が喝破した「全員共謀共同正犯」内乱罪および棄民テロ犯罪者国会議員よ、わかったかw

明日5月3日は憲法記念日である。
日本国憲法全文は義務教育中等教育課程の教科書にすべて載っている。

中卒以上の学歴を持つ日本人は明日5月3日自分の中学教科書を出して日本国憲法全文を熟読するとよいね。

但し国会議員は全員熟読全文暗記せよ。それが立法府特別公務員公僕国会議員たる者が日本国に対して負う最も重要な神聖にして冒すべからざる職責である。
Posted by 東行系 at 2013年05月02日 22:25
中国、尖閣の次「沖縄を返せ」主張 米軍施設にらみ揺さぶり
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130505/chn13050507000001-n1.htm

関連情報】
台湾民政府の大日本国領土の完全復帰を期する声明
http://youtu.be/8u_-ifV2xmU
(動画)
台湾民政府が国際法上は支那やロシアが領有権を主張している大日本国領土は先の大戦の主要占領国
であるところのアメリカが日本へと返還しなければならないと主張しています。

このニュースを知るに至って、支那朝鮮に支配された反日売国テレビ局・マスコミの正体が判らない愛国系
日本人は居ないと思う。 今年2013年1月1日に尖閣事変が発生しているのです。 支那朝鮮に支配された
反日売国テレビ局・マスコミは日本国民を騙して深刻な問題を隠蔽して来ました。 このような状況を作り出した
のは自民党安倍内閣に責任があると世論工作に専念しています。 日本の主権回復の式典でご参列なされた
天皇陛下の退場のときに天皇陛下万歳!の三唱を批判したり、内閣閣僚が靖国神社を参拝した責任を追求し
ているテレビ局・マスコミが反日売国勢力に蝕まれている事をしっかりと確認して下さい。

詳細は
【前航空幕僚長の国防問題の掲示板】
http://www.aixin.jp/axbbs/kzsj/kzsj10.cgi
【前航空幕僚長の国防問題タイトル一覧】はこちらをクリックして下さい。

田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」

ps:
特攻隊員の手記が子供達を変えた
http://zaitokuclub.blog.fc2.com/blog-entry-505.html

Posted by 愛信 at 2013年05月05日 22:25
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