2013年04月23日

●「経済と国防のバランスが崩れる時」(EJ第3533号)

 中国のGDP統計には多くのウソがあることはどうやら動かし
難い事実のようです。とくに景気低迷期の数字は信用できないと
いわれます。客観的に検証しようにも、すべての経済数字が公表
されているわけではないので、そういう嵩上げされた経済数字を
国際社会はそのまま受け取るしかないわけです。
 しかし、そういうことを続けていれば、どこかで行き詰まるこ
とは明らかです。普通の西側の国であれば、銀行の不良債権が増
大したり、財政が破綻したりとか、いろいろな兆候が明らかにな
るので、比較的早い段階で国家破綻が明らかになりますが、社会
主義国の場合、ほとんどのことを先送りできるので、表面上の平
静を保つことができます。もちろん限界はあるのですが、行きつ
くところまで行って、ハードランディングすることになります。
 これに関して、大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は次
のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 筆者は、中国経済が純粋な「資本主義経済」ではなく「社会主
 義・市場経済」であることが、当面の景気を下支えする要因に
 なり得ると考えている。「社会主義・市場経済」という中国の
 経済システムは、本質的に矛盾した体制である。中国経済の根
 底には「社会主義」が厳然と存在するため、政治指導者の意向
 を反映する形で「政治的ビジネスサイクル」が働きやすいもの
 と考えられる。端的にいえば、中国は純粋な「資本主義」では
 ないので、少なくとも1〜2年程度、もしかすると4〜5年程
 度は、いかようにでも、問題を先送りすることが可能なのであ
 る。            ──熊谷亮丸著「パッシング・
   チャイナ/日本と南アジアが直接つながる時代」/講談社
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、たとえ嵩上げされたGDPであっても、その一定割合
が国防費に計上され、軍備は強化されることになります。今年度
の中国の国防費は7406億元(約11兆4500億円)と過去
最高額が計上され、今世紀になって4倍化しているのです。
 鳥居民氏の本に、これに関連のある興味あるトークが出ていた
ので、ご紹介します。櫻井よしこ氏と、30代〜40代の2人の
中国エリート官僚XYとのやり取りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国X:この「平和的」というキーワードは、単に外交上の戦
     略だけでなく、中国が経験した「反省」に基づいた本
     音でもあるのです。
 櫻 井:何を「反省」したのですか?
 中国Y:一例をあげれば、ソ連崩壊。中国指導部がここ30年
     間で学んだ最大の教訓です。ソ連崩壊の根本的な原因
     は、「国防建設」と「経済建設」のアンバランスとい
     う覇権戦略の誤りでした。つまり巨大な軍事力の発展
     を、経済システムが充分に支えられず崩壊してしまっ
     た。冷静に考えれば、崩壊は起こるべくして起こった
     こと。ですから、将来、中国が軍拡競争に参加するこ
     とはありません。
 櫻 井:それが中国政府の今後の政策であれば理想的ですが、
     現実は違います。そのギャップをどう埋めていくので
     すか。軍事力に関しても、中国はソ連崩壊の轍は踏ま
     ないといいながら、現実には19年連続の2ケタ成長
     という軍拡が続いている。それが他国に対して脅威を
     与えた結果、覇権国家を目指していると受け止められ
     るのは当然です。
 中国X:ただ、それは毛沢東時代の認識です。冷戦後の現在で
     は状況や認識は180度変わりました。国家レベルで
     の基本概念の改善があったのです。結論をいえば政府
     や国家権力は国民一人ひとりに奉仕するという、概念
     の転換でした。かつてのような古いタイプの国家運営
     から、相当にリベラルな手法に変化してきたのです。
                   ──鳥居民著/草思社
 「それでも戦争できない中国/中国共産党が恐れているもの」
―――――――――――――――――――――――――――――
 このXとYという2人の中国エリート官僚がいっているように
ソ連崩壊の根本的原因は、覇権国家を目指すあまり、「経済」と
「国防」のバランスが崩れたことにあります。XYはそれをちゃ
んと把握していて、中国はそうはならないといっていますが、実
際はソ連と同じ道を歩いているように思います。櫻井よしこ氏も
鋭くそこを衝いているのです。
 ソ連の瓦解の多くの要因は、長期にわたり先送りされ、蓄積さ
れたものが行き詰まり、それが限界に達して、一挙に崩壊してし
まったのです。しかし、そういう内部の崩壊は外からは想像する
べくもなかったのです。
 あれほど、強大にして永遠につづくと信じられていたソビエト
連邦が、ある日突然跡形なく崩れ去ったのです。そのことに一番
衝撃を受けたのは、ほかならぬ中国共産党の幹部たちです。なか
でも一番の恐怖を味わったのは、ケ小平その人であったのです。
1989年6月16日、ケ小平は政治局業務委員たちに対して、
次の訓示をしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 われわれの最大の目的は、穏定した環境をつくりだすことに
 ある         ──ケ小平/鳥居民著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この訓示を受けて、中国共産党幹部の間では「穏定圧倒一切」
──穏定が一切を圧倒するという言葉が流行したのです。安定こ
そがすべてのものに優先するという意味です。
 これは毛沢東時代とは大きな違いなのです。毛沢東は絶えず新
しい旗を立て、国民を馳せ参じさせ、つねに緊張を押しつけ、持
続させようとしたからです。「穏定圧倒一切」とはまるで違う考
え方です。ケ小平にしてみれば、反日運動などは絶対にやっては
ならないことなのです。       ── [新中国論/31]

