2013年04月08日

●「中国のバブルは既に破裂している」(EJ第3522号)

 中国経済に何が起きているのでしょうか。今回は、経済評論家
の三橋貴明氏の所説を中心にその核心に迫ることにします。
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 石平×三橋貴明著
 『中国経済がダメになる理由/サブプライム後の日中関係を
 読む』/PHP
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 中国経済は、そもそも何によって発展をはじめたのかといえば
1998年7月の住宅建設の加速宣言です。このとき、中国の国
務院は、次の告知を行ったのです。
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  都市住宅制度改革をさらに進化させ住宅建設を加速する
                 ──中国国務院の公表
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 それまで中国では自分で住宅を持つことが基本的に許されてお
らず、政府や国有企業から住宅を賃貸の形式で分配されていたの
です。これを「住宅分配制度」といいます。
 1998年7月の中国国務院の公表は、この住宅分配制度を廃
止し、個人でも住宅を取得することを認めたのです。ただし、都
市住民に限っての話です。
 今まで制度によって持てなかった住宅を取得することが認めら
れたのですから、中国で爆発的な住宅ブームが起こったのは当然
のことです。これによって、不動産投資は活性化し、それが10
年間続いたのです。
 もうひとつ中国経済を活性化させたのは「純輸出」です。純輸
出とは、輸出から輸入を差し引いたものをいいます。中国の場合
は、その差がプラスになる貿易黒字の状態が続いたのです。
 このように、これまで中国の経済成長を支えてきたのは、次の
2つなのです。
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  1.    純輸出(貿易黒字+サービス収支の黒字)
  2.総固定資本形成(住宅投資や企業の設備投資など)
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 添付ファイルに2つのグラフがあります。上の棒グラフ「中国
の名目GDP増加分百分比」を見てください。2004年までは
総固定資本形成(住宅投資など)が圧倒的で、純輸出は10%程
度にしか過ぎなかったのです。この時期は住宅投資や企業の設備
投資を中心とする投資が経済を牽引していたのです。
 しかし、2005年以降は明らかに純輸出が増えています。投
資と純輸出でGDP増加分の60%を占めています。つまり、中
国経済は、2007年までは投資と純輸出という2本の柱がうま
く噛み合って、経済を支えていたのです。
 整理してみましょう。まず、住宅分配制度の廃止によって、住
宅建設がブームになり、不動産投資が活性化したのです。これに
伴い、企業の設備投資が増えて、GDPが拡大し、経済成長率を
高めることによって、株価の上昇が始まったのです。株価上昇は
企業にマネーを提供し、それがさらに投資の拡大をもたらすこと
によって、経済は急速に成長したのです。
 設備投資が拡大したことによって、企業の生産力が増強され、
これによって、主として欧米向けの輸出が拡大します。輸出の拡
大は純輸出を押し上げ、GDP経済成長率をさらに高めるこにと
になります。
 このように経済成長率が高まると、海外からの中国への投資が
増えて、それが不動産価格と株価を押し上げる要因になり、それ
によって得られたマネーがさらに不動産投資と設備投資に費やさ
れることになります。
 この不動産投資が株価を押し上げ、それによるマネーで企業の
設備投資が進み、その設備をフル稼働させて純輸出が進み、それ
が株価を押し上げ、経済成長率が伸びる──この良い循環が20
07までは続いたのです。
 しかし、2008年になってその良い循環のすべてが吹き飛ぶ
大異変が起きたのです。リーマンショックです。経済評論家の三
橋貴明氏は、これを「4つのバブルの崩壊」と称しています。4
つのバブルとは、不動産、株式、輸出、成長率の4つです。
 しかし、リーマンショックによって米国を中心に世界中の経済
主体が打撃を受けて苦吟するなかにあって、中国だけは「ひとり
勝ち」の様相を呈していたのです。その格好の隠れ蓑になったの
は、2008年に開催された北京オリンピックであり、2010
年の上海万博です。
 この隠れ蓑によって、世界中の人々が中国の恐るべき成長力に
目を見張ったのです。そういう中国が日本を抜いて世界第2位の
経済大国になり、尖閣諸島に牙をむいて迫ってきた。これは大変
なことになる──このように多くの日本人はとらえていますが、
そのとき中国の経済は大変なことになっていたのです。
 まず、2007年10月に株価に大きな異変が生じます。中国
の代表的な株価指数が大暴落をはじめたのです。それは「雪崩を
打つ」という言葉に相応しいほどの大暴落だったのです。
 添付ファイルの下の線グラフを見てください。これは日経平均
と上海総合株価指数について、それぞれのピークからの下落率を
示したものです。日経平均は、1989年12月の3万8915
円、上海総合株価指数は、2007年10月の6124ポイント
からの下落の状況を示したものです。
 日経平均は、比較的緩やかなペースで下落し、30ヵ月目にし
て下落率が60%に達したのです。これに対して上海総合株価指
数は、1ヶ月目からマイナス22%、そして1年も経たない20
08年9月の時点で、下落率70%に達しているのです。それは
まさに真っ逆さまの下落です。
 この下落率の差は、日本がそのとき既に先進国としての歴史が
長く、経済も社会も成熟化が進んでいたのに対し、中国は新興国
であり、2007年時点でも1人当たりの名目GDPが、わずか
2500ドルにも達していないのです。── [新中国論/20]

≪画像および関連情報≫
 ●上海総合株価指数とは何か
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  上海総合指数は、中華人民共和国の上海市浦東新区にある上
  海証券取引所が公表している、人民元建てA株と外貨建てB
  株の両方に連動する日中価格パフォーマンスを表すインデッ
  クスをいう。1990年12月19日を基準日とし、その日
  の時価総額を100として時価総額加重平均方式で算出され
  る。本指数は、中国(本土)の株式市場の上場銘柄の値動き
  を示す代表的なインデックスであり、世界中で注目される株
  価指数の一つである。──「専門家の金融ナビゲーション」
   http://www.ifinance.ne.jp/glossary/index/ind065.html
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 ●グラフ出典
  石平×三橋貴明著『中国経済がダメになる理由』/PHP

中国経済統計.jpg
中国経済統計
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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