地」だけであり、農村の土地は「集体所有」、すなわち、農民に
よる集団所有というかたちになっているのです。この集団所有の
農村用地は、次の2つに分かれます。
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1.耕作用農地
2. 農宅地
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農民は農地を借りて耕作したり、住宅を建てることはできるの
ですが、農地の集体所有権はきわめて弱い権利なのです。なぜな
ら、第三者への譲渡は認められないし、マンション、ビル、工場
店舗などのビジネス用の建物は建てることができないからです。
これらの建物は「都市用地」に限られるのです。
農村用地は地方政府がそれを収用して払い下げることによって
「都市用地」に転換できます。ここで「払い下げる」とは、競売
を意味しています。例えば、日本の企業が農村部に工場を建てる
場合は、地方政府による競売によって都市用地を取得し、そこに
工場を建てることになります。
つまり、地方政府は都市用地市場の供給サイドを独占しており
農村用地は地方政府の重要な財源になるのです。このように中国
では、人だけではなく、土地についても「都市」と「農村」とい
う異質な空間で仕切られていることになります。
そのため、どこかの国の大企業が中国に進出するような話にな
ると、地方政府には巨額のお金が入るので、農民がそこに住居を
建てていようと、耕作していようと、容赦なく土地を取り上げ、
その土地を都市用地に転換するのです。一応原則としては、農宅
地は除外して耕作用農地だけが収用の対象なのですが、実際には
住居の建っている農宅地まで、僅かな補償金で取り上げてしまう
のが実情です。
その土地を使っていた農民に対しては、農業収入を算定基礎と
する安い価格とわずかな補償金だけで土地を取り上げ、それを競
売することによって、外国企業には高い価格で買い取らせるので
す。その差益は、地方政府と一定の割合が中央政府の懐に入りま
す。日本企業などは莫大なお金を支払って中国の農村部で土地を
入手しているので、地方政府の長である共産党委員会書記の懐に
は莫大な資金が入ることになります。だから、地方政府は外国の
企業誘致には力を入れるのです。
しかも、土地の場合、経済が成長すると、莫大な含み益が発生
します。その差益のほとんどが地方政府と中央政府の懐に入るの
で、一財産築けることになります。
まして10年ほど前までは農地収用に対する規制が緩やかだっ
たので、その莫大な開発差益に目が眩んだ地方政府は、農民の生
活を顧みないひどい収用を繰り返し、「失地農民」という社会問
題まで派生させているのです。
こういう農民の不満が中央政府に向けられることを憂慮する中
央政府は、2007年度以降からは、地方政府が土地を収用する
場合、代替地として同面積の土地を確保しないと収用枠が得られ
ないように改正したので、この面については若干改善されてきて
いるといえます。
西側自由社会では、土地の売り買いは自由で、需給は市場メカ
ニズムによって調整されますが、中国では土地供給を地方政府が
独占しているので、収用と競売で生ずる差益が大き過ぎ、市場メ
カニズムが働かないのです。そのため、中央政府は収用を制限し
その農地を利用していた農民を立ち退かせるための補償金を引き
上げて対応せざるを得なくなっています。
しかし、そこで困った事態が生じたのです。補償金を引き上げ
ると、以前それ以下の補償金で土地を手放した農民が不満を持つ
ようになることです。農民の不満を何よりも恐れる中央政府とし
ては、こういう事態は好ましいことではないのです。
需給が市場メカニズムによって行われていれば、土地が値上が
りし、それによる補償金が増えても誰も文句はいわないのですが
中国ではその分まで政府の責任にされてしまうことになります。
それもこれも中国が社会主義国の体制をとっており、土地の私用
を認めないから起きる現象なのです。
要は、土地開発益の分配の問題なのですが、これがなかなか難
しいのです。土地収用を厳しく運用しているので、それによって
都市用地は値上がりし、新興都市では住宅用の土地が不足する事
態になっています。
都市用地の供給サイドを市場化する方法もありますが、下手に
市場の仕組みを変えると、不動産バブルの崩壊を早める恐れもあ
り、リスクが多いのです。これをやるのは、不動産を高騰させる
前に行う必要があり、既に時期を逸しているといえます。
李克強首相は改革の一環として、「都市化」を推進させようと
しています。しかし、津上俊哉氏は、「都市化の流れは難しい」
として、次のように述べています。
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都市・農村二元構造問題は、用地面でも都市化を制約する要因
になっているのである。先に「二等公民」扱いされている農民
への公共サービス水準を高めて、都市住民と農民の二元構造を
解消しないと都市化の流れが阻害されることを述べた。同じよ
うに、農村用地→都市用地の転換プロセスと、そこで生まれる
差益分配の問題をうまく解決しないと、やはり都市化の流れは
阻害されることになる。いずれの対策にも、変わることを嫌が
る制度自身の慣性抵抗や既得権益グループからの抵抗が予想さ
れる。 ──津上俊哉著
「中国台頭の終焉」/日経プレミアシリーズ
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以上で、地方政府が都市用地の供給サイドを独占し、それを地
方財政の重要財源にしていることは理解できたと思います。しか
し、その体制も限界に近づきつつあるようです。明日のEJでも
地方政府の財政問題を続けます。 ─── [新中国論/36]
≪画像および関連情報≫
●経済改革への期待を担う李克強/日経ビジネス・オンライン
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諸外国から見れば、中国はこの10年で驚異的な成長を遂げ
経済大国となった国だ。だが、国内、特に中間層の都市住民
の間では「失われた10年」が問題にされている。不動産価
格の高騰や環境汚染、高圧的な国の締めつけで、現状への幻
滅が広がっている。新指導部がこの問題を解決しない限り、
これまでおおむね平穏に進んできた中国の発展も、今後は容
易に進まなくなる。李氏は変革の必要性を認識しているよう
だ。3月20日に開かれた初の全体閣議で、すべての官庁が
「一体となって改革を進め、現実の成果を上げ続けることで
国民に実績を見せる」べきことが確認された。米国の新財務
長官ジャック・ルー氏は3月20日に李首相と会談後、中国
が「改革の課題への明確な取り組みを行ってきたことは明ら
かだ」と述べ、続けて、難しいのは「具体的な進展」を実現
させることだろうとつけ加えた。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130405/246257/
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会談する李克強首相