≪画像および関連情報≫
 ●中国は反日運動が反政府へ転化するのを怖れた/2008年
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2005年4月は、中国共産党指導部にとってインターネッ
  トの伝言板と携帯電話、そして人口の三分の一から四分の一
  を占める出稼ぎ労働者を抱える都市で、絶対にしてはいけな
  いことを知った月だった。10月11日の産経新聞・正論、
  鳥居 民氏の評論から。「中国における最後の反日運動から
  2年半がたつ。中国共産党の指導部は、それを忘れようとし
  ても忘れられないはずだ。不注意に踏み出せば落ちてしまう
  目の前の深い深淵を知ったからである。05年3月21日、
  国連事務総長が安保理常任理事国を拡大する計画をたて、日
  本を加えたいと言ったとき、中国共産党指導部は国民のすべ
  てがそれに反対だという形を作り上げるため、学校に命じて
  署名活動をやらせよう、集会とデモをやらせようと決めた。
  だが、実際にそれをやらせてみて、たちまち手に負えなくな
  った。4月9日の土曜日には、北京で4000人が日本大使
  館を包囲して、投石した。翌10日には広州市の日本総領事
  館前に3000人が集結、日系デパート前には、2万人が集
  まって気勢を上げた。次の週末は、更にひどくなるのが目に
  見えていた。週末だけにデモを制限することも出来なくなっ
  た。そのエネルギーが、反党運動の街頭化、組織化に転化し
  てしまったら、それは更に恐ろしい悪夢、都市内の出稼ぎ農
  民たちの抗議行動を誘発してしまう。
           http://yaplog.jp/navoca947/archive/12
  ―――――――――――――――――――――――――――

櫻井よしこ氏.jpg
櫻井 よしこ氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
世界最高の匠工人日本人民間技術者の粋を集める「得手に帆あげて」

江戸時代以前の美しい日本人社会を取り戻す日本国憲法の三種の神器とその使い方

1.「日米地位協定破棄」で統一原理教会と源田実731部隊旧帝国軍人の利権を根元から断ち切る。幸福実現党は憲法違反と政治資金規正法違反で消却する。
2.「破防法」で前原誠司創価学会と公明党を消却する。
3.世界最高の匠日本人の知恵と工夫で「福一石棺桶化して放射能無害化」を達成する。

:原発=原爆=核兵器だから、福一石棺桶化達成で世界中の核兵器を廃棄して無害化する技術を日本人が確立し、その技術で
地球上からすべての核兵器を無毒化廃絶して核のない平和な地球を太陽系宇宙に日本人の力で打ち建てる。


上記3.の項目の民間技術の粋の得手のひとつに次の飯島氏の技術が相当すると思います。

福島の汚染物質の除染に言及されてます。
20110514飯島秀行さん講演 前半 後半
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=9n-EiGwcK9Q#!
http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=sLY7Yp3I3dQ

もう一つの得手
http://hidenori1212.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-9170.html#comment-77742762
Posted by 東行系 at 2013年04月23日 10:54
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